INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「からかい上手の高木さん」は、少年サンデー60年の歴史が生み出してしまった…モンスターである

そうだ、追記【現在、すでに終了しています】

いうの忘れたけど、いま1-3巻がまるごと無料試し読み可能なんだって
(リンク表記は「1巻」だけど、2も3も無料)

csbs.shogakukan.co.jp

では本題

まず、最初に下世話ながら「売れている」という話をしておこう

www.manga-news.jp
これが昨年なのだから、すでに500万部に到達しているのかもしれない…いや…600万部だよ!
www.lisani.jp
スピンオフもあるし、総冊数もシリーズってことでいえばかなり多いんだろうけど、というかそんなスピンオフ作品が出てくること自体が、商業的大成功の証だ。
現在少年サンデーで「最終防衛線」の死守を陣頭に立って行っている編集長が「ゲッサン」時代に発掘したシリーズとして、たぶん最大級のヒット作品だと思われる。、まさにモンスター級!!

「消しゴム」ほか

「消しゴム」ほか

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Prime Video


しかし、自分は同作品の隆盛を、なんとも複雑な目で見ていたのですよ。
懸念している内容は、ここに書かれている通りだけど…要約をしているので、再紹介しよう。

m-dojo.hatenadiary.com
m-dojo.hatenadiary.com

グルメ漫画は、新聞に一紙1本ずつ「四コマ漫画」があるように1誌、あるいは1サイトにひとつか二つあるのがデフォルトになってる気がする。
・それに似た感じで、非常に増えてる(気がする)のが『少人数での、限定された場所での小粋(あるいはシュール)な会話劇を中心に、そういう人たちの”関係性”を描くショートコミック』だ。
・たとえば、人気という点ではアニメ化もされているのだから「からかい上手の高木さん」とかがトップの走者となるのだろう。
・過去に「ゲッサン」を指揮し、現在は週刊少年サンデーの編集長してるあの人が、このジャンルに強いんじゃないだろうか。
ただ、主流作品はこれに、「恋愛要素」を絡めようとする傾向が出てきてるようなんだよなあ。
自分としては、あまりそういうものでなくても、十分成立すると思うのだけど…


このツイートも、別の言い方で、重要点を説明している、と思う。twitterに限った話でもない。




しかしだ!!
「高木一強」体制は、ますます強化されている感あり。

そのおかげで、「ここには無限の未来がある、多様性がある」と思っていた開拓地が広大な単一の牧場になってしまったような、ハイネセンが建国した共和国の理想が、トリューニヒトによって支配されてしまったような……(笑)
はてなダイアリーはてなブログになったら画像が見やすくなったので、この前作ったマッピングを再掲載してみよう

f:id:gryphon:20190707103358j:plain
「関係性ショートコミック」をマップ化してみる

ブコメで「あの作品は?」という声が多数寄せられた。画像を直すのは難しいし、どこの位置に当てはめるべきかもまたいろいろむつかしい。何度かこの種の研究ではやっているが、ブコメ・コメント欄と含めて一体化したものと考えてほしい。あと、この画像どこで改変・再掲載してもいいので、どうぞ自分なりのマップ改訂版を使い、当学会(笑)に報告してください。
ブコメでの指摘】
スクールランブル
BOYS BE…
となりの関くん


しかし、「関係性ショートコミック」で一強化したがゆえに、他ジャンルすら食い殺そうとしている(気がする)このモンスターは、表題にかいたように「少年サンデー」が生んだんだよ。
くわしくいえば、人間のわるいこころと公害と少年サンデーの伝統が生んだモンスター。

f:id:gryphon:20190707123945j:plain
「バキ」ジャック・ハンマーの肉体を薬物で作った博士
うる星やつらが、
さよなら三角が、
タッチが、
らんま1/2が、
プロレススーパースター列伝が、そういうエッセンスが「からかい上手」を生んだと。

……さいご違う。…いや、でも「からかい上手の不死身仮面」とか出てきたしな。

この作品は「デスゲームもの」であるのか?しかし「ルール」がよくわからん。

そも
そも!!

f:id:gryphon:20190707103917j:plain
からかい上手の高木さん


f:id:gryphon:20190707103955j:plain
からかい上手の高木さん

君たちはどういうルールに基づいて勝負をしているのか。
どうやって勝敗を判定しているのか。
説明があるようで、ない。「カイジ」でいう気づきのゲームか。エスポワールの限定じゃんけんか。

…つまり、このマンガもデスゲームの系譜にあるんだよ。(そうか?)
デスゲームというのが、剣と魔法もの(ドラクエもの)、異世界ものや食べ物もの、のように一ジャンルとして確立されているのはわかる。
幽遊白書HUNTER×HUNTER、バトルロワイヤル、ジョジョ……そしてカイジやアカギなど、一定のルールの中でバトルをすることがテーマの作品が、肥大して定着する様は見ていたつもりだったけど、いまいち把握できん。さかのぼればヒッチコックなどが何度も映像化した「ライター点火と指切り落とし」話とかあるしな。(ふだんなら何でもないことを一回も失敗せずやれ、という賭けの話、その後荒木飛呂彦がエッセンスを取り入れて「放り投げたポップコーンを10回連続口で受け止める」というんネタにして描いてたね)
こういうのの源流はカスガさん(@kasuga391)に聞くしかない(笑)
togetter.com

しかし!モンスターたる「高木さん」は、このデスゲームを自らに取り込み、「恥ずかしがったら負け」とかいう、わけのわからないルールを相手と読者に押し付けていく。そして、それがなぜか大人気になる。
こんなモンスターを…少年サンデーの60年は生んでしまったんだ!!

この作者・山本崇一郎……若き日にあの「ゆずチリ」すら戦慄させていた!!

ゆずチリ。
まさに「関係性ショートコミック」で世に打って出ている、あの男。
そもそも自分が関係性ショートコミックの概念を思いついたのは彼が原作をしている「ふたり生徒会」によってだった。

ふたり生徒会(3)

ふたり生徒会(3)

ふたり生徒会(4)

ふたり生徒会(4)

ふたり生徒会(5)

ふたり生徒会(5)

ふたり生徒会(7)

ふたり生徒会(7)


その、「赤門を捨てて漫画界にきた男」こと、ゆずチリ先生が、恐ろしい回想を描いている。( 第35話 「ラブこめ」より)
www.sunday-webry.com


ゲッサンで、連載トライアウトに参加するチャンスを得た彼。

f:id:gryphon:20190707110239j:plain
ゆずチリ 漫画学科のない大学、アンケート

そのコンピューターのごとき頭脳を生かし、ゆずチリ氏はサンデー…ゲッサンの傾向を検討し、こう結論付ける。その結論は…

f:id:gryphon:20190707110346j:plain
漫画学科のない大学、ラブコメのないサンデーはあり得ない

しかし!!!

f:id:gryphon:20190707110445j:plain
漫画学科のない大学、高木さん連載に負ける

なに、この不幸。
孔明と同時代に、周瑜はなぜ生まれたのか……。

ゆずチリ氏の「忍者シノブさん」残念ながらアニメにならんかったしな…
その後、彼は「軍門に下った」といったら失礼なのだろうが(失礼です)、
「ラブコメ寄り関係性ショートコミック」連載に本格的に手を染めている。
kuragebunch.com


ジャイアント馬場アントニオ猪木のように、「おれはゴーイングマイウェイ!」と闘志を燃やしているのだろうか。(※プロレススーパースター列伝から離れろ)

f:id:gryphon:20190708100805j:plain
プロレススーパースター列伝 おれはゴーイングマイウェイ

そしてモンスターは作り手のコントロールを脱し…少年マガジンをまたいだ!!

サンデーとマガジンの同時連載!!!
そんあことがありなの??? サンデーを放逐された(うそつけ)久米田康治の立場は???

pocket.shonenmagazine.com

そしてまた、やってることは同じだしさ(笑)

それ一本で、サンデーとマガジンを自由に往来する、フリーバード!!!

こういうモンスターが、いま、漫画界を徘徊しているのである。
それは当時のゲッサン編集長が「神と喧嘩して」この異形の化け物を創った、報いなのか…
(了)