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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

森川ジョージ先生が講談社と交渉し、不調だった「電子書籍化七項目」とは何だったのか

togetter.com
これが話題。
自分は、連ツイのツリーのほうに、真っ先にリンクコメントした。

「今まで電子化を拒んできた人が、それを認めた理由」が部分的にでも語られることは少ないので超貴重な証言。ここで割愛された講談社と森川氏の条件交渉もスクープ出来ればさらに興味深いノンフィクションなのだが…
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/twitter.com/WANPOWANWAN/status/1475772689440993283


で、重要なのは結局この部分なのだと思う。


当然、出版社と著者の契約交渉など、野球選手の年棒交渉だってわからない以上、謎になるのは当然だ。

だが、重要なことも間違いない。なにしろ森川ジョージは、講談社の中で貢献度や地位で1、2を争う大物作家だろう。実際に「偉そうにしている」ことを(半分ギャグながら)自認している。
これも作品の電子化に関わるエントリで、関連して重要なのだが…

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おいおい。

そして
ルポ漫画「もう、しませんから。」の作者も証言している(笑)


であるから、個々は当事者でなく、野次馬的な「ジャーナリズム」の出番。
ヤフーニュースが覇権を握るまでを描いた「2050年のメディア」なんていう面白い読み物もあるのだから、森川ジョージを主役にして、ここ20年ぐらいの「電子書籍」の興亡を描くノンフィクションとか、かなり面白いんではないか。


それは「重版出来!」が、フィクションで描いた話ともどこかでつながる。

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いや、それはともかく、これだけ業界で、そして対講談社で「偉そうにしている」森川ジョージですら、電子書籍の権利で講談社とガチ交渉すると、電子化が10年も進まないような、そんなシビアな対立点が発生するのだ。

こう言う点では大物は確かに大物としてふるまうのもありがたいことであって、
プロ野球では落合博満江川卓
プロレスではブルーザー・ブロディ
業界の大物、トップの人気選手である地位を利用してプロモーターとガチでごね、それがめぐりめぐって権利になったということもある。

実際、森川ジョージ氏は著作隣接権に関して、講談社といろいろ話し合ってきた。
そういう面で、赤松健と共闘し、彼をリスペクトしている…とも過去に述べている
togetter.com

★なぜ出版社は「著作隣接権」が欲しいのか

「出版社が著作隣接権を求める理由」について、講談社が私に説明して下さるとのことで、本日(3/16)、音羽まで聞きに行ってまいりました。
森川ジョージ先生もお話を聞きたいとおっしゃるので、同行していただきました。

説明して下さったのは、講談社の常務取締役である清水保雅さんと、編集総務局の五木田直樹さん。
https://kenakamatsu.tumblr.com/post/19395239269/rinsetsu

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もちろん、こういう時に漫画家が一致団結した「組合」を作っていて、そこが団体として出版社と交渉していたら?なんてことも思う。

また、電子書籍はそもそも、巨大なインフラを、紙印刷物と比べると必要としない。
だから、ぶっちゃけ超人気作品を作家は、「自前の電子書籍を売る会社を作り、自分のレーベルで販売する」という選択肢があるのだ。

それは田中芳樹氏が、「銀河英雄伝説」などで行っている。

……電子書籍には紙の本にはない多くのメリットが存在しますし、このまま紙媒体のみの流通というのも読者の皆さまの選択肢を狭めてしまうことになります。
 この点を繰り返し、田中さんに説明した結果、このたびついに田中作品の電子書籍版の出版が実現することとなりました。

 ただ、その際の条件として「電子書籍を商売にしている会社に丸投げするのではなく、できる限り、君たちがやりなさい」と指示がありました。そのため、既存の電子書籍問屋さんとの提携ではなく、私の会社が出版元となって電子書籍の販売を行うことになりました。

 一方、このように直接、電子書籍事業を行うことで、大幅なコスト削減を実現することが出来ました。
 現在、電子書籍版においても作家さんへの印税率は紙媒体の標準とされる10%に、数%ていど上積みされる程度となっておりますが、これを最小20%から最大50%まで増やすことが出来…


a-hiro.cocolog-nifty.com


この逆に、インディとしての自由な活動を求めたり、大手出版社では通りにくい企画、かつて大手から出ていたが今は絶版の作品を、自前で出す人もいる。
佐藤秀峰
森田崇
鈴木みそ
徳永康光 らが有名だろう。
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…「解体屋ゲン」はこれまで単行本や電子書籍などがほとんど販売されず、一度雑誌を逃すと過去の回を読むことは困難という状況に置かれていました。今回の無料公開も、過去回をもう一度読んでもらうための取り組みの1つといえます。
解体屋ゲン 1(危機一髪爆破解体編)
通算670回を超える連載で、出た単行本はわずか3冊(画像はAmazonより)

 長きに渡って不遇の境遇にあった「解体屋ゲン」でしたが、昨年スマートフォン用アプリ「漫王」で、過去回を期間限定で無料公開することが実現。現在も第2期として101話~200話が無料公開されています。

 星野さんはこれまでの状況について「ガラケーコミック、電子書籍スマホアプリ、と周囲の状況がどんどん変わってゆく中で『解体屋ゲン』はそれに乗り遅れていました」とし、スマホ配信の実現を通じて「何かアクションを起こさなければ、なるものもならない」と感じたそうです。
nlab.itmedia.co.jp

この後、同作は電子書籍になっている。




こういうはなしを、苦労が多い紙の出版物でも成し遂げたのが長谷川町子が姉とやった「姉妹社」と、さいとう・たかをリイド社」でありましょう。
その長谷川家の回想記ドラマが現在、BSで再放送中の「マー姉ちゃん」なわけで。(長谷川町子の実姉で、姉妹社の社長となった人が主人公)


ここから大幅に推測を交えるが
森川ジョージ氏だって、たぶんその可能性を(ほんのちょっとぐらいは)考えたのではないかと思う。
しかし、いくら講談社筆頭のVIP漫画家でも「紙の単行本は講談社で出してくれや。電子は俺のほうで、会社作って配信するから……」とか言ったら、たぶん講談社もソリャアカタくなるはず。
「はじめの一歩」に限らず、連載漫画の内容に関わる講談社(編集部)の貢献度合い、みたいな、ほんとにシビアな話にもなりかねない。


いや、実際どうなるんだろうね…

そういえば、電子書籍化しない最後の大物・あずまきよひこの「よつばと!」も、次回の単行本発売に合わせて電子書籍化を準備中、と公式アナウンスしている……彼なら、或いは、自前での電子書籍化ががががが??
(次の巻の発売っていつなんだよ、とか言うな)


しかし、一介の読者側としては、電子書籍が進めば進むほどありがたい(と言いつつ、諸事情で自分は紙中心にいまだ買ってるんだよ! ほぼ電子にしたい、したいと思いつつ)ので、コミックDAYSで掲載拒否が目立ってた森川、川原正敏の両氏は本当に目障りな存在であったことも率直に記しておきたい。



そういえば、アマゾンの幹部は、初めにkindleを始めたころのことを回想して、こう自画自賛している。

「あの仕事は、手足をばたつかせていやがる出版社を21世紀に引きずっていくようなものだった」
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そして、
ここで書ききれなかった、今後否応なく電子書籍が時代の趨勢となる理由。
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