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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

これも「異世界召喚SF」的に考えると…?「俺が戦火を逃れた先の異世界は、性表現がめちゃくちゃオープンだった件」。当事者にとってはなァ。

(2回目)
しかしまあ、最近は、誰かが異文化に接する古いノンフィクションを発掘して「これも異世界ものだねえ」とやるのが流行り(私もそのひとり)だけど、もともとSFが、そういう旅行記、航海記のロマンをもとに発展したものだから、「マッドマックスって北斗の拳に似てるねえ」みたいな言いぐさではあるんだけどね(笑)


そして、問題は当事者的には深刻であり、
笑い話ではありえないのも承知の上で、
あえて「異世界SF」メガネをかけてみてごらん、と。



難民はとにかく政治的自由や生命をつなぐために必死で逃げるものだろうけど、未成年の少年や少女は、政治や経済の問題をそれほど深刻に受け止めるわけではなく、彼らには彼らにとってもっと重要な人間関係や、課題や悩みがある。それは「アンネの日記」を読んでもわかるだろう。そして、それは敢て言えばいいことだと思う。政治難民という立場であっても、少年少女は、そういう「青春」が一番の課題であってほしいし、そういう環境を持たせることができる受け入れ社会は称賛に値する。


そんな中で……政治のことはよくわからないが、とにかく危険だということで欧州、例えばドイツという、想像もしなかった”異世界”にやってきた、イスラム・中東圏の思春期の少年少女がいたとする。
その少年少女がいちばんその「異世界」で衝撃を受けるのが、「こ、この国、なんでこんなに性表現がオープンなんだ…」「ちょっとネットで検索すれば、そういう写真も動画も漫画も見放題だぞ、おい!!」
というものである、かもしれない………というのは、多少、想像というか共感する余地がある(笑)


まあ、「慣れてください」というしかない。


でも結構、その種の情報に関してお堅い文化圏から、やわらかというか緩やかな文化圏に留学なり出稼ぎなりをした人が、定住したり滞在を延長したりするときに、それがモチベーションのひとつになることは以前からあったみたいですね。
バングラデシュで玉の輿」にもそんな話が出てきたような。

こういうのを「異世界メガネ」で見たSF、ほんとにあるよ!!藤子・F・不二雄「気楽に殺ろうよ」

 

ここではパラレルワールドという小道具(ドラえもんだったら「もしもボックス」を使うところ)を応用して「性表現が完全オープン」…今の言葉で言えば(元ネタ読まないで例示してすまんが)「下ネタという概念が存在しない世界」を描いているのだけど、さらに一ひねりして「性欲がオープンなのと入れ代わりに、食欲がタブー。人目に触れるとすごく恥ずかしい」という強烈なワン・アイデアを提示しているわけ。
これって法哲学的にもすごく根源的な問題で、たとえば表現の自由は世界的な正義だけど、「性や性表現は大っぴらにするものではない」というのは、これまた程度の差はあれそのタブーが完全にない人間社会もないし、それを規制するのは表現の自由の例外となる。
このへんはどう理論建てしているのか、専門家の界隈の議論はよく知らず。

作中では、今の社会の価値観(性は恥ずかしいが、食はオープン)を持って”異世界”にやってきた主人公は、精神科医の治療を受けるのだが、精神科医はいちど相手の立場に立つために、「私たちは火星人になって、今の常識のように見えるものを、ゼロから見て報告してみましょう!!」と提案する。
こういう治療法があるかはしらないけど、
少なくともSFの第一歩はこれだよね。

そして、異文化体験のルポや旅行記をSFで読むのも、こういうセンス・オブ・ワンダーの系譜にある。
そういえば福島正実だったか、石川喬司だったか、彼のまとめたSF紹介の本でも「性意識が現在と異なる社会を考察してみたSF」で一章を割いていて、そういうテーマもたくさんあるみたいね。



藤子・F・不二雄先生に話を戻すと、
「宇宙人の目で、人間で行われている常識的な営みをイチから報告する」というネタで、なんと「ロミオとジュリエットを、宇宙人が観察していたら?」という作品を、作画者は少女漫画家(小森麻美)で、原作に回って描いている。
 

上の「異色短編集」文庫の2は、この2作が収録されていてお得だ。


そして「征地球論」という作品もある。

なぜかこういうまとめで取りあげている。

さすが藤子不二雄 - 2chコピペ保存道場 http://2chcopipe.com/archives/51975552.html