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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

吉田豪氏、やっぱり「純情 梶原一騎正伝」を酷評する。だが…

やはりゴン格313号、吉田豪「書評の星座」にて、小島一志「純情 梶原一騎正伝」が書評されてた。
わたしの予想が当たった(いや、当然すぎるだろ)

……もちろん小島一志氏の上記著書のサーガに、多くの異議異論があることも聞きます。
今回の本も、おそらくはゴング格闘技にて

吉田豪氏の「書評の星座」で紹介記事が出るまでが1セットなんだろうな、と(笑)
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吉田豪氏の小島一志本書評(ゴン格313号)

GONG(ゴング)格闘技 2021年5月号

GONG(ゴング)格闘技 2021年5月号

  • 発売日: 2021/03/23
  • メディア: 雑誌

純情: 梶原一騎正伝

純情: 梶原一騎正伝

  • 作者:小島 一志
  • 発売日: 2021/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


だが、その内容を見てみると、今回はどうも説得力が弱い。
まず、吉田氏の小島本の批判点を要約して箇条書きにしよう。

・たとえば当時の組対第四課警部で梶原一騎を直接取り調べた亀澤優という人の証言、が出てくるが、そもそも本当にその人がいったか分からない発言を引用している。
梶原一騎在日説を描いているが裏は取れずじまい。
・高森篤子夫人の薬物話は、真樹日佐夫先生がすでに書いていた。浅草の経歴も裏がとれずじまいではないか
アントニオ猪木がこの本に関して内容証明を送っている
・高森誠氏(梶原一騎の長男)が、書名は挙げていないが不満らしきものをつぶやいている。

これらの件に関して。
まず、小島氏が書く証言を「本当にその人が言ったのか」と問うのは、おそらく芦原本が、その息子さん(芦原英典氏)の発言を再構成したという体裁の本について、後書きで「「英典氏の言葉を借りながら、生前の芦原英幸を知る私の『想い』を加味させて頂い」たとして、息子さん本人から異議が出されたことなどを念頭においているのだろう。
それに付け加えるなら、たとえば今回の本でも、電車内で梶原一騎がその関係者と、猪木が作った新しい空手「寛水流」その他の問題について語り合い、不満を募らせているさまが描かれているが、あまりにも描写が「詳しすぎる」と感じた。
どんな記憶でも、ここまで詳しくは再現しづらいのではないか。(当時の手記とか、調書でもあるのだろうか?)


しかし、その一方で、それをいったらノンフィクション作品やインタビュー記事はみな同じ条件だという気もする。
本に「〇〇氏は、XX氏について▽▽だと言った」と書いているなら、そうでない、とするにはその〇〇氏の否定発言を得るか(芦原本への批判は、これをクリアしたわけだ)、録音データか何かと引き合わせるとかするしかない。
亀澤元警部の証言は、そう謳っている以上、やはり貴重な資料であり、吉田氏が疑うなら、亀澤氏に直接あたって、小島本でのコレコレは、実際には語っていない、と否定の表現を取ればいいのである。

そして「〇〇の弁」として自分が嫌いな人物の悪口を言わせるスタイル、というのは、前田日明氏の吉田氏のインタビューでつとに感じていたことだ(笑)。あれは前田が自主的に言ってる?いや、そーでもなく、けっこうそれとなく誘導、振ってるでしょ、あの人とかあの人に関して(笑)そして、それを構成時にカットするか残すかによっても変わって来るわけで。それでも前田が言っている(※と言う点は疑わない)以上、別にルール違反ではない。それと基本的には変わらない。


そして、梶原氏の出自を巡る点。
※どんな内容かは下のリンクを参照
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「裏がとれずじまい」なのは、着地点をコントロールできないノンフィクションではそれなりにあることだ。沢木耕太郎「テロルの決算」における山口二矢伝説の検証もそうだし、森達也「悪役レスラーは笑う」もまるごと核心部分は謎のままでありました。(これも、追った人物の民族的出自を検証するものでしたね。その取材と比べても小島氏は深く探っている)。それで完成度が落ちている、というのも一つの見方であろう。
だが吉田氏が忘れているのは、「…と、〇〇が語っていた」というファクト(今回の場合は大山倍達etc)にも価値があるということと、さらにいえば、通説Aに対して「Aでは無かった」というのも、十分な貢献だということである。

たとえば、梶原一騎の父親・高森龍夫氏の経歴、いまウィキペにあるのはほとんどが、斎藤貴男氏の「梶原一騎伝」に依拠するもの(資料として私家版の追悼録がある)だが
ja.wikipedia.org
小島本と検証するなら、この項目はだいぶ「神話」が紛れており、大いに変更する余地があるだろう(あとでやろうかな)。そう変更できるだけでも、大きな進歩というものではないかな。

高森篤子夫人の薬物云々に関してもしかりで、真樹日佐夫氏がすでに書いていた、というなら、逆にそれなりにファクトとしての信頼性もあるだろうし、そこを”ピックアップ”しただけでもまた価値が生まれるだろう。


その真樹日佐夫に関してだけど、まさにうえで問題になっていた亀澤元警部は、こう語ったという。
「弟の真樹(日佐夫)は最初のうちは梶原を庇っているはずが、段々自分の自慢話になって結果的に梶原を貶して梶原に不利なことを言い出す」

ちょっと爆笑しちゃったんだけど、これが亀澤氏の証言そのままか、小島氏の『想い』が加味されているかはともかく、真樹氏の書いたもの、語ったことの批評としてはめちゃくちゃ的確なんじゃないかいな???

これは逆に、氏の晩年にもっとも親しくしていた吉田氏が首肯するのか、否定するのか聞きたいところだ。


たとえば前述の斎藤貴男梶原一騎伝」で引用されている。真樹日佐夫「荒野に一騎吼ゆ」の一節を画像で再引用しよう。

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真樹日佐夫梶原一騎を庇うようでいて、自分の自慢話になっていく」との評は正しいか?


なお、アントニオ猪木氏の公式twitterがいうところの「内容証明」とはいかなるものであるか、そしてそもそも内容証明から次の段階に進むのかは一切わからぬので、推移を興味深く見守りたい。
一般論として、内容証明を送りつつ「送ったぞ」のアピールだけで終わってしまい、その後に何のアクションもないこともままあるので。
アントニオ猪木内容証明を送ったから、この本の内容は根も葉もないんだ!と思うには、小島一志アントニオ猪木梶原一騎もその他もろもろの登場人物も、彼ら過ぎるのである(笑、そして了)