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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

完結「絶対可憐チルドレン」~これだけの人気漫画も、連載まですごく苦労したという話(椎名高志の漫画術)

ついに完結しましたね。
natalie.mu
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自分のこのブログは、いち早く「連載最終章とアナウンス」「完結が決定」「完結前にある設定が登場」「完結ひとつ前」とか、そのたんびに書いていたので、ホントに完結しても書くことがあまりない(笑)
それら過去記事はあとで紹介するとして、ブクマだけ再掲載しておこう。

何度も書くが、立川談志が落語の核を「江戸の風」と表現したのをなぞるなら、作中に「SFの風」が吹いてるのですわ、氏の作品は/そしてチームを体現する「ミスタータイガース」のように「ミスターサンデー」でもある
https://b.hatena.ne.jp/entry/4705415663775915874/comment/gryphon

そう、表面的な記録・成績以上に、そのチームで長年活躍し、チームの気風、チームカラーを体現した選手が「ミスタータイガース」や「ミスターオリオンズ」と呼ばれるような意味で、椎名高志氏が「ミスターサンデー」であることに、そう異論はあるまい。
というか、この前のこの記事では、最後の艦隊を率いて出撃をするビュコック提督に例えているからな(笑)。

…不謹慎ながら、この椎名高志絶対可憐チルドレン・高校生編」のシリーズが、最後の…表題に示した「サンデー的なるもの」の大いなる締めくくり、最後の司令官になると思っているのだ。
(略)
さらにはっきり言っちゃうと、俺の中では椎名先生はビュコック元帥なんですよ(笑)。「最前線に復帰した」というイメージのせいかな。
今回は、マル・アデッタ星域に最後の「”少年サンデー的”艦隊」を率いて出陣した、のだと思っている。
(略)
そしてあたくしも、もういまさら別の旗を仰ぐ気にもなれないひとりだ。椎名先生の「絶チル」が見事に完結した時、少なくとも80-90年代に、まさに「アオイホノオ」の時代に作られ、そこから発展していった”サンデー的なるもの”の時代は終わる。
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そこから7年間闘うほうも闘うほう、見続ける方も見続けるほうだが、さてここで80年代(アオイホノオ時代)ぐらいに培われた「サンデー的なるもの」がいちおうの終焉を迎える…との見立ては、今見るとどうかな。当時の看板「銀の匙」は大団円を迎えたが、たとえば新鋭「葬送のフリーレン」が高く評価されている今を、どう見立てるかは、読者諸氏に任せよう。



やっと本題だ…そんな「絶対可憐チルドレン」も、連載するまでにメチャ苦労。編集部が入れ代わり立ち代わり「少年マンガらしくせんかーい!!」と……

本題までが長いのは、このブログに時々出る欠点だが、その時は記事に結構気合が入っているというジレンマ(笑)。

さて、そんなふうに17年近く連載されたこの作品はアニメ化もされ、スピンオフも作られそっちもアニメ化された(実は両作未見)。


そしてこれだけ長期連載だったのだから、小学館に利益をもたらしたヒット作であることは疑いないのですが……さて楽しい答え合わせの時間だ、そんな人気作は連載当初、というか連載が決まるまで編集部がどう期待・予想していたか?です(笑)

実は、この解答というのは基本秘密に包まれることが多いのだが・・・・・・この作品には答えがちゃんとある、作者を鎖で縛ってないからだよ(笑)
画業30年で発行された記念誌。こんな本が出るぐらい、氏は小学館の看板作家のひとり、なわけですが。

氏のこれまでの作品を語る自著解説の本にしたのが、小学館にとっては運のつき。

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椎名高志絶対可憐チルドレン」は連載決定まで難航した。「少年漫画らしい超能力にしろ」と…

とまあ、そんな風に『絶対可憐チルドレン』は初期段階からいろいろと思い入れて作りこんでて、しかし、当時の編集部との調整にはかなり時間がかかりました
編集部からは相変わらず「主人公を少年にしろ」とか「少年漫画らしい超能力にしろ」とか言われるんですよ(笑)。
「そういうの、この前の連載でうまくいかなかったじゃないですか。もうよそに持って行っていいですか」「いやそれはちょっと。こっちの言うことをきけば載せる」「それでコケても漫画家の責任です。心から納得できること以外はしない」「でもこんなものはそのままじゃ一冊も売れないから」って(笑)。
しかも一人をなんとか根負けさせても、また別の編集者が次々と口を出してくるんですよ。それがみんな言うこと違うし、お前らもう何でもいいから言うかせたいだけちゃうんかと(笑)。
まいには「とにかく最初だけ黙って言うとおりにすれば、たとえ人気が出なくても一年間の連載は保証する」とか言うやつが出てきて。新人なら...いや、2~3年前なら危なかったですね(笑)。でもそんなの1000%ウソだってことは、とっくに……

うわー、シビア……。
自分の過去のイメージ的には、「GS美神」級のヒットを過去に飛ばせば、お屋敷から電話で「ああ編集長君、そろそろ新連載でもしようかと思うての」「ははっ、それでは新連載のご玉稿、取りに行かせますので」と無条件で連載が審査パスで始まる、と思っていたんだけど、そうじゃないらしいと。
まあそれに、この作品に至るまで、少年サンデーで「MISTERジパング」「一番湯のカナタ」を連載、どちらも単行本一けたで連載が終わっているのですね。
こうなると過去の大ヒット作家でも、ワンモアとはいかないらしい……

この「連載を打ち切らない保証なんて大ウソ!」という話は…前世代のこれもレジェンド漫画家、ゆうきまさみ氏が証言している!!(なぜか梶原一騎調)
togetter.com

彼も常勝無敗ではなく「KUNIE」とかは、人気作とはいかなかったのだよなあ。



だが過去のヒット不ヒットの実績はともかく……、上での話は、椎名氏のフィルターを通したものだと承知しても、「絶対可憐チルドレン」の連載前の編集部の声は、だいぶんポンコツに聞こえる。ぜんぶ的外れに聞こえる。

こういうとき、「当時の編集部」じゃなくて具体的なバイネームでわかるといろいろ納得することもあるが、実はそういう担当氏も、別作品に関しては的確な企画・指摘で、なんども大ヒットを飛ばした有能な編集者であることも多い。こういうのはほんと相性というか、常勝無敗はありえないというか、「琴となり 下駄となるのも 桐の運」ってやつだなあと。だから編集者との相性次第だろうし、最近いろんな編集部がやってるし、椎名氏もやりかけた「よその雑誌で連載に至らないネーム、うちに見せてください!うちなら連載できるかも!」という話が最近は公に募集してるのは、ほんとうにいいことだと思う。この話な↓
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その他の部分も面白いのだけど箇条書きに。

・最初の構想は「才能・人気あふれるけど我儘なチャイドルとマネジャー」の物語。だが芸能界に疎いのでアウェーから、ホームであるSFモチーフに。「才能」と「承認」の物語。
・映画「ある日どこかで」のイメージも盛り込んでいる。
・「最近の超能力」はかっこいいが、敢えて昔風の無骨なものに。「才能は望んで得られるものではない」「本人を幸福にも不幸にするかもしれないが、ただその人の一部である」という意味を強調したかった。
・その敵役は「他者を排除する独善的なマジョリティ」のパロとして「普通だと強調する普通じゃない連中の組織『普通の人々』」を設定したのは気に入ってるが、権利関係がやばいパロになってしまった(笑)

…てな話から、上の「編集部との、連載開始までの苦労したやりとり」の話に成り、
実際、主人公を少年にしたりとか、超能力を今風の描写にしたりとか、薫は普通人だったが突然超能力に目覚め、新人として加わったとか、いろいろなバージョンを描いてみたが、どれもしっくりこなく、あきらめる気にもなったが…結局3年を費やして自分の意思を押し通し今の作品になり、結果的に大ヒットした、という。
そして…

・TV終了の区切りとして小学校を卒業させたので、結果的に「ずっと小学生の成長を描き続ける」という路線はなくなって、外見も内面も変えつつ、未来の「破壊の女王」と向き合う形に。
・絵柄は意図的に変えています(※実は自分、この種の「絵柄」をキャッチするアンテナが低く、作者がブログやtwitterで言及するまで全然そんな変化に気づかなかった、のだよな……)
・ファッションは奥さんが監修するようになり、女性読者から好評。だが面倒くさいので時々「少年マンガだから線書いてベタでいいじゃん!」と喧嘩する(※当方、おなじく登場人物のファッションなんて全然見てなかった…)


といったことが、この本では書かれていました。
連載完結の今、これらの部分も「答え合わせ」として、以前の回と見比べていくといいかも。


でな、実はそういう全作品の「自作解説」だから、絶チルの前のMISTERジパング」や「一番湯のカナタ」についても、率直に書いていてな…実はそっちのほうが、(ある意味で)面白いんだけど、それは直接の読者の特権という事で…

「結局編集部からは「心配するな、全面的にバックアップする」と言われ、それを信じて踏み切ったのですが…」

「編集部はそういう、一般的な切り口とは違うドラマの作り方には懐疑的で……」

「『なんで三国志花の慶次みたいな話にしないんだ』としか返ってこない…」



「『カナタ』の話…要りますかね(笑)? 正直なるべく思い出さないように……」

「いや恨み言じゃないですよ?単に当時の状況を説明……」

「編集部のリクエストは「少年マンガらしく、こども、少年が主人公」ということで、まあおそらく『金色のガッシュ!』みたいな……」

「ものすごく長時間打ち合わせをしたのですが、その中身は…」

高橋留美子さんにアドバイスをお願いしたところ……」

はいおしまいおしまい、あとは上の「椎名高志の漫画術」買うてや!!


過去リンク集。

なにしろ、最初に「絶対可憐チルドレン」の連載が始まった時の感想記事もあるのが自慢…
あ、いちいちリンク張るのって地味にめんどくさいんだけど、あまり紛れてないからこれで代用可能かも。

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