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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

パナマ文書、凄いのは内容より「法律・道義の問題は分からんがまず公開する。問題の有無はそこから調べよう」という方法。大胆だな!

こち亀」の中でも有数の傑作「vs税務署」編より
内容はこのツイートに解説してもらう


「みんながお金を出しあい協力することで村に橋や道路ができる これが税金の法則です」
「ひとりでも非協力者がいると橋ができません ひとりでも です!!」


「ひとりぐらいいたってわかるもんか!」


実に堂々としたやり取りである。税金を取る方もあっぱれだが(何しろあの両さんが圧倒されている)、圧倒されながらも両さんが、きわめて素朴な「反税金」=反体制、反権力のロジックの旗を掲げ「わしにことわりなくとるとはドロボウだ!かならず奪い返してやるからな!」「かえせよわしの税金 ことしの分も前の年も、前の前の分も…」とゴネまくるのもあっぱれ。サイバラもリアル世界でやるところはすごいが(笑)、漫画の一キャラクターとしてはこの後追いにすぎぬ。



ま、パナマ文書に関してはここで書いた以上のことはない。

タックスヘイブンと節税と、「道義」の話 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160413/p2


ただ今回、実際にパナマ文書の公開サイトを見て(登録してもらった人から見せてもらって)、びっくりしたのは、やはり普通に…たとえば住所的には同じ市内とかにいるわけね。グーグルストリートビューで組みあわせてみると、「あれ?こんな家で??」と思ったり、「いやいや案外こういうつつましいところこそ…」とか考えたりね。
あるいは全然耳慣れない姓名の人が出てきて、番地はでたらめだったり……


で、断り書きにもおおむねこういう趣旨のことは書いてあるのよ。
「ここに名前があったからといって、特に非合法なことや、道義的に問題があるとは限りません。そこは承知してくださいね」みたいな。
(記憶による。ちょと違っていたら失礼)


まあ、趣旨は非常にわかるけど、ただその手法自体がすげーーなーー!!と思ったのですよ。


たとえば…うーんたとえば、の喩えがむつかしいな…

たとえば、とある自治体で生活保護の不正受給が蔓延していた、とする。

わが「週刊文夏」は、ポコペン市の生活保護対象者一覧を入手した。そのうちの誰が不正受給で、だれが正当な受給者かはわからない。ただ、不正が蔓延していることだけは確認されている。とりあえず一覧をネットで公開状態にし、検索を可能にした。あとは市民の皆さんがそれぞれに知識や情報をもちより、調査してほしい。

みたいな?
でも、生活保護の受給者…じゃセンシティブすぎるか。

わが「週刊志ん生」では、やくざのフロント企業であることが判明したイベント「FUJIN」の、取引先一覧を入手した。そのうちだれが同じく裏社会の人間、あるいはFUJINが裏社会のイベントだと知っていて取引したのか、あるいはそれを知らない純粋なファンや商取引の相手だったのかはわからない。ただ、裏社会の仲間が多数いることだけは確認されている。とりあえず一覧を(以下、上と同じ)

こっちなら、パナマ文書により近いだろうか。


にしても、大胆だな…入手するだけの情報源の掴み方や、ここまでこぎつける努力も立派だが、今回一番に驚いたのは、上のような手法を取る、取っていいと考える、一種の「技法的な飛躍(決断)」でした。



かつて経産省の官僚だった人(現在は衆院議員)の、この談話を思い出します。
これがアマゾンやアップル、グーグルを生んだ一つの原動力であったことは認めざるを得まい。
今回のパナマペーパー公開も、似たようなところがあるのではないでしょうか。


http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100227/p4

わたし前の仕事(経産省)をやっていたときに、アメリカの行政官と話して「こんなに意識が違うのか!」とひっくり返ったことがあるんですよ。それは何かというと、アメリカみたいなとこで情報のね、新しい技術、情報の新しいビジネスがどんどん出てくる。
こういう問題が起こったらどうするんだ、こんな問題はどうするんだとわたしが聞いたんですよ。そしたらアメリカの行政官は


「それは訴訟になるから。裁判所が結論を出すからそれでいいんだ」って。


日本の場合は何か問題が起こっちゃったらいけないから、行政はああしなくちゃいけないこうしなくちゃいけないって考えちゃうんですよ。ところがアメリカの行政官はあっけらかんとして「あ、それは裁判所が結論を出すから」って。それで終わり。
つまり技術革新みたいにものすごくスピードが早いものを、行政官の知識でなんか事前に規制しようっていうのはもともと無理な話で。アメリカのようなやつは、自由にやらせて、何か問題がおきたら裁判所が結論を出すから自由にやれって、そういう文化風土があるんですよ。