島本和彦「アオイホノオ」最新回で、自分的にはすごく感動的な話があったのでお知らせします。
ゲッサン 2021年3月号(2021年2月12日発売) [雑誌]
- 発売日: 2021/02/12
- メディア: Kindle版
今は島本…じゃなかった焔燃の上京直後の話。彼の引っ越し先に初日から泥酔して転がり込んだ担当編集者が、翌朝の打ち合わせ後に「この本おもしろかったから読んで参考にして」と、一冊の本を置いていく。
その本は…
表紙やタイトルから内容が全く想像もつかない焔は、若干の「?」と同時に読み進めるのだが…
旅になんて出るんじゃなかったーー。食の可笑しみを描く怪作が新装版で復活! &完全新作「夜港」24Pを収録!
「『孤独のグルメ』も『花のズボラ飯』もココから始まった!
分析暴走一人称漫画の原点! そしてなんとまさかの書き下ろしも収録!
俺の本棚で初版本がむせび泣く」ーーーーピエール瀧(電気グルーヴ)
2020年でデビュー40周年を迎える、原作・久住昌之(『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』など)と作画・和泉晴紀(『食の軍師』『ダンドリくん』など )による漫画ユニット・泉昌之。
デビュー40周年を記念して、デビュー作「夜行」を含む初期作品を収録した単行本『かっこいいスキヤキ』を復刊して発売!
トレンチコート姿の男が夜汽車で弁当を食う順番にひたすら悩むーーただそれだけの物語を劇画調で表現したデビュー作「夜行」は、そのバカバカしさとシリアスな絵柄のギャップで漫画界に大きな衝撃を与え、後に大杉漣主演でドラマ化もされた伝説的作品だ。
今回の新装版には、この「夜行」をセルフオマージュした完全新作「夜港」 24Pを収録! トレンチコート姿の男が港町でただただ飲み屋を探すだけーー40年経ってもまったくかわらない、泉昌之の卑小で遠大なる物語をぜひ堪能してほしい!
【追加の重要情報】この作品、2021年2月現在ネットで無料公開中!!
巷の情報によると、この漫画が今は亡き大杉連の主演で、ドラマとなったことがあるとか(「世にも奇妙な物語」らしい)
若いころも今も…「誰かの作品で笑ったり感動したら相手に負けた気がする!」的な、実に大人げない価値観を持ってる彼が、
natalie.mu
※ 佐藤二朗を見て笑いを堪えられなくなるシーンはアオイホノオでなく同人誌なのは注釈いりそうだが - FutureIsWhatWeAre のブックマーク / はてなブックマーク
思わず大爆笑してしまい、衝撃を受けた…というエピソードでした 。
その後、久住氏本人もこの一件を知り反応。
こここ、これは!島本和彦さんが、マンガの中にボクのデビュー作を主人公が読んだ話を描いてくれました。ゲッサン(月刊少年サンデー3月号)より pic.twitter.com/Gw3okeBFR2
— 久住昌之 (@qusumi) February 17, 2021
だが…自分だけだろうか?
「これかっ!!バラバラだったピースが、在るべき形につながった!!」
と、感動した人は…。
今ちょっと残念ながらその文章は見つからないけど、自分が確か最初に書いたんだか、脳内で思いついた島本和彦論の骨子が
「島本作品の面白いところは何だろうか? それは客観的にはどうでもいいよ、なことを、超大げさに描写するギャグ。それも往年のヒーローものやアクションドラマのような文法・ノリで、どうでもいいことを描写する手法だ」
みたいな内容だった。まあ誰でも気付く話なんだけど(笑)、探りでとりあえずその結論に達することができたのは自分的には満足だった。
その先駆として(文章での)東海林さだおもいる。フィールドは食べ物だし
- 作者:さだお, 東海林
- 発売日: 2020/04/08
- メディア: 文庫
その後ずっと後になって…でもないな、「孤独のグルメ」自体は90年代の雑誌連載時に読んでいたんだから。ただその当初は「あの餓狼伝を漫画化し、坊ちゃんの時代を描いた谷口ジローが描いてる変な食事漫画」で、原作者についてはあまり気にしてなかった感じがある。それにあの作品自体はその「大げさなる描写」は最大限に抑えられているわけで。
いや「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」も、大袈裟っちゃ大袈裟だけど。
dic.nicovideo.jp
うおォン。 pic.twitter.com/tVPVmDtf3n
— 11アイランド🦌 (@11island) 2021年2月11日
やはりどうでもいいことを超大げさに描写するという意味での典型作は、この「かっこいいスキヤキ」から少し飛んで、円熟味の増した後の「食の軍師」「花のズボラ飯」などだろうし、自分的にはそれを読んだことで「ああ、客観的にはどうでもいいことを大袈裟な描写にする作風だな」と気づいたんだわな。
だけどこの二人の「関係性」には、まったく気づかなかった。
これもうちの観測範囲の問題だけど 、両者にはあまりこれまで絡みなかったよね?まあ、ただ一方的に、デビュー・上京直後の島本氏が、久住氏の著書を読んで爆笑・驚嘆したってだけなんだけど、その後交流があったのかな?活躍する掲載誌があまり被らなかったこともあり、少なくとも【富士鷹ジュビロ―ホノオモユル】のような「濃厚接触」は無かったと思う
だが、こうやって種明かしされると!
「ああっ、なるほど!! どーでもいいことを、活劇調(特撮、ハードボイルド、軍記ものその他もろもろ)のノリで描写するミスマッチの面白さは、こういう風に系譜が繋がっていたのか!!」
と膝を打った。パンパンと膝を打った。「膝を打ちすぎて膝が痛い」というナンシー関の造語は、まさにこういう時に使うのだ。
しかしこれは自分で気づくべきだったな、そこが悔しいところだ……
そんな感動の中にちょっと苦いものが混じる、そんな想いを皆さんにも感じて欲しいと思い紹介した次第だ。 実際にちゃんと読みたい方は、ただいま発売中。
しかし編集者はグッジョブでした。
この方はその後、大いに出世したはず。この前のアオイホノオでは、編集長と読者からのプレッシャーをはねのけ、クビを覚悟で、「タッチ」で和也を殺すのに加担した(って言い方はアレだが)…という武勇伝が語られていた。
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twitterなどSNSで作品を直接発表する場も増えている今「漫画編集者不要論」というものも出てきているのは事実だが、 もしそれを跳ね返すならこういう形で作者と共に作品作りをするということに尽きるのだろう。
こういう系譜もある…(?)
ちなみに「どうでもいいことを大げさに描く」だけならずそこに「心の中での勝敗、勝ち負け」というのを設定し、 その対決をストーリーの軸にするという点では……久住昌之作品の影響はサンデー60年の歴史が生んだ異形のモンスター「からかい上手の高木さん」 に繋がっているという説が一部で語られている(※いねぇよ)
食の軍師
— 遊牧民 (@megane2480) 2017年2月22日
店を最も楽しむ食べ方を模索しながら酒を飲む主人公の前に、ライバル(と勝手に思ってる)力石がいつも現れて主人公以上の最適解で酒を飲んで主人公が悔しがる漫画。くそ面白い、孤独のグルメの原作者。 pic.twitter.com/5ZhJpcISf7
【創作系譜論】 ※準タグです。この言葉でブログ内を検索すると関連記事が読めます
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