INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

タックスヘイブンと節税と、「道義」の話

タックスヘイブンパナマ文書の問題で、アメリカのオバマ大統領が面白い言い回しをしていましたな。

http://www.asahi.com/articles/ASJ4620NFJ46UHBI00D.html
http://stalemate.hateblo.jp/entry/2016/04/11/083519
「多くの取引が合法で、それがまさに問題だ」

そうすると、「道義」の問題となる。
そうすると、あれやこれやと面白い話を、ここから発展させることができる…

日本国内で、タレントや漫画家が「会社」をつくっての節税は、道義的には?

今回の問題でたまたま検索して見つけた話

・ 7000万円資産隠しでバレた 筑紫哲也の蓄財
http://www.souzokusoudan-navi.com/news/000633.html
 
報道によると、08年11月に亡くなったジャーナリスト・筑紫哲也さん(享年73)の妻ら遺族が、東京国税局の税務調査を受け、申告漏れを指摘されて大騒ぎになっている。
 問題になったのは、朝日新聞の特派員として米国駐在時に購入したマンションの売却代金4000万円。カネは海外口座に残っていたが、遺族は申告しておらず、意図的な所得隠しと判断された
 申告漏れは他にもあり、総額7000万円というから結構な金額だ。
「筑紫さんの遺産総額は明らかになっていませんが、5億円は下らないはず」と…
(略)
長者番付が最後に発表された04年度の筑紫の所得は9300万円(推定)だ。NEWS23のギャラから考えればつじつまが合わないが、「妻の房子さんが代表の個人事務所にギャラは支払われていた。節税に励んでいたのでしょう」(マスコミ関係者)。


自分は筑紫哲也氏の言論や著作にはあまり感銘を受けず、このブログでもいろいろ批評してきたが、それとは別に、今回はたまたま見つけた一事例というだけで、ほかの人も申告漏れはともかく「奥さんが代表の個人事務所にギャラを支払ってもらう」というスキーム自体は筑紫氏に限らず広く行われている、ということは強調しておきたい。


それをたとえば、筑紫氏と正反対に近いスタンスだった山本夏彦氏は、筑紫氏をある意味で弁護するかのように、ずっと「個人から法人の世の中になった」という嘆きや諦念を語ってきていた。

芸人や文士は、最後の個人である。かせげばかせぐほどまきあげられる。彼らは特殊な、個人的な才能で、国は何一つ手助けしない。しようにも出来ない。
それなのに七割を奪って、三割を投げ与える。だから〇〇芸能プロと称する法人を作り、そのプロから給与を貰ったことにすれば、タレントは法人になり得る。言うまでもなくそれはトンネル法人、ニセ法人で、彼は彼個人をごまかして、税の大半をまぬかれるのである。税はまぬかれても、心身の頽廃をまぬかれることはできない。自分の金を自分で盗むとは、神武以来の椿事である。頽廃の極である。
…中略…
こんなにウソで固めた時代は、有史以来なかったのではあるまいか。ここまで固めてはいけないのではないか。それもこれも、わが税制のゆえである。これを改めない限り、区々たるモラルを論じてもはじまらない。ろんじてもむなしい。モラルは税制の結果だとは、すでに言った。個人が法人に変装したのは、国が強いたからである。私は我が身をかえりみて、わが半身が法人と化しつつあることを認めないわけにはいかない。もとの個人にしてかえせ、と言いたい。(茶の間の正義・株式会社亡国論)

茶の間の正義 (中公文庫)

茶の間の正義 (中公文庫)

私がここで言いたいのは、わが税制は税をとりたいばかりに、何百年何千年来の
モラルを破壊したということです。たとえば、借りたものを返さないかぎり利益は
生じない、倹約は徳だというがごときモラルをこわしました。(つかぬことを言う)

つかぬことを言う (中公文庫)

つかぬことを言う (中公文庫)

個人への最高税率はたしか今はだいぶ下がっているけれども、この時代の最高税率の被害者??は、司馬遼太郎松本清張といったところで、けっこうエッセイで呪詛を並べている(笑)。ちなみに「長者番付」が公開されていた時代は、見栄を張りたいがゆえに税金を意図的に多く支払った例もある、アントニオ猪木とか(笑)。
その人が後日、税金滞納の常習犯になるとは…夢にも思わなかったのです………。


しかし。今回のタックスヘイブン
「多くの取引が合法で、それがまさに問題だ」
という道義的問題を視野に入れるなら、この「どう見ても、性質的にはその人個人に支払われたお金であるのに、それを家族経営の『事務所』の収入にして、節税を行うってどうよ???」という話も”道義的”な断罪をし得るのではないか。
てゆーか、断罪しろ。それはタックスヘイブンと同じで、こういう高額所得者の「事務所」収入問題もパナマも、庶民たるわれわれの大多数には無縁であり、タックスヘイブンへの資金移動のアレコレが規制されて税収が増えるのも、ニュースキャスターや作家、タレントの「事務所」の収入や経費のアレコレが規制されて税収が増えるのもまことに結構なことでげすから。
われわれは99%だ。

ただまあ、たしかに80年代ごろ、人気漫画家や作家の収入の7割とかが税金だった、という恨み言を本人の筆で読むと、一瞬は同情しちゃったけど…こういうのはよくない。我々と彼らは、利害が対立しているのだ。われわれは99%だ。
だから、今後、漫画家や作家やタレントが個人でなく事務所に収入をアレしたりアレしたりしているのを「合法かどうかはともかく、道義的に問題はないんですか!!」「国の税金を免れて、はずかしくありませんか!?」と追及する”空気”を作るのもおもしろいかもしれない。
ただ、漫画家の場合「何をいう。うちのプロダクションには実体がちゃんとある!この会社で漫画かいてるんだから!!というか僕個人はいま漫画かいてないから!!」と反論できたりするかもしれぬ・・・・・・。


堂々と「国への税金は一円でも減らしたい。私は税金を呪う」という人がいるかもしれない…というかアメリカの…

アメリカにおける「反税金」の思想潮流はすさまじいものがある。思想というよりは感情というか…

パナマ文書」問題がアメリカでは大騒ぎにならない理由|冷泉彰彦ニューズウィーク日本版 http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2016/04/post-824.php
 
 
そもそも「租税回避地を使う」ことも含めて、合法的な節税を行うことには、まったく罪悪感がないというカルチャーがあると思います。建国の理由が英国王の徴税権からの離脱が目的だったこともありますし、そもそも節税や脱税に関する倫理的な非難が「されない」風土があるのです。

 80〜90年代にレオナ・ヘルムズリーという女性が、ニューヨークのホテル王として一世を風靡しました。同時に彼女は「税金を払うのが嫌い」だと放言して脱税を繰り返し、逮捕されたり収監されたりという「お騒がせ」の存在でした。ですが、彼女が「脱税女王」として有名になっても、彼女の名前を冠した「ヘルムズリー・ホテルズ」のブランドは、彼女の存命中は衰えることはなかったように思います。
(略)
ドナルド・トランプですが、彼は大統領候補でありながら、確定申告書の公開を拒んでいて、その理由が「確定申告書がいつまでも確定しないから」と言っています。どういうことかと言うと、14年連続で税務調査の対象となり、要するに申告しても税務署が信じないので必ず税務調査がされて、最後は彼の得意な「ディール」で済ませるまで何年もかかる

もちろん全面的なものではなく、そもそもトランプを含めた大統領候補には「自発的に確定申告書を公開すべきじゃないか?」という問いや要求が平然となされる風土でもある。2012年大統領選挙も、共和党ロムニーは大富豪で、この「確定申告を公開せよ」とか「預貯金を公開せよ」という議論はあったですね。


にしても、やはりここには「税金は悪」「政府は悪」「権力は悪」「お上には頼らない。その代り干渉も許さない」という意識が、左派だけでななく右派(リバタリアン)からも猛烈に出るというアメリカの強烈さが出ていたのだと思う。「マネはしたくないが、思想的には非常に教訓となる」と、当方は以前からよく言っている。

西原理恵子伝説の「脱税できるかな」

しかし日本でも、ごく少数ながら、まったく同じメンタリティを表明したすぐれた創作者がいる。

そう、西原理恵子こそ和製レオナ・ヘルムズリー。
だって脱税していた側(認めてる)が、税務署からそれを咎められたら税務署を「あたしの金を盗む泥棒」呼ばわりなんだから(爆笑)
毎日かあさんを連載している毎日新聞でも、こう公言していた。


実際、タックスヘイブンの租税回避を問題視すると、結局「自分の(暮らす)国家に税金を納めないのはけしからん」という話になってくる。それは昨日だったか、テレビ朝日スーパーモーニングにおいて、玉川徹氏もそういっていた。「その国の社会的インフラを活用して、その国の消費者にものを売って、そこで儲けたお金をその国に税金として納めないのは、”社会的に”どうなんだ(大意)」という内容をね。


だから、逆に言うとアイスランドの首相のように「国家の指導者、政府側<なのに>税金を祖国に納めない」人間だからこそ批判の対象にようやくし得る…のかもしれない。

http://anond.hatelabo.jp/20160409130407
ICIJは、タックスヘイブンを利用すること自体はあまり批判していません。合法だからです。しかし、税金を徴収し利用する側の政治家や公的性格を持つ人々が行っている租税回避行為は、道義的責任があるとして家族も含めて容赦なく批判して晒しています。


逆に西原やレオナのように、国家への不信感を持ち、それを公言する人間が『税金を一円でも少なくしたい、そのためにはタックスヘイブンでも何でも使ってやるぜ!』と公言したり、実践したりする場合は……道義的にはどうなんだろう。

(SF)「私はXX国(政権)の政策を批判している。だから税金を払いたくないのだ!!」なら納得できる?

自分の「SF」はシミュレーション・フィクションでもあるのだ。

税金は所得の再配分でもあるが、とにかく国家の国策遂行のために使われる。だから、国の政策に反対している人は、選挙で清き一票を投じたり、デモや署名をするのかもしれない。そして、それでもなお意に沿わない政治家が政権の座につき、嫌な政策を実行するなら……その国には税金を払わないようパナマなりなんなりを使って工夫する、というのもレジスタンスじゃないかしら? ないですか。

いや、でもそういう人いるで?

良心的軍事費拒否のすすめ
http://blog.goo.ne.jp/comit2008/e/5c6a1b502ddf19ed1c399c700039ff7f
軍隊のための 税金を わたしたちは もう払わない。 払うのは やめよう!!

ご存知ですか?
私たちが知らず知らずのうちに憲法違反の自衛隊という軍隊の分ために税金を払い、しかも世界有数の、“軍隊”に育てあげていることを、あなたはご存知でしょうか。その額は私たちの税金のうち、毎年6%ほど。自衛隊憲法違反であることを考えてみれば、この分は全く支払う義務のないものです。人間のいのちは、ほかの何ものにもかえられません。
また軍隊が「国家」「防衛」の名による大量殺人である戦争をする組織であり、そのために、私たちの税金が使われることは、良心的にも許しがたいことです。

(略)
、軍事費にあたる分の支払は拒否することによってそのことを主張しようというのが、「良心的軍事費不払い」です。

あなたにできることは・・・
毎年2月16日から3月15日までが所得税の確定申告の期間です。軍事費拒否はこの機会を利用し、軍事費分の税金不払い、還付請求します。
そのやり方は:
①自分の税額から軍事費分を差し引いて税金を払う(支払い留保) ②サラリーマンなら源泉徴収されている税金から軍事費にあたる分を戻せと請求(還付請求)する など。

ここに(3)タックスヘイブンを活用する、を加えて何のさしつかえがあろうか(笑)



さらに、たとえば税金を租税回避しまくる一方、その儲けたお金をチャリティに使うような富豪も確かにいたりする。
そりゃそうで、「どうせ貧しい人を救うなら、自分がコントロールの効くような形で使うよ。なんでいったんあの無能な政府に金を渡して、そいつらが賢明に使うことを期待するんだ??」「俺は名誉がほしいんだ。同じ金なら税金を払っても尊敬されない。税金を工夫して減らして、それでチャリティをやれば尊敬されるんだから…」


ありそうな、ありそうな話です。
かくして、タックスヘイブンの話は、「国家を信用するか」という話でもあり得るのでした。もちろん、「国家は信用ならないけれども『大富豪ども』はもっと信用ならない。国家という凶暴な怪獣をけしかけて、大富豪どもという、もう一匹の怪獣を退治するしかない」という構図でもあったりする。


あるいは、タックスヘイブン規制は、そんなのを使うこともない側が、堂々と「自身の階級的エゴ」として「タックスヘイブンが道義に沿っているか外れているかはどうでもいい。いま使ってる連中から国が税金を取れるなら『ヘイブンを使わない俺たちの得』。だからヘイブンを規制しろって言ってるんだ、文句あるか」と主張してもいいと思う。使わない側として。