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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【名言】「誰かのモーツァルトは誰かのサリエリ」という言葉が、あの漫画をきっかけに流行…だが元ネタ「アマデウス」をめぐって


そんなこんなで。





ちなみに、いくつかのワードで検索したが、最初にと言ったのがだれかは、ちょっと検索できなかった(笑)

そしてその検索調査の結果、

1:「映画『アマデウス』も、もう古い映画なのでこの喩えが通じない人も多い」
2:「そもそも史実としてのサリエリモーツァルトに嫉妬するような人格ではなく、むしろ後進を育てており…」と、これまた尤もな主張をされる方もいる

…、と判明した。


1のほうは、たしかにアカデミー賞受賞作とはいえ、リアルタイムでこの映画・舞台公開の衝撃を受けた世代が知らなくても無理はない。おいおい伝えていけばいい。
くれぐれもこの映画を知らないとは無知無教養である、とか思わないように。そう思ったら公開年を調べて、それと2021年の間の期間分だけ、遡ってみたまえ。

アカデミー賞8部門受賞
アマデウスモーツァルトの音楽をBlu-rayの高音質で体感

凍てつくウィーンの街で自殺を図り精神病院に運ばれた老人。
彼は自らをアントニオ・サリエリと呼び、皇帝ヨゼフ二世に仕えた宮廷音楽家であると語る。
やがて彼の人生のすべてを変えてしまった一人の天才の生涯をとつとつと語り始める・・・。
若くして世を去った天才音楽家ヴォルフガング・アマデウスモーツァルトの謎の生涯を、サリエリとの対決を通して描いた話題作。
1984年度アカデミー賞8部門(作品・監督・主演男優賞他)を獲得。


【映像特典】
・ メイキング
・ オリジナル劇場予告編

【音声特典】
・ 監督ミロス・フォアマンと脚本・原作(戯曲)サー・ピーター・シェーファーによる音声解説

内容(「キネマ旬報社」データベースより)
アカデミー賞作品賞、監督賞ほか全8部門を受賞した名作音楽映画のディレクターズカット版。若くしてこの世を去った天才音楽家アマデウスモーツァルトの生涯を斬新な視点で描く。“ついに来たぜ!ワーナーのブルーレイ2,500円!”。


…えーと、いま「アマデウス」を語るのは、この作品の受賞時に映画「紳士協定」を譬えに使うようなもんなんですよ!!

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2のほうは、まことにごもっともだけど、そこは吉良上野介と同じで、「わかってる、史実と違うことは分かってるねんで、だけどまあ、アマデウス内のサリエリってことで」ということでどうでしょう。
フナだ鮒だ、鮒侍めっ

こういうコメントもつけといた



そして「史実と『アマデウス』の齟齬」って話、例の「FGO」で脚光を浴びたこともあったよね.
2018 年の話か、FGOをやったことも全然ない自分ですら、興味を持ってまとめ作るほどに盛り上がった。

togetter.com

twitter上で説明するためのFAQ





ときに、このモーツァルトサリエリのコンセプトはよく使われている(重版出来!など)

最近で印象に残るのは「重版出来!」。ドラマにもこのエピソードは使われていたはず。
誰もが認める天才(しかも異形の天才)が、巨匠漫画家のアシスタントに入ってきて、それを近くで見ていた、実力はあるのに芽が出ない先輩アシが、嫉妬と羨望に狂い、最後は漫画家の道を諦める。
だが、その先輩アシの、編集者らに評価されなかった作品に対して、その天才のみが涙を流して感動する(それによって先輩もある意味報われ、はっきり断念できる)…という話。

ドラマでその先輩アシを演じたのは、ムロツヨシだった。


この回のあらすじ、公式サイトに残ってるやんけ

…長年、三蔵山のもとで働いているチーフアシスタントの沼田渡(ムロツヨシ)は、明るく大らかな対応で“過去最高に面倒な後輩”中田の面倒を見ていた。
だが、流星のごとくあらわれた中田は、絵は下手なものの三蔵山はその類まれなる才能に一目置おいており、沼田は徐々に中田に対して劣等感を募らせていった…。

イデアが溢れ出る中田から「まだいくらでも描けます。早く連載やらせてください」と何冊ものネームノートを渡され驚く心。そんな中田の姿に、沼田は………
www.tbs.co.jp


単行本だと4巻か



表の世界では成功者と失敗者、勝者と敗者に分けられる。
だがその失敗者・敗者の本当のすごさを理解しているのは、ゆいいつその勝者である・・・・というモチーフ、

何年か前のちばてつや賞受賞作か何かで、お笑いの世界を舞台に読んだ気もする。




・・・・・・・・みたいな話、おれ書いたか読んだ記憶があるなーと思ったら、ドラマ放送年の2016年に書いてたよ!町山智浩氏も語ってた、この部分を中心に。

・原作でも、本当に白眉なのが、町山氏のいうアシスタントのエピソードだ。

町山智浩)ベテランのアシスタントで、もう何十年もアシスタントをやっているんですけど、その一方でデビューするために、ネームって言ってるんですが、ノートに書いた漫画の設計図をね、書いて。編集者に見せているんですけど、なかなかそれが採用されなくて、デビューできないんで。で、10年以上がたってしまったと。で、そこの彼のアシスタントのチームに、永山絢斗くんが入ってくるんですね。
山里亮太)中田伯。絵が下手だけど天才な子が。
町山智浩)(略)そのムロツヨシが永山くんの書いたネームを読んで、その才能に愕然とするんですよね。で、「こいつは天才だ! 絶対に勝てないや、これは!」って思うんですよ。ところがですね、そのムロさんの書いた、誰も相手にしてくれないネームを永山くんが読んで、涙をこぼすんですよ。
…略…
町山智浩)で、その時になぜかムロさんは漫画を辞めて田舎に帰っちゃうんですよ。
…略…
町山智浩)でもあれね、すごいいろんな意味があると思ってね。まず、一発で見抜かれたことで、この永山くん扮する中田くんは本当に天才なんだっていうことが決定的になったんですね。あれで。でも、逆に言うと、ムロさんの漫画には天才を泣かせる力があったっていうことですよね。
赤江珠緒)そうですよ。うん。
町山智浩)そうなんですよ。で、しかも彼は天才だから、この世で最高の読者なんですよね。で、この世の最高の読者を1人だって泣かせることができたんだから、俺は漫画家としての仕事を全うしたという気持ちもあったでしょうね。
 

凡人と天才、といえば「アマデウス」が頭に浮かぶ。だが、お話のIFとして、「もしたった一曲でも、サリエリの才能をモーツァルトが認めていたら?」……ここから、話はいろいろと広がる。


・でも実をいうと「世俗的な成功をおさめた天才Aと、世俗的には全然成功していない”凡才”Xがいる。…だけど!!その世俗的天才Aは、凡才Xの作品を認めていた!!」という形の、入れ子式の物語は、よく見ると言えばよく見る。…この前ネットでほんのちょっと話題になった、お笑い界を舞台にした漫画とかもあったし、「エスパー魔美」にもそんな話が出ていたわけで…。カール・ゴッチを一番評価しているのがルー・テーズだ、なんてのもそうか(笑) これは「救済」の物語でもあるから、よく使われる王道のパターンだ、ということは押さえておきたい。(重版出来での「天才」が世俗的成功を収めるのはもう少し後になりそうだが)
だけど、まさにそんな王道のパターンでこれだけ話を盛り上げられるから「重版出来!」はすばらしかったのだと、そう思う。


・そういえば、最後の「天才漫画家をネームで感動させたから、そこで十分と思って田舎に帰ることを決めた」で自分が思い出したのは、、新井英樹のボクシング漫画「SUGER」だったのだ。あれ、たしか主人公は、プロテストで周囲の人に「天才だ!」と完全に認識させたあとの、デビュー第一戦でまったくの交通事故的偶然で負けちゃうんだよね。で、その相手は、そんな天才に勝ったことで、「悟った」的なことを言って引退して旅に出ちゃうと(笑)。滑稽だけど、「世俗的天才に認められたら、自分自身は無名のままでも満足できますか?」という問いに関係していると思う気もします。




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売れっ子漫画家とうつ病漫画家、という作品もネットで話題