今更の話なのだが、藤子・F・不二雄「キテレツ大百科」、ゆとりとにわかはフジテレビのアニメで見ただろう。しかし原作厨の僕はフジテレビのあの軽薄な感が許せず(OPで分かるだろう)、ほぼ一本もまともにみてないはずだ。
そのかわり全3巻のてんとう虫コミックスは兄弟とともに繰り返し繰り返し読み、ほぼ血肉と化しているナリ。その後、中公文庫でも全2巻の文庫となった。
さて、そんな折に、藤子・F・不二雄大全集版の「キテレツ大百科」の中身を、ちょっとのぞく機会があった。懐かしさの体験と、解説が気になってね。
しかし……
さきほど言ったように、てんとうむしコミックスを血とし肉とした、自分がどう考えても知らない作品がある!!!
藤子・F・不二雄大全集版「キテレツ大百科」には、かつてのコミックスには収録されていない未収録作品が載っているのだ!!!
こういうことは、ここに聞くのが手っ取り早い…いや、コメント欄とかで質問する前に、既に大全集が出た2009年にこの話を書いていたよ!!!さすが
「藤子不二雄ファンはここにいる」ブログより
2009-08-25 藤子・F・不二雄大全集第2回配本
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20090825F全集『キテレツ大百科』第1巻は、『キテレツ大百科』自体に単行本未収録話がないため「単行本初収録」という売りはありませんが、既存の『キテレツ大百科』の単行本で最も多く売れたであろう「てんとう虫コミックス」全3巻(小学館)では読めない話が、F全集第1巻に4話収録されているので、サブタイトルだけ紹介しておきます。
「聞き耳ずきん」
「公園の恐竜」
「冥府刀」
「一寸ガードマン」
の4話です。
あっ、「てんとう虫コミックス」以外にも単行本があったの?
でも、それじゃたしかに自分にとっては、あるいは多くの人にとっては初見の作品だ。
やっぱり「未収録作」と言っていいはずなので、
奥ゆかしくやらずに
もっと宣伝するべきだったね、そのことを。
で、うち一本「冥府刀」が怖いんだよ!!!
「なぜ、キテレツ斎さまがわざわざ墨を塗って消した発明品を作るナリか?」
もう、このオープニングから悪い予感しかしない…
ご先祖様の「封印作品」をあえて完成させようとするキテレツのマッドっぷりが炸裂だ。
しかし「この発明は、キテレツ斎さまが墨で塗りつぶしていたが、大百科には墨の消し方も載っていた」って、単純に話を進めるための展開だったんだろうけど、よく考えるとなんとも皮肉というか、核やビッグデータのようなものを規制しようとしてし切れない、「科学の封印の限界」…その無意味さや無効さを風刺しているような気がする。
そして、
『昔の人がいう「あの世」っていうのは、異世界、異次元のことなんだ』
『この発明「冥府刀」は、次元の境い目に切り込みを入れて、その異次元への道をつくるんだ』
と、自信満々に語るキテレツ。
しかしその時期、その地区でまさにキテツの家から帰宅中のみよちゃんが、一緒の同行人もいる中で、急に行方不明になる事件が発生し……
そして地域の住民には信用されないが、キテレツ(というかF先生)が独自に集めていた「実話記録」を紹介したり、なんとなく分かったというか、「そういうこともありそうだ」と思わせるようなアナロジーを説明する。
F先生、はっきり言ってこういうの個人的にも好きだったそうです。
信じる信じないは別として、ムーの熱心な読者になるタイプ。
そしてキテレツは、好奇心ではなく彼女を救出するためのアイテムとして冥府刀を使い、勇敢にもその「異世界」、に飛び込んでいくが、
そこで出会うのは!!
なんだこの、シンプルなのに不気味なクリーチャーデザインは……!!!
藤子・F・不二雄先生が、作品を単行本未収録にする基準って、けっこう厳しいんです。
「つまらないから収録しなかった」とか平然と言っちゃうし、読んでみるとどこがつまらないのかさっぱり分からないこと多し。
あと、まだ時代が時代だったんで、単行本にはもらさず載せたいとか、文化的価値ある遺産を継承する、という感覚はあまり無い。
「この作品は全25本あるけど、1巻当たり12本しか載らない?ああ、じゃあ一本落としとくね」とか平気でやれちゃう世代に属している。
冥府刀はすごくぞくぞくする傑作だったが、、ふつうの『キテレツ』と「テイストは違う」。
そのへんだったりするんだろうか…。
ただ、藤子・F・不二雄作品で怖い話というとドラえもんの中からいろいろ(バイバイン、悪魔のパスポート…など)選ぶことも出来るし、短編でいえば「箱舟はいっぱい」「ある日…」「大予言」「タイムマシンは絶対に」「コロリころげた木の根っこ」など、全部恐怖アンソロジーに収録できる出来栄えのものが多い。
だが、このキテレツ大百科てんとう虫コミックス未収録作品「冥府刀」、これもそれに比すべき、藤子・F・不二雄版ホラーだ。
夏に怪談を一本紹介するのも紳士のたしなみ。
あれ?どっちだっけ??
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あ、一巻のほうです、一巻。
http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/1st_lineup/kiteretu01.html
http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/1st_lineup/kiteretu02.html