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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

【資料】新型肺炎・主要社説集(全国休校など)

朝日新聞

(社説)休校の決断 重みに見合う説明を

2020年2月29日 5時00分

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、安倍首相がおととい表明した全国すべての小中高校などへの休校要請が、困惑と混乱を広めている。

 感染防止のためにできる措置を迅速にとることは危機管理として必要だろう。ただ、政府の専門家会議で議論にもなっていない休校を、突然、全国一斉に求めることが国民生活に与える影響は、あまりに大きい。

 首相はきのうの衆院予算委員会で「最後は政治が全責任をもって判断すべきものと考え、決断を行った」と、自らの判断であることを強調した。

 そうであるならば、異例の措置に踏み切った理由と、不安をかかえる人たちにどのような対応策を政府として用意しているのかを、首相自身の口から、国民に向けて丁寧に説明することが不可欠である。

 首相が、3月2日からの一斉休校を要請する方針を表明したのは、27日夜の対策本部でのことだった。

 全国の小中高・特別支援学校には、あわせて1300万人の子どもたちが通う。学校運営に携わる自治体や教職員、保護者やその勤務先の関係者まで含めれば、対応をそれぞれ考えねばならない人の数は膨大だ。土日を含む、わずか3日間のうちに答えを出せと言われても、「どうしていいのかわからない」というのが実情ではないか。

 打ち切られた授業の遅れをどう取り戻すのか。期末試験や卒業式をどうすればいいのか。低学年の子を残しては働きに出られない保護者は仕事を休めるのか。その間の賃金はどうなるのか。課題は山積みである。

 首相が方針を表明した時点で文部科学省内で知らされていたのは、一部の幹部だけだった。全国の教育委員会への連絡はその後に始まった。学童保育を受け持つ厚生労働省との調整など、具体策は詰めきれないままの見切り発車だった。

 政府の専門家会議は24日に出した見解の中で「1~2週間が急速な感染拡大が進むかの瀬戸際」との見方を示したが、休校には触れていない。翌日に政府が発表した基本方針でも、臨時休校の適切な実施に関して都道府県から要請するとの内容が入っていただけだ。

 専門家会議のメンバーからは「(一斉休校は)諮問もされず、提言もしていない。効果的であるとする科学的根拠は乏しい」との声が漏れる。

 対策は時間との戦いだし、トップによる果敢な決断が必要なときもあるだろう。首相は遅ればせながら、きょう、記者会見を開くという。国民の不安に正面から答えられなければ、政治判断への信任は得られまい。



(社説)新型肺炎対策 不安拭えぬ首相の説明
2020年3月3日 5時00分

 国民の不安を拭い、納得を得るためには、説明も対策もまだまだ不十分だ。自らの政治決断だという以上、安倍首相には先頭にたって、きめ細かな対応に努めてもらわねばならない。

 首相はきのうの参院予算委員会の冒頭、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の小中高校などに求めた一斉休校などの措置を説明し、与野党に協力を求めた。

 政府が決めた基本方針では、臨時休校の判断は都道府県に任されていた。首相はそのわずか2日後、一転して一斉休校の要請に踏み切った。平日の準備期間は1日しかなく、学校関係者や保護者、その勤務先まで、困惑と混乱が広がった。

 国民生活にこれほど大きな影響を与える決定である。自身の口から直接、説明すべきだとの声に押されるように、首相は先週末、ようやく記者会見を開いた。感染拡大か収束か、この1、2週間が「瀬戸際」だと訴えたが、感染者が確認されていない県まで一律に対応する根拠は具体的に示されなかった。

 首相は予算委でも「専門家の意見をうかがったものではない」と、科学的な知見に基づくものではないと認めた。幼稚園や保育園、学童保育は続けるという判断も同様だ。首相は小さな子どもを家で1人にはできないと理解を求めたが、「学校より感染リスクが低いのか」という野党議員の質問に、政府の専門家会議の座長は「リスクの比較はしていない」と答えた。

 記者会見にしろ、国会答弁にしろ、首相は準備された説明を繰り返す場面が多く、自らの言葉で国民の不安に丁寧に向き合おうという姿勢はうかがえない。遅ればせながらの会見も、時間はわずか35分。その後に特段の公務が控えていたわけでもないのに、質問を打ち切って帰宅した。

 首相が大規模イベントの開催自粛を呼びかけた当日、地元の仙台市内で政治資金パーティーを開いた秋葉賢也首相補佐官に対しても、「注意」をしただけで、野党の罷免(ひめん)要求は一顧だにしなかった。国民に不便を強いるなら、自らやその周辺は「隗(かい)より始めよ」ではないのか。

 9年前の東日本大震災のとき、当時野党だった自民党民主党政権に協力し、活発な与野党協議を経て、多くの議員立法を成立させた。

 国民のいのちと暮らしを守るために与野党が協力するのは当然だ。その前提は、政権与党の側が野党の指摘や提案に虚心に耳を傾けることだろう。与野党を超えて政治の責任を果たせるか。これまでの安倍政権に欠けていた謙虚さを発揮できるかにかかっている。

読売新聞

イベントの自粛 再開の道筋も探っておきたい
2020/03/01 05:00
 新型肺炎対策では、ここ2週間の取り組みがカギを握る。感染の機会を減らす措置を取るのはやむを得まい。

 スポーツの試合やコンサート、展覧会などのイベントの延期や中止、規模縮小の動きが相次いでいる。

 プロ野球は3月15日までのオープン戦を無観客で行う。サッカーJリーグやバスケットのBリーグ、ラグビートップリーグは一定期間、公式戦を延期する。

 人気グループのPerfumeやEXILEのコンサートは中止され、劇団四季は8日までの全公演を取りやめた。国立の博物館や美術館は臨時休館している。

 多数の観客が集まるスタジアムやコンサート会場は、人と人とが近距離で接触する。イベントの自粛には、感染拡大のリスクを抑止する効果が期待される。

 政府が2週間の行事の中止や延期などを呼びかけたことも、各主催団体が自粛に舵かじを切る契機になったと言えよう。

 ただ、スポーツや芸術活動には人々の気持ちを前向きにし、豊かにする力がある。東日本大震災後に女子サッカーの活躍が日本を勇気づけたことが思い出される。

 8日に初日を迎える大相撲春場所では、無観客とした上で開催することが検討されている。春場所がテレビ中継されれば、多くの人が映像を通じて土俵上の熱戦を楽しむことができよう。

 インターネットなどを通じて、スポーツ選手やアーティストたちの活動が、イベントの自粛中も人々に伝わるといい。

 試合や催し物の実施を控える一方で、再開への道筋を探っておくことも大切である。

 新型コロナウイルスは分からないことも多いが、今後、時間の経過と共に、感染力や症状の特徴などが解明される可能性がある。新たな知見を参考にして適切な対処策を講じれば、イベントを実施できるケースも出てくるだろう。

 スポーツ観戦の際に応援歌を歌うことを控えて飛沫ひまつ感染を防止する。展覧会で入館者を一定数に制限して混雑を避ける。こうした対策を今から検討しておきたい。

 気がかりなのは、日本に対する海外の目が厳しさを増していることだ。サッカーワールドカップ予選で、モンゴルが日本からの渡航者の入国を禁止し、試合の開催が危ぶまれる事態になっている。

 日本政府は国を挙げて実施している新型肺炎対策について、諸外国に丁寧に説明し、理解を得ていくことが欠かせない。





新型肺炎 クルーズ船の対応から教訓を
2020/03/03 05:00
 横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客らの下船が終わった。

 これまでに乗客6人が日本で死亡したほか、下船後に発熱などの症状を訴える人も相次ぐなど混乱が目立った。政府は対応を検証し、今後の感染対策に生かさねばならない。

 クルーズ船は2月3日に横浜港に入港した。香港で1月下旬に下りた乗客が新型肺炎と確認されたため、政府は、約3700人が乗る大型船の検疫という前例のない作業に直面した。

 クルーズ船は英国船籍で、運航会社は米国、乗員・乗客の国籍は56か国・地域に及んだ。国際法上、日本は公海上の船に対し感染症対策を行う権限はなく、また入港を受け入れる義務もない。

 しかし、横浜が発着地で、日本人が1000人以上乗っていたことを考えれば、入港を拒否せずに、検疫に乗り出した政府の判断は妥当だったと言えよう。

 政府は当初、乗客を下船させる方針だったが、船内で感染が広がったことが確認され、2月5日からは乗客を船室にとどめた。

 政府は「船室への隔離は有効だった」とするものの、その後の感染者の続出をみれば、隔離が完全に機能したとは言い難い。

 さらに、2月19日から下船を始めたものの、下りる前に検査を受けなかった乗客がいたり、現場で支援にあたった厚生労働省の職員が感染したりするなど、様々な問題点が明らかになった。

 短時間乗船した医師が、動画投稿サイトで船内の対応を批判する騒動もあった。政府側の情報発信が不十分な中、内外のメディアが動画に注目し、海外の不信感をあおる結果となったのは残念だ。

 現場の意思決定にも疑問が残る。厚労省幹部が次々と難しい決定を迫られ、下船を巡る判断が揺れ動いた感は否めない。

 そもそも、日本では感染症対策の管轄は厚労省のほか、内閣官房国立感染症研究所などに分かれ、専門家の意見を反映した素早い意思決定がしにくい状況にある。

 米国の疾病対策センターCDC)は、情報収集や国民への説明、検疫作業まで、幅広い役割を担い、感染症対策の陣頭指揮をとる。日本でも、CDCを参考に危機的な事態に対処できるような体制作りを検討すべきではないか。

 自らを感染の危険にさらして船内検疫にあたった医療関係者が職場で「ばい菌」扱いされ、参加を咎とがめられた事例もあったという。こうした差別は許されまい。

毎日新聞


「全国休校」を通知 説明不足が混乱を広げる
毎日新聞2020年2月29日 東京朝刊




 新型コロナウイルスの感染拡大で、安倍晋三首相が全国の全ての小中高校などに一斉休校を要請したことに対し、国民に戸惑いと不安が広がっている。

 首相は今回の要請が政治判断であり、全責任を負うと強調した。だが、実際に対応を迫られるのは国民や教育現場だ。このままでは混乱が加速しかねない。

 3月2日からの休校を求めた首相発言は唐突だった。一夜明け、各機関への調整不足が表面化している。

 まず浮かんだのは全国一律の対応を地方に求めることの非現実性だ。

 自治体の対応は分かれている。東京都などは要請通り2日から休校することにし、金沢市は現時点での実施を見送った。

 首相の要請を受けながら休校を見送れば、もし子どもに感染が広がった時に責任を問われるのではないかと悩む自治体もありそうだ。しかし、地域によって感染の広がりなどは大きく異なる。それぞれの事情に応じた判断があってかまわない。

 文部科学省がきのう、全国の自治体に休校を要請した通知でも、期間については地域や学校の実情を踏まえて判断していいと明記した。

 それなら、この見解を首相要請の時点で明確にすべきだった。対応が「日替わり」で迷走していないか。

 保護者側の負担の大きさも改めて指摘したい。

 非正規雇用の一人親は、子どもの世話で長期の休みをとれば、収入が減って生活の困窮を招くと不安を感じている。首相はこうした収入減への対策を検討する考えを示した。早急にまとめてほしい。

 また、医師や看護師、消防士といった職種の人が一斉に休めば、市民の健康や安全が脅かされかねない。先行して一斉休校した北海道では、外来診療を制限した病院もある。千葉市熊谷俊人市長は「社会が崩壊しかねない」と懸念を示した。

 政府は休校期間も学童保育を開くことを認め、夏休みなどと同等に開所時間を延ばすよう促した。だが、受け入れ態勢が課題になる。学童保育から感染が広がる恐れもある。

 首相はきょう一連の対応について記者会見で説明する方針だ。さまざまな課題に政府としてどう取り組むかを具体的に示さねばならない。






新型肺炎の首相会見 もっと不安減らす説明を
毎日新聞2020年3月1日 東京朝刊


 国民に呼びかけた理解と協力がこれで得られるだろうか。

 新型コロナウイルスへの対応をめぐり、安倍晋三首相が記者会見した。首相がこの問題で、国民に直接説明する場を設けたのは初めてだ。

 遅きに失した会見である。政府の水際対策は事実上失敗している。クルーズ船乗客や中国からの帰国者を除き、国内での感染は200人を超した。感染が深刻化した北海道は、週末の外出自粛要請を出した。

 国民の不安は日々増している。それだけに、首相がこれまでの対応をどう総括し、感染防止へどんな具体策を説明するかが注目された。

 だが、会見はこうした要請に応えたものではなかった。

 首相が唐突に出した全国の小中高校への休校要請は、教育現場や保護者に混乱を起こしている。首相は「断腸の思い」の政治判断と訴え、保護者が仕事を休んで減収となる場合の助成制度を創設すると述べた。

 しかし、政府が基本方針を決めた2日後にいきなり示した唐突さについては「判断に時間を割くいとまがなかった」などと述べるにとどめた。全国一斉が必要と判断した根拠も踏み込んで語らなかった。

 国民が不信感を強めるウイルス検査数の少なさについては検査能力の拡大や、医療保険適用による民間検査の実施を進めると強調した。だが、必要な人が検査を受けられているかのチェックが十分に機能しないと、現状は容易に改善されまい。これまでなぜ、検査が進まなかったのかをもっと説明すべきだ。

 感染者を受け入れる病床は現在約2000床あるが、緊急時に5000床超を確保するという。必要な措置だが、そもそも基本方針に明記すべき内容ではないか。

 首相はまた、今後の感染拡大に備えた立法措置を講じると表明した。早急な法整備には国会で野党の協力を得ていくことが必須だけに、首相自身が環境整備に動く必要がある。

 ようやく実施された会見だが、感染を広げてしまったことへの率直な総括は聞かれなかった。質問時間を制限した対応も理解に苦しむ。

 首相は感染終息に向け「深く深く協力を願う」と国民に頭を下げた。真剣にそう願うのであれば、疑問にもっと正面から答えるべきだ。

東京新聞

新型肺炎で専門家見解 若者も拡散リスク知って
毎日新聞2020年3月4日 東京朝刊
 ある意味で「落とし穴」だったと言っていいだろう。新型コロナウイルスの感染について専門家会議が若者に焦点を当てた新たな「見解」をまとめた。

 多くの場合、10~30代の若い世代はこのウイルスに感染しても症状が軽い。このためこれまでは対策の中心となってこなかった。

 ところが、分析によると、若者の間で目に見えない感染クラスター(集団)が生まれ、そこから中高年に感染が広がっている可能性が高いという。それが高齢者や持病のある人たちの重症化や死亡を招く恐れが大きく、看過できない状況だ。

 「自分は感染しても大丈夫」と思わず、弱者への想像力を働かせ、感染を広げやすい場を避けてほしい。若年層でも重症化する人が一定程度いることも忘れないようにしたい。

 全国の感染状況の分析から見えてきたのは、8割の人は他人に感染させないが、条件によって1人から多数に感染するケースがあることだ。

 こうした集団感染は、ライブハウス、スポーツジム、立食パーティーといった、一定時間、人と人が至近距離で交わる閉鎖空間で生じやすい。しかも、気づかぬうちにそこから広範囲に飛び火することもある。

 その様子が可視化されたのが北海道だと考えられる。

 都市部に若者を中心とする見えない感染クラスターがあり、活動的な若年層を通じて高齢者の多い地方に感染が広がった。実際のデータはないが、そう考えないと現状の説明がつかないと専門家会議はみる。

 北海道は感染急増の入り口にあるとみられるが、行動に気をつけることで急増を抑制できる。医療崩壊を防ぐためにも、一定期間、不便さや楽しみを我慢しても感染拡大を招きやすい場を避け、軽い風邪症状でも外出を控えることが大切だ。

 政府は専門家会議の見解を踏まえた対策を早急にとるべきだ。

 同様のことは東京、大阪など北海道以外の都市部でも起き始めていると見るのが自然だろう。「人が集まる風通しの悪い場所を避ける」という行動は、全国どこでも重要だ。

 情報の伝え方にも工夫がいる。若者自らが、SNSなどを通じて、感染爆発を防ぐための正しい情報を拡散してくれることにも期待したい。





一斉休校要請 混乱収拾は国の責任で

2020年2月29日


 全国の学校は大わらわだろう。新型肺炎拡大防止で、国の一斉休校の要請はあまりにも唐突だった。どういう根拠にもとづく施策かも説明不足だ。生じる混乱の責任は国が負わねばならない。

 学校保健安全法は、感染症の予防上必要があるときは、学校設置者は臨時に休校できると定めている。つまり公立は地方自治体の教育委員会、私立は学校法人に判断は委ねられている。

 そのため一斉休校は国からの「要請」という形を取っている。強制力はない。しかし判断材料も十分ではない中、独自の対応をするのは困難と考える自治体も多いだろう。週明けから休校の動きは広まるとみられる。

 期末試験を実施しないまま、どうやって成績をつければよいのか。入試はどうするか。卒業式は-。休校後も先生たちの苦悩と混乱は続く。

 学校という多人数が密集する環境での集団感染を防ぎ、同居する高齢者に感染が広がらないようにする。一斉休校にはそういう効果が期待されている。しかし感染者が確認されていない地域まで一律で休校する必要があるのか、専門家の意見も分かれている。

 親が満員電車で通勤しているのに、子どもだけ休校にして家庭の感染リスクは低下するのか。学童保育保育所は原則開所というが、判断の線引きは一体どこにあるのか。疑問は次々わいてくるが、明快な説明はない。

 根拠(エビデンス)がはっきりしない方針が次々打ち出されると、目指す方向性が見えにくく、国民の不信は増すばかりではないのか。

 心配されているのは、親が休まざるを得ない状況に追い込まれ、経済的な打撃を被ったり、働き手が不足する事態だ。実際、すでに知事が休校を要請している北海道では、大勢の看護師が日中働くことが困難になり、外来を制限し始めた病院もある。

 預け先のない家庭の子どもを学校で受け入れると決めた自治体もあるが、国は休業補償など具体策を早急に示すべきだ。

 休校後は、自宅で過ごすことを求められている子どもたちのストレスも気掛かりだ。新型肺炎への不安を過度に膨らませ、それが感染者への差別、偏見につながってしまう事態は避けねばならない。誰でも感染の可能性があるし、不運に見舞われた人がいれば互いに思いやる社会となるよう、大人は子どもたちと話をしてほしい。

産経新聞


【主張】首相の休校要請 説得力ある呼びかけを 「緊急事態宣言」へ法整備急げ
2020.2.29 05:00コラム主張


 安倍晋三首相が、中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国すべての小中高校などに対し3月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう要請した。

 政府の25日の基本方針にもなかった異例の対応であり、社会に与える影響は極めて大きい。新型肺炎の流行を抑制するため、必要かつやむを得ない措置を政治決断したものといえる。

 問われるのは、この措置についての説得力のある説明だ。流行に関する現時点の見通しはもちろん、なぜ今、一斉休校とし、これを春休みまでとしたのかという理由も聞きたい。休校するかどうかで抑制効果がどれほど違うのかも示すべきである。

 ≪後手の対応を立て直せ≫

 安倍首相は29日に記者会見を開き、国民の協力を求める。1月中旬に日本で感染者が確認されてから初めての会見であり、遅きに失した感は否めない。

 政府のこれまでの対応は後手に回り、情報開示も不十分だった。その点への真摯(しんし)な反省はもちろん必要だ。同時に、国民が国政の最高責任者の説明を求めていることを銘記すべきである。首相には新型肺炎と戦う態勢を立て直すよう指導力を発揮してほしい。


 休校要請の対象となる児童、生徒らは約1300万人いる。日本の歴史にこれまでなかった規模だ。新型ウイルスとの戦いが容易ならざるもので、日本が緊急事態の渦中にあることを意味する。

 休校を決める権限は政府ではなく、全国の教育委員会や学校法人にある。首相の表明を受けて文部科学省や各教委からは驚きの声があがった。首相が打ち出さなければ全国一斉休校は到底実現できない。各地の教委などは要請を重く受け止めて対応すべきである。

 学校は、大勢の子供が日々、同じ教室で学び、食事もとる集団生活の場だ。ウイルスにとって格好の温床となる。子供たちがウイルスを持ち帰り、高齢者を含む家族に感染を広げる図式はインフルエンザと共通する。一斉休校の意義は大きく、感染者や犠牲者を減らすことに寄与するだろう。

 およそ百年前にスペイン風邪が日本で大流行した際は、学校や軍隊から全国へ感染が広がった。その教訓を忘れてはならない。

 一方で全国一斉休校はさまざまな副作用をはらむ。それへの対応策も整えなくてはならない。

 一人親や共働きの家庭では、保護者の仕事をどうするかという問題が生じる。文科省学童保育を朝から開所するよう求めた。千葉市などは休校後も、低学年の児童を小学校で預かる方針だ。

 政府や自治体、勤務先、家族が知恵を絞ることもウイルスとの戦いである。東日本大震災の際に多くの人々が助け合ったことを思い出したい。

 首相は衆院予算委員会で、収入減となるパート労働者など保護者への支援策検討を表明した。急ぎ具体策をまとめるべきだ。

 米国株式市場の株価が史上最大の下げ幅を記録し、28日の東京市場でも一時1千円を超える下げ幅となった。企業の資金繰りへの支援など、万全の対策を講ずべきは当然である。

 ≪検査態勢の拡充必要だ≫

 感染の急拡大を受けた法整備も浮上している。安倍首相は28日の衆院総務委員会で、新型インフルエンザ等対策特別措置法を参考に法整備を急ぐと表明した。今後、同特措法にあるような「緊急事態宣言」を活用すべき局面がくるかもしれない。与野党は協調して早期に法整備を果たしてほしい。


 新型肺炎対策は、一斉休校だけで済む話でもない。現時点でも湖北・浙江両省以外の中国から、1日平均800人の入国がある。これで大丈夫なのか。

 感染の有無を調べる検査態勢の拡充は急務である。加藤勝信厚生労働相は来週中に検査の公的医療保険適用を決める意向を示したが遅すぎる。現場の医師が必要と判断すれば検査できる態勢を整えなくては、感染の抑制も治療も不十分となる。民間検査会社の全面協力が欠かせない。

 企業などは政府の呼びかけに協力し、相次いでイベントの中止・延期を決めている。そのような中で秋葉賢也首相補佐官が26日夜、立食形式の政治資金パーティーを開いた。言語道断で首相を支える任に堪えない。更迭することが当然である。




【主張】安倍首相の会見 矢継ぎ早に具体策講じよ
2020.3.1 05:00コラム主張


 安倍晋三首相は新型コロナウイルスの脅威から国民と社会を守るため、必要だと確信する具体的な対応を時機を逃さず、矢継ぎ早に講じていかなくてはならない。

 2月29日の記者会見で首相は、国民や全ての関係者に対し、全国の小中高の一斉休校を要請したことへの理解を求めるとともに、新型肺炎との戦いへの全面的な協力を呼びかけた。

 首相は「率直に言って政府の力だけでこの戦いに勝利を収めることはできない」「収束への道のりは予断を許さない。厳しい戦いが続くことを覚悟しないといけない」と述べた。

 日本は文字通りの緊急事態に直面している。新型ウイルスとの戦いはもはや、後手に回る対応をしている余裕などない。安倍首相は「首相として先頭に立ってなすべきことは決断していく」「政治は結果責任だと言ってきた。逃れるつもりはない」と語った。緊急事態に臨むリーダーとして、当然の心構えであろう。

 感染拡大の防止のためには、異なる意見に耳を傾けつつも、国政の最高責任者にしかできない政治判断をスピード感をもって下し、実行に移す必要がある。

 一斉休校には批判もあるが、約1300万人に及ぶ子供たちを守るための措置である。感染の広がりを抑え、子供たちと暮らす高齢者や基礎疾患のある弱者を守ることも期待できる。


 首相はこれに伴って休業せざるを得ない正規、非正規労働者の所得減少に新しい助成金を創設することや、企業に対する雇用調整助成金を、特例的に1月にさかのぼって適用すると表明した。

 経済への深刻な影響を踏まえて10日程度で第2弾の緊急対策をまとめる方針も打ち出した。検査機能の拡充や医療態勢の強化へ、実効性のある対策を確実に講じてもらいたい。新型ウイルスと戦うためには不可欠である。

 首相は、感染拡大に対処する立法措置を急ぐため、野党にも協力を要請する意向も示した。一定の地域に急激な感染拡大がみられた場合に「緊急事態宣言」を発して対応することが念頭にあるのだろう。与野党は協力して早期の成立を図ってもらいたい。

 新型ウイルスとの戦いは首相や政府任せではいけない。各自治体や企業、国民一人一人も力を尽くす必要がある。