朝日新聞社説
(社説)全国一斉休校 影響の軽減に全力注げ
2020年2月28日 5時00分
学校では、閉じた空間に多人数が密集して長時間を過ごし、食事も共にする。リスクが高い環境であり、子ども経由でお年寄りを含む家族に感染が広がることを心配する声もある。現に多くの感染者が見つかった北海道などは、やむを得ない措置として一斉休校を決め、きのうから順次始まっている。
とはいえ、首相の表明はあまりに唐突で、かえって混乱と不安を招きかねない。
現実的なリスクを、どんなデータに基づき、どう判断したのか。文部科学省は25日に、休校にする範囲や期間は、地域の事情に応じて自治体の判断に委ねる内容の通知を出したばかりだが、なぜ急転換したのか。
首相は、今回の措置に伴って浮上する諸課題には「政府が責任をもって対応する」と約束した。その考えに異論はないが、具体的にどんなことを想定し、いかなる手立てを用意しているのか、説明は一切なかった。国民が納得・安心できる対策をすみやかに示す必要がある。
全国の学校が1カ月にわたり閉鎖されるとなると、家庭や社会に及ぶ影響は計り知れない。
とりわけ低学年の子がいる共働き家庭には大きな負荷がかかる。子どもをひとりにしておくわけにはいかない。いままさに感染症と闘っている医療従事者の中にも、欠勤を余儀なくされる人が出るだろう。企業も多くの社員の不在に直面しそうだ。在宅・短時間勤務や時差通勤などを使って、業務への支障をどこまで抑えられるか。
より厳しい立場に立たされるのは、非正規雇用で働く一人親だ。解雇や収入減を恐れて途方にくれる人も多いに違いない。休校に伴う欠勤・早退などがあっても不利益な扱いをしないよう、行政は早急に事業所への周知を図り、指導しなくてはならない。長期の休業を国が事実上強いることになる以上、子育て中の低所得世帯への生活支援の拡充は必須ではないか。
おとといの政府の要請後、文化・スポーツのイベントも、中止や縮小、無観客試合への切り替えなどが進んでいる。有効なリスク低減策ではあるが、こうした催しなどの従事者にはアルバイトや非正規雇用の人が多く、ここでも経済的な苦境を訴える声が上がっている。
社会の安全を保つための措置によって、立場の弱い人ほど大きなしわ寄せを受ける。政府はその程度を少しでも抑える政策を早急に打ち出し、実行に移す責務がある。
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毎日新聞社説
首相の全国休校要請 混乱招かぬ対策が必要だ
毎日新聞2020年2月28日 東京朝刊
非常事態の対応とはいえ、国民生活への影響は免れない。混乱を招かぬ対策が必要だ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が来月2日から全国の全ての小中高校などについて臨時休校を要請する考えを示した。期間は春休みまでで、実質約1カ月に及ぶ。長期間にわたる極めて異例の措置だ。
子どもの健康、安全を第一に考え、感染リスクを低減することが目的だという。
すでに北海道や千葉、石川で臨時休校の措置がとられていた。このうち北海道では道内の全小中学校を1週間の休校にしている。
学校は集団生活の場である。一度感染が広がり出したら、歯止めがきかなくなる恐れがある。
これまで感染対策は後手に回ってきただけに、先手を打とうという意識が働いたのだろう。
ただし、首相の表明は唐突すぎる面があるのは否めない。大規模イベントの自粛要請と同様に、政府の基本方針に盛り込まれていない内容だからだ。この措置に伴うさまざまな課題に、政府は責任をもって対応すべきである。
首相の表明を受け、各自治体はさっそく、対応を迫られることになる。混乱を最小限に抑えるためにも、首相が早期に詳しい説明をする必要がある。
影響は学校だけにとどまらない。子どもや保護者に与える負担にも留意しなければならない。
共働きや一人親の家庭の場合、休校となれば子どもが一人で自宅に待機することになる。特に子どもが小さければ親は心配だ。子どもに合わせて仕事を休んだり、自宅で働いたりできるように、勤務先の企業などの協力が欠かせない。
特に非正規労働者の場合、家にいることで給与を得られなくなれば、生活に困る面も出てくる。こうした問題への対応も検討すべきだろう。
さらに、学習が遅れることへの手当てや、学校を円滑に再開するための配慮も忘れてはならない。
政府は当面、保育所については休園を要請しないという。ただ、今後、休園を検討せざるをえない事態が来る可能性は否定できない。早めに備える必要がある。
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読売新聞
全国臨時休校へ 混乱抑え感染防止に全力を
2020/02/28 05:00
新型肺炎の患者が児童生徒にも出始めている。感染拡大につながるリスクをできる限り低減する狙いなのだろう。安倍首相が、全国の小中高校や特別支援学校に対し、来月2日から春休みまで臨時休校とするよう要請する方針を明らかにした。
学校は大勢の子供が集まり、ひとたび生徒が発症すると、感染が一気に広がりやすい。家庭に戻って家族にうつす恐れもある。
新型肺炎では、感染経路のわからない患者集団が各地で見つかっている。ここ1~2週間は本格的な流行を抑止するための極めて重要な時期である。
全国一斉休校という異例の措置は、危機感の表れと言える。
北海道では27日から、小中学校の臨時休校が始まっていた。東京都は都立高校など約200校で、期末試験の終了後、前倒しで春休みに入ることを決めていた。
各自治体で独自に休校の動きが広がる中、政府として、統一的な考え方を示す必要に迫られた面もあったとみられる。
ただ、一斉休校に伴う様々な混乱も予想される。
3月に予定されている期末試験はどうするのか。試験を実施しないのなら、成績評価にも影響が出るのは避けられまい。
入学試験や卒業式も控えている。いずれも子供たちに重要な意味を持つ。実施する場合、会場の衛生管理を徹底するなど、感染防止に万全を期す必要がある。
休校中の子供たちが学習を続けられるよう、宿題を出して家庭学習を促すことも求められる。授業時間が不足するケースでは、学校が再開した後、適切な補習を実施してもらいたい。
一斉休校の措置を講じる際には保護者への配慮が欠かせない。
放課後に児童を預かる学童保育などの機能が低下すれば、日中も子供の世話をしなければならない保護者が増える。一人親や共働きの場合には、仕事を休まざるを得ないことになるだろう。
従業員が休みを取りやすい環境を、各企業が整えることが大切だ。テレワークなど在宅勤務も積極的に導入したい。
休業が長引いて収入が大きく減少するようだと、生活に困る人たちも出てくる。新型肺炎の影響で子供のために休んだ人に対して、政府は経済的な支援策を検討すべきではないか。
幼稚園や保育園の休園も予想される。幼い子供を持つ保護者にも十分な配慮が必要だ。