イスラエルの戦略家たちは、どうも年老いた革命体制の遠くにあるイランよりも、元気が余っていて近くにあるエルドアンのトルコの方が大問題と考えているみたいなんだよね。このあたり日本で理解されていない。池内恵「イスラエルの深謀遠慮の対象はイランよりもトルコ」 https://t.co/P1Ci0e8CKo
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) 2020年9月12日
イスラエルの深謀遠慮の対象はイランよりもトルコ
2020年9月13日 01:17
イスラエルの外交・安全保障政策の最重要の課題は、イランであるということに、表向きはなっている。イスラエルの外交官も、専門家も、口を揃えて、イランの脅威について同じようなことを言う。しかし、イスラエルの専門家、特に国家の長期的な戦略を考える立場の人たちの発言…
相次ぐ外交攻勢で事実上「イラン包囲網」を完成させたイスラエル、いよいよ懸案となるのがトルコです。
— フォーサイト(Foresight) (@Fsight) 2020年9月14日
強大化して直接の脅威になりかねないトルコをいかに包囲するか、これがイスラエルの最重要課題になりそうです。https://t.co/b6jbiJbKOs
湾岸諸国が次々とイスラエルと国交を結ぶ2020年。すでに湾岸諸国の本音は、イランやシリアを封じ込めて王制を守るためならイスラエルの存在に目をつぶる、がホンネだったとはいえ、この「ホンネ」を「タテマエ」にすることの重大さと困難さは、誰もが知っていることだ。
それが実現してしまうのは、一にも二にももっとも予測不能なトランプ政権と、もっとも狡猾で老獪なネタニヤフ政権という悪魔合体だ。
ガチャガチャに箱の中を揺り動かしてたら、パーツがぴたりとはまったような……トランプ外交の無茶さは言うまでもなく、イスラエルはオバマとオランド前仏大統領の間で「あいつだけは我慢ならん」と愚痴り合うほどに、ある種西側の中で孤立する危険性もあった。
www.huffingtonpost.jp
というか、今の地位はコロナによる緊急の例外的なもののはずだが…なんと、野党が選挙後に分裂して一部が与党と組んだのか…。
www.jiji.com
まあ、そんな形で、湾岸のイスラエルとの国交正常化とは、実質的な「イラン包囲網」なのである。
ならばイスラエルは高笑い、安全保障では枕を高くして寝られる??
いや!!
そこに立ちふさがりますは、「21世紀のスルタン」エルドアンによる権威主義体制が続く、トルコ共和国…あらため”新オスマン帝国”なのでしょうか…
……2005年、ある団体が、トルコ国家評議会(最高行政裁判所)に対し、アヤソフィアは本来、1453年にコンスタンティノープルを征服したオスマン帝国のスルタン、メフメト2世が設立した財団のものであるとの訴えを起こした。
先日、最高行政裁判所はこの訴えを聞き入れ、メフメト2世の時代に作られた不動産証書において、アヤソフィアはモスクとして登録されており、これ以外の目的で使用されることは違法であるとの結論を下した。この決定を受け、トルコのエルドアン大統領は、建物の管轄をすみやかにトルコ文化省から宗務庁へと移管した。
7月10日、トルコの最高行政裁判所が、アタチュルク初代大統領の行った変更を無効とする判断を下した。裁判所の決定を受け、エルドアン大統領は、アヤソフィアを再びイスラム教の礼拝の場であるモスクとすることを発表。そして、国民に対し「我々は、裁判所の判断に基づき大統領令をもって、アヤソフィアを再びモスクとする」と宣言した。
この日、アヤソフィアの周辺には、大勢の市民が詰めかけ、「この日を待ち望んでいた」、「我々にとってお祝いの日だ」など歓迎の声をあげた。
タメル・カランジュさん(53歳)は、子どもの頃から、アヤソフィアを訪れるたびに博物館であることに違和感を抱き、ここで礼拝ができないことが悲しかったという。しかし、いまは、7月24日にアヤソフィアで初めて行われる金曜礼拝を家族と一緒に心待ちにしている。「我々は、アヤソフィアで礼拝する権利を与えられたのではなく取り戻したのだ。エルドアン大統領をさらに好きになった」(タメル・カランジュさん)
www.nhk.or.jp
…ギリシアでは「文明世界に対するあからさまな挑発」とする怒りが強く叫ばれ、湾岸都市ピレウス市商工会会長のように、国内の実業家らにトルコとの商取引停止を、市民に対してはトルコ製品のボイコットを呼び掛ける者も現われている。
ギリシア正教会と系統を同じくするロシア正教会のウラジミール・ルゴイダ報道官も「数百万人に上るキリスト教徒の懸念の声は届かなった」と厳しく批判し、ローマ教皇も「大変悲しく思う」と声明を出した。ユネスコのオードレ・アズレ事務局長も、ユネスコとの事前協議なしに今回の決定が下されたことに「深い遺憾」の意を表明した。
しかし、イスラーム主義色濃厚なトルコ政府の姿勢は変わらず、ユネスコに対してはオズギュル・オズカン・ヤヴズ文化観光副大臣がTwitterアカウントを通じて次のような返答を…
news.yahoo.co.jp
「アタチュルクの行ったことを無効とした」が重要。エルドアンとその政党は、さまざまなタブーや既成の体制による制約もありあからさまには言わないが「アタチュルクよ、お前のやったこと(政教分離)は間違いだ」という心情を抱いている(日本の保守派の現憲法に対する感情にも似ていよう)のは間違いない。
そしてそれは「イスラーム世界の盟主」との自負も生み、それはやがて「サウジやエジプトが捨て、ペルシャでシーア派の異端者イランだけがスローガンで唱えてる反イスラエルを、われらが主導する」との意識になるかも……
怖い怖いこわい。果たして、こうなっていくのであろうか。
イスラエルは、かつてのウィーンのような「黄金の林檎」なのか……
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