改めて童謡「うさぎとかめ」の歌詞を見直してみたら,わりと章構成のしっかりした学位論文(4章構成)にも見えてきたので,いま学位論文の追い込みに入っているという学部生や修士課程の人は参考にしてみてはいかがでしょうか。 pic.twitter.com/BE7CRz6gex
— すど (@ysmemoirs) 2017年1月17日
こういう、童謡などに隠された歌詞の解釈は多く目にしているが、中でも、その難解さ、暗喩の意味に今なお多くの人々が首をひねっているのは、「森のくまさん」であろう。
そういった歌詞の内容を解釈する記事も、ネット上には数多くある。
たとえばここは、1000を超えるブクマがついている。
……が、最近、それとは別の次元でこの「森のくまさん」は話題になった。
「森のくまさん」の作詞者とされる馬場祥弘氏に関する疑惑 - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1071944
作詞作曲不明の外国風の民謡を「みんなのうた」プロデューサー後藤田氏(故人)が発掘。
玉木宏樹氏(故人)が編曲。数年後
馬場祥弘氏が作詞作曲の権利を主張。その頃から要注意人物として有名だった。文化庁への直訴の結果、馬場祥弘の権利が認められる。
約十年後
「森のくまさん」はアメリカ民謡であることが分かり、馬場祥弘の作曲者としての権利は剥奪される。作詞者が馬場祥弘であることを否定する証拠はないため、作詞の権利は残る
この話はこの話としてたいへん面白いのだけど、私が考えるのは、あくまで歌詞にうたわれた情景である。
最近、上の話題となったパーマ大佐という方の解釈は、今知ったが
パーマ大佐の「森のくまさん」と歌詞
http://fannydailynews.com/pamataisa-song-morinokumasan-ukulele/2/
歌詞はあくまでも「アメリカ民謡だ」と主張しているところもあるな。
これはこれで非常に面白いが、自分の解釈は…と書こうとしたが、著作権の云々に巻き込まれるのはあれなので、以下は「森のくまさん」の歌詞とは何の関係もない、ひとつの雑談としておこう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
森で再会した、「くま」と「マドモアゼル(お嬢さん)」の物語|
【1】
漆黒の暗闇に包まれた、あの「森」。
そこが一転、にわかに照明弾によってほうぼうが照らされ、ヘリコプターの爆音が辺りの空気を切り裂く「女の行方は、依然としてつかめず!」
「全力を挙げ発見せよ!」無線から漏れる交信の内容も、双方の緊張感は並々ならぬものがあった。
女の行方を徹底的に追うことを命じた、基地指揮官も、無線を切ると部下に知られぬようにつぶやく。
「”マドモアゼル(お嬢さん)”が、潜入と工作の指揮を執っているとしたら…この方面は、いつ、どこで、どんな意外な攻撃がなされてもおかしくない……」
「ふん、他愛もない」
”マドモアゼル”は、尾根の上にひそかにのぼり、相手の捜索の様子を遠方から観察していた。
まんまと誘導にひっかかり、あさっての方向を必死に飛び回るヘリの姿を見て、潜入工作を完了した地域からの離脱は、ほぼ成功したと分かった。「あいつらも、この前まで我々の友軍だったと思うとな…教育がなっとらんよ」
タバコに火をつけたいところだが、光は避けねばならない。
やや疲労感を覚え、水筒の水を一口飲んだあと、そう、ひとりごちた。
「まったく同感だな」
茂みをかき分けて、そう返答するものがいた。「!!」
拳銃に反射的に手をかけつつ、振り返る。
しかし、大方の予想はついていた。その声と、自分を追跡して、ここに到着し得た、という事実によって
「”くま”、か……」
「ひさしぶりだな」
【2】
相変わらず、表面は丸まるとし、体中毛むくじゃらながら、その下には鍛え抜かれた筋肉を潜ませているくま。
くまは、単刀直入に”マドモアゼル”に伝えた。
「すぐに逃げるんだな。地獄小隊の戦友のよしみだ、今なら見逃してやる」
「なぜ、お前こそ、ここにいる?」
「独立国『森』のためにだ」
「無謀だな。『森』と『まち』は、統一された連邦にあってこそ、資本主義の豚どもの手から、真の独立をまっとうすることができるのだ。ひととくまが、民族の違いを超えて、手をたずさえて……」
「ひととくまが、これまで、平等だったことが一度でもあるか? 平等を唱えたクリストファー・ロビンの理想は、実質、人が熊を力でねじ伏せて従わせるという、東洋土着の『金太郎思想』の連中によって主導権を握られ、完全に骨抜きになった。わずかばかりの配給のみつを与えられ、ウサギらとともに、秘密警察のフクロウによって常時監視される社会……不満分子としてあいつらに迫害された、ロバの末路はどうなった?」
「しかし、『くまの皆さんに、新しい赤い服を着せてあげます。はちみつも、もっともっと食べさせてあげます」「森は生きている」そう、まさに蜜のように甘い言葉で誘惑したディズニーとかいうアメリカの大資本……あいつらこそ、正体はネズミのような悪党どもの集団だぞ。お前らは資本主義のプロパガンダに利用されるだけだ」「……」くまのプーさん/完全保存版 スペシャル・エディション [Blu-ray]
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「そして、わが党が、本当に『森』の独立を認めると思うのか?はっきり言おう、『猟師』部隊が動く寸前だ。まだ我々の力で制圧できるうちなら、ことは穏便に収まる。猟師部隊は、お前らの腹を切り裂き、石を詰め込むだろう。さらにいえば、対くまとして『シルバーファング(銀牙)』部隊も、出動に向けて準備している。あいつらは、党の方針に完全に忠実な…いわば、喋る犬の群れだぞ!」
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「・・・・・・・・それでも、俺たちは戦う。くま牧場で生きながらえる老いたくまになるより、独立国『森』の旗に殉じる、羆嵐になる。そう決めたのだ」
「・・・・・」
「もう、あとはお互いに平行線だろう。早く去れ、さすがにうちの軍のボンクラたちも、こちらのほうに捜索の手を向けるだろう。…これ以降は俺がやつらを教育する、少しは手ごわくなるだろうよ」
「そうか。…連中を、戦場を生き延びられる程度には賢くしてやれ」”マドモアゼル”は、少し変わった『地獄小隊』特有の敬礼をして、森の闇…まちとの”国境”線の方向に消えた
【3】
時間にして、30分…いや、1時間は経ったろうか。
”くま”は、本当に自分たちの独立森軍には、何も知らせなかったのだろう。それが利敵行為であっても。
錬度の低い、独立森軍の、素人同然の兵たちでは、地の利がいかにあるとはいえ、プロの”マドモアゼル”を補足することはできない……だが。
ふたたび、がさり、と目の前の藪が動く。
今度、現れた姿も、再び予想通りだった。
「くま、さきほどお別れしたばかりだったはずだがな。復縁を迫るストーカーを気取るキャラでもあるまい」
「ふざけるな! なんだこれは!」
くまは、足元にそれを、投げつけた。
白い貝殻の、小さなイヤリング・・・・・またの名を『全罪許可証』『悪魔のパスポート』…。
【4】
「むかしの、よしみだ…。これだけはとっておけ」
「これを俺に、隠し持っていろというのか? 確かにな……、これは『党の書記長様の、直属命令を受けて潜入工作をしていた』という証だ。俺たちは、この戦争に負けるだろう、そして、これをその時に軍法会議にでも差し出せば、俺は秘密工作のために敢えて森軍に潜入していたことになる。そしてお命が助かる、というわけかね」「地獄小隊の昔馴染みも、もう少なくなった…くま、お前の三兄弟のなかで、お前の兄も、弟もすでに戦死した。…おまえらのおかゆは、うまかった。お前が死んだら、あのおかゆは、誰が作るんだ」
「亡くなった兄も、弟も、それを望むと思うか?・・・・・それに、おかゆの味は、あれだけ盗み食いしたお前なら覚えているだろう。この戦争が終わったら、おかゆ屋でも開いて、あのレシピを伝えてくれ」
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”マドモアゼル”の目には、涙があふれていた。
この戦争が終わり、「森」が独立しようが、もとの連邦が維持されるかはさておき、もう、二度と生きては会いまみえることはないであろう。「そうか、ではこれは『落としもの』だったのだ。それをお前は拾って、届けてくれた。そうだな?」
「・・・」
「そのお礼をしたい。何か、望むものはないか?」
「・・・・・・・・・」
沈黙のあと、くまは口を開いた。
「では、お前、地獄小隊のあの歌を歌ってくれ。”鬼の歌姫”とうちで呼ばれていた、あの美声の歌をな。結局、この追跡戦についていけたのは俺たち二人だけだった。追っ手に聞こえることもなさそうだ」
「”鬼の”は余計だ」
その要望は、マドモアゼルの望んでいた答えだったかどうかはわからないが、彼女は笑顔を取り戻し、くまのせりふにクレームを付けた後、歌い始めた。♪
汝が上に軍旗はためく
党は防衛線を敷いた
不動の壁 鋼鉄の扉
人民、労働者の聖戦が始まる・・・・・・
聴衆ひとり、歌い手一人の、この当時、一瞬だけひかれていた”国境線”沿いでのコンサートは、こうして始まり、終わった。
あの「泥と血の饗宴」と呼ばれた内戦(連邦は「対テロ行動」と今も呼称している)の、前夜の物語である・・・・・・・・・
(了)
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※作中で「お嬢さん」が歌う歌は、辻田真佐憲氏「世界軍歌全集」の中から各種の歌を借用、一部改変したものである。
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- 作者: 辻田真佐憲
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