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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

『菅義偉と杉田和博は「そこまでやるか」という人事をしている』…2018年の本で

「平成の政治」という本があります。タイトルで大損だよね、何の訴求力もない(笑)自分も御厨貴の本じゃなかったら読まなかったかなー。

平成の政治

平成の政治


ただ座談会形式で語られる本って、意外なところで意外な情報が載ってるもんだからパトロールはやっぱり労をいとわずやらなきゃいけない…だが1年ほど前に読んだ上で今回再読したのだけど、その1年でこの部分があっという間に「重要情報」となりました。

官邸が知り尽くす「官僚情報」―内閣人事局の功罪

芹川  内閣人事局で官僚の人事をチェックできるという意味での政治主導は決して悪いことではないと思います。ただし、若干やりすぎがある、人事に手を突っ込みすぎているのではないかという批判がありますよね。
 

御厨  それは、菅(義偉)官房長官のやり方の問題かもしれません。現在、(菅氏のもとで)内閣人事局長を務めているのが杉田和博さんという警察官僚出身の方です。この人たちが、「そこまでやるか」という人事をしている面がある。
もともと官僚人事というのは、各省庁の動きの中での流れがあって、ときにその流れに逆らう人事があっても、だいたいは元に戻るというのが普通でした。ところが、いまは戻りようがない。
それは菅さんが事前に人事に手をつけているからです。菅さんは、官房長官に就任して2年目に私に「見ていてごらん、これからは自分の人事が実現するから」と言いました。
私が「各省のいろいろな人材をよくそんなにご存じですね」と言ったら、「それは努力していますから」と答える。菅さんは、各省の随所に「スパイ」を置いているから、情報が毎日のように入る。スパイというと聞こえが悪いけれども、けっこう現場から上がってくる情報は正しいと言います。
そして信賞必罰で、法務省最高裁など、従来は(官邸が)介入しない人事にも手をつけるりがポイントです。しかも何度も手を入れる必要はない。1回か2回、脅しをかければ、その後は偏向人事はやらないという触り方なんですよ。

菅さんの下で実務を担う杉田さんは、公安情報というものを知り尽くして、ありとあらゆる所の裏側をむき出しにできる手法はすごいものです。だから、いまの官邸は何百人という官一挙手一投足をすべて知り尽くしています。

そういう意味で、いまの官僚人事はこれまでとは違っていて、警察が人事を握っている、という面があって,それはどちらかというと全体としては暗いほうに向かってしまう。すべての情報を知られた中で人事をされるわけですから。でも誰も文句を言わない。それは公安が怖いからです。そこは行き過ぎだと思います。

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「平成の政治」で語られた、菅義偉と杉田の人事の問題1

ちなみに、今、内閣は「人事には言えることと言えないことがある」というのを防波堤にしているが、制度的にはこの問題を解決する枠組みに、いくつかの例があるのだという。

大田  いまの状況はわかりませんが、人事への政治介入が完全にいいとも思えません。企業のコーポレートガバナンスでは,昔ながらの監査役会設置会社であっても、指名諮問委員会というのが作られています。
指名委員会等設置会社の指名委員会のように人事そのものを決めるわけではありませんが、指名諮問委員会は,人事の決定過程をチェックします。例えば、社長が後継を決めるプロセスが妥当だったのか。
後任人事が恣意的で自分が影響力を行使できるから決めたということはないのか、などを見ます。官僚人事にもそういうガバナンス的な部分はあっていいと思います。
なぜこの人なのか、どういうプロセスで決めたのかなど、恋意性が働いたか働かないかについては外の目が入るのは大事です。
イギリスでは,各省次官などの幹部人事は、有識者も入る上級公務員選考委員会で決めると聞いたことがあります。そういう指名諮問委員会のようなものがあってもいいかもしれません。


御厨  チェックするのが内閣人事局長と官房長官だけというのは、「逆の恣意」がないか、という感じがしますよね。


芹川  アメリカは大統制であっても、議会がチェックして政治任用があるわけです。そういう意味では,日本は何のチェックもないということになりますよね。

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「平成の政治」で語られた、菅義偉と杉田の人事の問題2

大田とは大田弘子、安倍・福田内閣特命担当大臣でいまは政策研究大学院大学の教授だそうだ。
御厨氏の共著者芹川洋一とは、日本経済新聞論説フェロー(元論説主幹)とのこと。

上は第二部(128P)からの抜粋だが、終章でも少し御厨氏は語っていた。
写すのは面倒なので要約。(255P)

6年(当時)政権が続くとは本人らも思ってなかったはず。すると内閣人事局という「得たいが知れない者」に杉田氏が局長として座る。
権限でなく人、つまり杉田がどう考えるかで物事が決まってしまう。
その杉田は官房長官(菅)を忖度する。私(御厨)も、その忖度ぶりに驚いた局面がいろいろあった。
ボスが何を考えているかわかる。だからそこには触らずにどうするかを考える。すると肝心な「人」を見なくなる。
人事権を持つ人…内閣人事局局長などは、2年ぐらいの任期付きにすべき。大きな力を持ちすぎ、現在の局長に気に入られるかの問題になる。
気に入られたら「内閣官僚」に。気に入れられなければ「国元(出身官庁)に帰れ」になっている。
官房長官や副長官も、在任は長すぎてはいけない。菅は後藤田や野中が持っていた「総理との緊張関係」が少なかった。