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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

町山智浩氏のドラマ「重版出来!」紹介から、箇条書き感想

町山智浩 ドラマ『重版出来!』の素晴らしさを語る http://miyearnzzlabo.com/archives/38198


・上の町山氏の紹介を読んでもらったという前提で…自分は全体の三分の二ほどドラマを見たけど、のこりは録画してあとで視聴予定。なので原作の「重版出来!」のほうと合わせて論じます


・誰もがご存知…のように見えて、もう二十年も前?ぐらいになる「編集王」、これを対比させることは絶対に必要だ(これ、以前も書いて繰り返しですいませんが)。ある意味で「強化リメイク版」でもあります。「以前は熱滅私奉公、漫画家の立場に立つ熱血編集者。だが手ひどい挫折から、作者を完全コントロールした商売優先になり…」「かつて大ヒットを飛ばしたが、今は創作的にも商売的にも落ちぶれ、生活も荒れた漫画家」「営業だって出版を支えているんだ」などなど、根本テーマが共通したエピソードもかなりあるんだわな。だからと言ってもちろんパクリではない。いかに、そのテーマを咀嚼した「強化版」になっているかが、比較して読み比べると一目瞭然だろう。
(というか、マンガを描く漫画、が当時は片手で数えるほどで、編集王ワンアンドオンリーだった。今は逆に、過剰なほどこのジャンルは発展しまくっている。そんな受け手のリテラシー向上がすさまじい)


・モデル探しで「絵がもんのすごく下手だが、そこに不気味な将来性を感じると若手編集者が…」というモデルは、やっぱろ諫山創氏とその編集者だったか(笑)。編集者も1年目、2年目だという話は、どこかで(「創」だったか?)聞いたことあったけど忘れてた。まあ、この下手な絵で連載持たせるのかよ…→大ヒット!な作品は、諌山氏がはじかれたジャンプでも他に例は多数だけど。

町山智浩)で、彼も絵のせいで最初少年ジャンプに蹴られて。で、それを別冊マガジンに入社して1年目の編集者の川窪さんに見出されてデビューして。
赤江珠緒)へーっ! 1年目の編集者だったんだ。こっちも。
町山智浩)1年目なんですよ。彼。だから黒木華ちゃんのキャラと同じなんですよ。設定的に。
山里亮太)なるほど。じゃあ絶対にそうだ。諫山さんだ。

その、諌山氏がジャンプにけられた話

進撃の巨人」人気、社会現象化をあらためて思う【創作系譜論】 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130712/p2

あのヒット作「いちえふ」も持ち込みに苦労したとか…

あの「いちえふ」が持ち込まれたのにボツ判断の編集者がいた? どうしてその判断…鈍いのか、逆にポリシーか - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150306/p3


・各種の漫画家さんにモデルがいるだろう、という話はもっと深堀りすると面白い。休刊の話も、ヤングサンデー休刊の話だろうというのもしごくもっともだが、

といった話もある。なかなか、赤裸々にかくのは大変だろうし、その中でけっこう原作のエピソードは攻めていたんだろうな。ほぼ当事者に近い人もいる。

「新・吼えろペン」にはヤングサンデー休刊をネタにし、過激すぎて没になった「幻の(真の)最終回」がある。「クロニクル」でこれが復活! - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100730/p6

ちなみに放送当時、こういうのもまとめた。
「体験談」が入れ食い状態(笑)。

ドラマ「重版出来!」6話から『休刊』についての感想ツイート集 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/976535


・原作でも、本当に白眉なのが、町山氏のいうアシスタントのエピソードだ。

町山智浩)ベテランのアシスタントで、もう何十年もアシスタントをやっているんですけど、その一方でデビューするために、ネームって言ってるんですが、ノートに書いた漫画の設計図をね、書いて。編集者に見せているんですけど、なかなかそれが採用されなくて、デビューできないんで。で、10年以上がたってしまったと。で、そこの彼のアシスタントのチームに、永山絢斗くんが入ってくるんですね。
山里亮太)中田伯。絵が下手だけど天才な子が。
町山智浩)(略)そのムロツヨシが永山くんの書いたネームを読んで、その才能に愕然とするんですよね。で、「こいつは天才だ! 絶対に勝てないや、これは!」って思うんですよ。ところがですね、そのムロさんの書いた、誰も相手にしてくれないネームを永山くんが読んで、涙をこぼすんですよ。
…略…
町山智浩)で、その時になぜかムロさんは漫画を辞めて田舎に帰っちゃうんですよ。
…略…
町山智浩)でもあれね、すごいいろんな意味があると思ってね。まず、一発で見抜かれたことで、この永山くん扮する中田くんは本当に天才なんだっていうことが決定的になったんですね。あれで。でも、逆に言うと、ムロさんの漫画には天才を泣かせる力があったっていうことですよね。
赤江珠緒)そうですよ。うん。
町山智浩)そうなんですよ。で、しかも彼は天才だから、この世で最高の読者なんですよね。で、この世の最高の読者を1人だって泣かせることができたんだから、俺は漫画家としての仕事を全うしたという気持ちもあったでしょうね。
 

凡人と天才、といえば「アマデウス」が頭に浮かぶ。だが、お話のIFとして、「もしたった一曲でも、サリエリの才能をモーツァルトが認めていたら?」……ここから、話はいろいろと広がる。


・でも実をいうと「世俗的な成功をおさめた天才Aと、世俗的には全然成功していない”凡才”Xがいる。…だけど!!その世俗的天才Aは、凡才Xの作品を認めていた!!」という形の、入れ子式の物語は、よく見ると言えばよく見る。…この前ネットでほんのちょっと話題になった、お笑い界を舞台にした漫画とかもあったし、「エスパー魔美」にもそんな話が出ていたわけで…。カール・ゴッチを一番評価しているのがルー・テーズだ、なんてのもそうか(笑) これは「救済」の物語でもあるから、よく使われる王道のパターンだ、ということは押さえておきたい。(重版出来での「天才」が世俗的成功を収めるのはもう少し後になりそうだが)
だけど、まさにそんな王道のパターンでこれだけ話を盛り上げられるから「重版出来!」はすばらしかったのだと、そう思う。


・そういえば、最後の「天才漫画家をネームで感動させたから、そこで十分と思って田舎に帰ることを決めた」で自分が思い出したのは、、新井英樹のボクシング漫画「SUGER」だったのだ。あれ、たしか主人公は、プロテストで周囲の人に「天才だ!」と完全に認識させたあとの、デビュー第一戦でまったくの交通事故的偶然で負けちゃうんだよね。で、その相手は、そんな天才に勝ったことで、「悟った」的なことを言って引退して旅に出ちゃうと(笑)。滑稽だけど、「世俗的天才に認められたら、自分自身は無名のままでも満足できますか?」という問いに関係していると思う気もします。


重版出来!、未見の回で映像化されているのかもしれないけど、やってほしいのは「紙の職人」そして「グラビア修整の達人」話。

とくに後者は「アイドルのグラビアは、匠たちがウエストを細くしたり肌の色を変えたりして理想の女の子、男の子をつくっているんですよおおおお!!!」ということを、ミスター高橋本ばりに表にして、連載時大衝撃だった…いや、「あれは常識だよ」「いまさらの話だよ」と仰るかもだが、プロレスはリアルファイトではない、という話を、たとえば控室でのアングル決定やアップ・ダウン(勝ち負け)を命じられるところを映像で見せられるか??の話でな。
あれ、本当にやばくなかったのだろうか…
そして、各写植会社では、そういう匠たちが「この水着アイドルのグラビア、いい仕事(うまく修整)してるな…あっ、XX社の何某か、うまいはずだわ…俺も負けずに修整かけるぞ!!」とライバル視しあっている、と(笑)。この挿話が実に楽しい。こんな撃墜王争いみたいなライバル関係、本当にあるんでしょうか(笑)

・この場面

町山智浩)で、セリフの中で「もうバブルの頃とは違うんだよ」っていうのが何度も何度も出てくるんですよ。
赤江珠緒)そうですよね。本屋さんも厳しかったりね。
町山智浩)そう。「バブルの頃はあんなにみんなであったかくものを作れていたのに……」っていうことがあって。で、たとえば「コミックの初版部数はいまは5千部が限界だよ。普通だよ」っていうセリフが出てくるんですね。でもね、それだと作者に入る印税っていうのは20万円なんですよ。
赤江珠緒)ええーっ! そうか。5千部で。
町山智浩)これ、生活できないですよ。でも、いま電車に乗っても、誰も漫画も本も読んでいない時代だから、しょうがないですよね。だからこのバブル崩壊から26年間、ずーっと撤退戦なんですよ。出版とか、映画も、テレビも、ラジオも。音楽業界も、家電メーカーも。26年間、ずーっと撤退戦を続けて、ギリギリで耐えているんですよね


バブル時代は雑誌広告が売れて売れて、入りきらないので新雑誌創刊…なんてことがあって、そんな景気の問題が重要なのはいうまでもないけど、やはりネットの登場は、景気を越えた構造的な雑誌、マンガ、書籍への一撃だったと思う。仮にバブル以降に好景気の波が来たって、読むものが「紙の本以外にもある」「それを読む」「時間も体力も費やし、紙の本を開く回数や時間は減る」は、変わらなかったと思う。それは1日1冊のペースで読んでいた元「紙の本」愛読者としての実感。
進撃の巨人はあくまでもキセキの例外とすべきなのだろう。
というか、進撃の巨人だってネット以前の環境から、また倍の部数が出ていたような気がする。
その結果、「初版5000部、印税20万円、これが普通。」となり、漫画家や小説家の経済的な”成功”や”生活”の基盤が崩れるのはどうすれば立て直るのか…これについての答えは、私はまったく持っていない。はたしてどうなるのだろうか。


・「重版出来」で、これもドラマにはなってなかったのかな?電子書籍やネット漫画についてがっつり語っている場面がある。あのへんは、以前の何度か記事を書いたがまだ消化不良なので、あとでまた書いてみよう。
(了)

「WEB漫画サイト」の隆盛?と今後を考える(1)。「載せてやる」?「載せていただく」? - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160506/p2

無料お試しとかあるのか。



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