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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「いだてん」第1部完に際して(2)〜嘉納治五郎はこんなにすごい!伝説の組技指導者ジョン・ダナハーが語る(ゴング格闘技)

「いだてん」に関連して。
関東大震災が起きたとき、ドラマでは嘉納治五郎が、これまで心血を注いで完成を目指していた神宮の国立競技場周辺を開放し、バラックを立てて五千人を収容することを提案する名シーンがある。

このドラマでは、一貫してコメディ・リリーフ的な味わいも加味され、役所広司も意識してコミカルに演じた節もある嘉納治五郎だが、まぁ言うまでもなく近代日本の巨人のひとり。ドラマが始まる前の一般知名度も、登場人物の中では飛びぬけていたしね。


あまりに有名人なのでいじられたり、敢えて悪役にすれば面白いんじゃないかなと思ったり(それは俺だ。後述)ってこともあるのだけど、正面からこの人物を捉えれば、そりゃかなりすごい。「いだてん」では近代スポーツ全体の日本普及、日本スポーツの海外との交流を促した人物、の面がクローズアップされ、それももちろんもっともなのだが、本業はあくまでも格闘技、武道…柔道の父である。


このひとがどんな風にすごいかは、めでたく復刊なった「ゴング格闘技」最新刊の中で、ジョン・ダナハーが語っている。

ジョン・ダナハー(ヘンゾ・グレイシー門下生である)は説明がちょっと難しい。本人には目立った実績がないのだが、その「元コロンビア大哲学博士課程」の能力を生かして、グラップリングの概念を体系的に整理。その理論をもとにした指導でGSPやゲイリー・トノン、ゴードン・ライアンなどを育てた、そういうコーチとしての能力は世界的な人である。

その人が、インタビューで、嘉納治五郎についてこう述べた。

GONG(ゴング)格闘技 2019年7月号

GONG(ゴング)格闘技 2019年7月号

「私が常に聞かされていたクリシェ(使い古されてきた決まり文句)の一つは、グレイシー柔術はもともとマエダ(前田光世)によってブラジルにもたらされたものを、グレイシー一族が実験を重ねて発展させたというものだ。しかしいろいろ書物を紐解くと、それが実際に起きたことの極度の単純化であることは明らかだ。私が調べて分かったのは、ブラジリアン柔術の父はカノウと彼の柔道だということだ

――グレイシーではなく。

「私が思うに、カノウこそ近代においてもっとも卓越したマーシャルアーティストだ。その成し遂げたことを考え合わせると、彼がどれほど驚くべき人間だったかということに感嘆するのみだ。たった一人の男が、昔からある日本の柔術の諸流派―つまりコリュウだ―から柔道を創り、そこからさらにサンボやブラジリアン柔術が派生し拡げてたんだ。つまり、世界の着衣レスリングの三つの主要な形態は全て、ただ一人の男を源流とするんだよ。これはもう、インクレティブルな達成としかいいようがない」

――確かに。

「加えてカノウは、武道にオリンピック競技という栄誉を授けた唯一の人物だ。彼が柔道をオリンピック競技にするよう働きかけた。
第二次世界大戦の直前に亡くなることがなければ、それを自身の手で成し遂げたかもしれない。しかしそうはならなかった。彼の満願が実際に叶ったのは、あの悲惨な大戦を経た後の1964の東京オリンブピックだ。
とまれ、柔道、柔術、サンボを学ぶ我々すべては、カノウという近代におけるグレイテスト・マーシャルアーティストから、計り知れないほどの恩義を受けているよ。そして彼は、近代のマーシャルアーツトレーニングにおける、もっとも偉大な叡智をもたらした人物でもある」

――もっとも偉大な叡智?

「マーシャルアーツの価値を決めるのは個々の技術ではなく、トレーニングシステムだということだ。そして彼はそのトレーニングシステムを導入した。ランドリだ。そのことによって、コンバットスポーツ(格闘競技)と伝統的武道(トラッディショナルマーシャルアーツ)の違いが生み出されることとなった。文字通りの形で、だ。
そしてこのコンバットスポーツこそが、現代のマーシャルアーツにおける大いなる革新をもたらしたんだよ」

――確かに......。決められた動きの反復練習だけでなく、フリースパーリングを導入して競技化することによって、技術は飛躍的に発達しますよね。

「ここまで話した全てが、カノウの功績だ。我々すべて、グラップリングにおけるコンバット・アスリートのすべては、それは莫大な恩義を彼から受けているんだよ」


まったく、どれもこれも常識的な知見ではあるのだけど、あまりに常識になり過ぎて、忘れてしまいがちだ。最新のグラップリングMMAのシーンで活躍する指導者にそうあらためて言われると、まったくもってごもっとも、としか言いようがない。


ただ、ふと思ったのが、「嘉納治五郎の本当の功績は「ランドリ」…つまり乱取りだというのはどこかで聞いたな…なんだこのデジャヴ感…あ!!堀部正史だ!!」ということだった(笑)

いや、堀辺氏とダナハー氏を一緒にするのはあまりにもあまりだよね、ともなるだろうが、格闘技を見て分析するという点では堀辺氏も一流だった、ともいえるし、この部分はやっぱり基本のキだった、ともいえるだろう。

それ以外にもこのインタビューは、ダナハー氏が発明者だと今では認められている「ダース・チョーク(ノースサウスチョーク)」の開発秘話や、コロンビア大学哲学博士課程で、博士論文をほぼ完成させながら、最終的にその地位を捨ててしまった経緯、「すべての締め技にはその反対形態がある」「コントロールとサブミッションの区別」などの、何やら七面倒くさい気がする一方でいかにもインテリらしい構造的分析…それが世界最強軍団を実際に育てている…などが満載で、実に面白い。

一読をお薦めしたいゆえんである。
で、また毎回でいささかしゃくだが…はじめは聞き手を意識しないで読んで「実に面白いな、この聞き手は何者だい?」と確認すると、高島学氏と堀内勇氏(akaひねリン)の共同執筆だった(笑)

追記 そこで敢えて語る「講道館の影」とは…?

要は、講道館が他の柔術の上に立ったのは「政治力」であり、ガチンコで戦えば講道館を圧倒し得る柔術家もいた(その名も「田辺又右衛門」)のではないか?そして柔道のルール整備において「講道館に有利なルール設定」をしたおかげで足関節技などの技術が失われたのではないか?という話。

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