http://natalie.mu/comic/news/125729
松江名俊「史上最強の弟子ケンイチ」が、9月17日に発売される週刊少年サンデー42号(小学館)にて最終回を迎える。本日9月10日発売の同誌41号にて告知された。「史上最強の弟子ケンイチ」は2002年にサンデーにて連載をスタート。いじめられっ子だった主人公・白浜兼一が、武術の達人たちが集う道場・梁山泊に入門し、数々の修行や戦いを経て成長していく姿を描いた格闘マンガだ。ゲーム化や2度にわたるTVアニメ化も果たし、単行本は57巻まで発売……
きのう
少年ジャンプで柔道漫画「ジュウドウズ」が連載開始。「火ノ丸相撲」と一緒に生き残れるか? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140909/p2
という記事を書いて、最大手メジャー誌で格闘技漫画の2本掲載が始まったのを素直に喜んだのに、他誌では12年続いた看板格闘技漫画が終わるとはねえ。
まあ、ストーリー的にはたしかに「最終決戦」ぽかったが、描き切っているかというと微妙……でも12年続いた作品だと、全部の風呂敷をたたみきって終わるというわけにもいかないのかもしれない。
「史上最強の弟子ケンイチ」を全体的に振り返ると
個人的にあらためて、おわびせにゃならんのは
少年サンデーのボクシング漫画「 BUYUDEN 」終了。/作者「売れなかった」と不人気認める - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140130/p2
というのを書いたとき、「いやーしかし格闘技漫画が各雑誌で減ってきたね。あらためてピックアップすると…」とやったらうっかりこの「ケンイチ」を格闘技漫画としてカウントせず、ダメ押しにも「サンデーから格闘技漫画がなくなったねえ」と言ってしまったことがあった。ブクマなどでお叱り頂きました、ほんとあのときはすいませんでした(笑)。
ただ、
そのお詫びはおわびとして。
この「史上最強の弟子ケンイチ」に出てくるムエタイも中国拳法も柔術も忍術も、はっきり荒唐無稽、ファンタジーに振り切っているものであって(もっとも、個別の技とか概念とかは結構資料をうまいところから引っ張ってきていて、その巧みさには何度も舌を巻いたのだけど)「あれは格闘技漫画とは別物」という定義をする人がいても、その定義もあながち間違いではないと思います。
とくに主人公を教える「達人」は俺TUEEEEどころの話じゃないわけで、江田島平八的に「彼らが出馬すればなんでもすべて力で強引に解決!!」となり、それは必然的にギャグに近くなっていく…ただ、そういった格闘技のファンタジーっぽい描写、達人のTUEEE度…それもこれもひっくるめて、うまくハンドリングして、ひ弱でいじめられ側の現代っ子が武によって、また愛する人を守るという思いで強くなっていく、というところを本当にうまく描いていたと思います。
50数巻というのは、サンデー史の中でも屈指の巻数…ひょっとして「史上最長のサンデー漫画・ケンイチ」となるんとちゃう(笑)?この作品の元となったちょっと短めの増刊連載バージョンもあったしね。
長期連載格闘技漫画の終了といえば、この前「空手小公子」シリーズの終わりを見届けたばかりだ。
長期連載「空手小公子」シリーズが完結(打ち切り)。どの時代も、必ず終わる。次の時代は… - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140413/p1
「サンデーらしさ」(俺認定)のあった漫画でした。そしてその「サンデーらしさ」は今……
何がサンデーらしいかといえば、この主人公ケンイチ君に暴力性みたいなものが何とも感じられないこと。いや「元いじめられっ子で性格的には優しい」格闘家なんて「はじめの一歩」を筆頭に、漫画の中では共感を持たせるため、あるいは正義の側に主人公を立たせるために、むしろ定番なキャラクター造形かもしれない(ん?でも減ってる気も…)。

- 作者: 松江名俊
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/08/09
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
このケンイチ君に暴力性からの縁遠さというか、まあなんつうか文化部ぽいっつうか、そういうところが感じられるんだよ、なぜかさ。このへんの違和感は、突き詰めたほうがいいのだろうけど、疲れたので「感じだよ、感じ」ぐらいにしておく。
この作品は「永遠の若大将」みたいな感じで、実をいうとサンデーの大黒柱、屋台骨にきっちり収まってます!!…というイメージはなかったのだけれど、テレビアニメにもなったし、やっぱり「四番を打った」作品なのだろう。その作品が退場して、「サンデーらしさ」がまた一つ失われた、かなという思いがしている。
さて、ここからはさらに「個人の感想」「個人の好み」を言うだけとなる。
根拠とか理由は一切示しません。
「ケンイチ」が終了し、「銀の匙」は、これはやむをえないアクシデントとして、作者のお身内が体調を崩した関係で連載間隔が大幅に空くことになった。…ついでに言えば、仮に「銀の匙」が続くとしても、あの作品の流れ的には「エゾノー最後の1年」を残すのみになったようであり「放牧豚会社経営編」があるとも考えにくい(笑)。あの作品はもともと綺麗に終わりそうな、そんな気配があるのだ。
そんな中で、ケンイチ終了と前後するように、椎名高志「絶対可憐チルドレン」が高校生編となって再登場した。しかしこれも、高校生を超えてチルドレンとは呼ばれまい。少年隊じゃないんだから(笑)。劇中の予知問題との関連もあり、この高校生編が最終章になるんだろう、とたぶん思われる。
http://cnanews.asablo.jp/blog/2014/09/04/7428247
高校生編、ここまでいかがでしょうか。
連載も長くなってきたので、新しい視点から絶チル世界を見つつ、これまで積み上げてきたものをまとめて行こうというアプローチです
んで。
こっから先はさらに「個人の感想」ですよ。
この前のコレ
はてブで話題&「絶チル」連載再開で、以前の椎名高志「GS美神」評を再掲載してみる - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140906/p3
に盛り込みたかったのだが書ききれなかった話…ここで語れるのはちょうどいい。
不謹慎ながら、この椎名高志「絶対可憐チルドレン・高校生編」のシリーズが、最後の…表題に示した「サンデー的なるもの」の大いなる締めくくり、最後の司令官になると思っているのだ。
サンデー的なるもの、の一例として、伝説の「サルでも描けるまんが教室」の一こまをお見せしよう。
「桃太郎を各誌のテイストに合わせてリメイクする」というお題でジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン(いずれも当時。掲載は1990年ぐらいか)に合わせた架空作品をでっち上げる、というネタだが、いずれもネタがネタじゃ済まない(笑)。とくにチャンピオンとか、お見せできないのが残念だが…。
本題に戻って、当時のサンデーを、桃太郎リメイクで表現すると…
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS)
- 作者: 相原コージ,竹熊健太郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/08/28
- メディア: コミック
- 購入: 7人 クリック: 112回
- この商品を含むブログ (172件) を見る
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 下巻 (BIG SPIRITS COMICS)
- 作者: 相原コージ,竹熊健太郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/08/28
- メディア: コミック
- 購入: 5人 クリック: 52回
- この商品を含むブログ (139件) を見る
ふと見渡せば、自分が「黄金の90年代を創ったナインティーズ・マフィア」http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110521/p7 と呼ぶ人々は、あるものは連載を終え、あるものは青年誌で活躍し、あるものは少年マガジンで活躍している(笑)。
最後の孤塁を守るのが、椎名高志先生、になった。
さらにはっきり言っちゃうと、俺の中では椎名先生はビュコック元帥なんですよ(笑)。「最前線に復帰した」というイメージのせいかな。
今回は、マル・アデッタ星域に最後の「”少年サンデー的”艦隊」を率いて出陣した、のだと思っている。
荒川弘氏はまあヤン・ウェンリー提督の役割で、「ここを離れても、どこかで”サンデー的”なものの理想と法統を守るために戦い続けてくれ」と期待を背負っている傍流(笑)。アルスラーンの作画の縁もあるしさ(笑)
そしてあたくしも、もういまさら別の旗を仰ぐ気にもなれないひとりだ。椎名先生の「絶チル」が見事に完結した時、少なくとも80-90年代に、まさに「アオイホノオ」の時代に作られ、そこから発展していった”サンデー的なるもの”の時代は終わる。
それに殉じられれば幸いだ、という気がするのだ。
・・・・・・・なんて書いておきながら、いっくらでも突っ込めるわな。
「まず最初に”80-90年代に生まれた、サンデー的なるもの”とやらの定義をもう少し具体的にしてみろよ。それが曖昧じゃ何言ってるのかわからんだろ」
「そもそも”サンデー的”も変わっていくでしょ」
「あんたと同じようなこと、『おそ松君』や『オバQ』が終わった時の読者も『タッチ』『うる星やつら』が終わった時の読者も言ってたんだよ」
「ようは、自分が一番熱中して読んでいたころが最高だった、つー、いつの時代も繰り返される愚痴やん」
「だいたい今、全作品読んでる?逆に読んでる作品のほうが少ないくせに」
「待ってればそのうち、サンデーからまた面白い人気漫画が出てくるものだよ。殉じるっていいながら、そういう作品が出たらそれを読む気まんまんだろ?」
「というか、歴代のサンデー漫画で一番好きなのが『プロレススーパースター列伝』のやつに、サンデー的なるもの、なんていわれたくないわ」
と、自分自身に突っ込みを終えた上で、それでもなお、俺の個人の感想、意見として「それでもで少年サンデーは「史上最強の弟子ケンイチ」が終了したあとは、椎名高志『絶対可憐チルドレン』とともに、ひとつの”サンデー的なるもの”が終わりを迎える」ということを繰り返しておきたい。
そのあと、何がどのようになっていくのかはわからない。
おそらくは伝説が終わり、歴史が始まるのだろう。
「”サンデー的なるもの”に乾杯!!」