2016年X月X日――――。
こんな「結党宣言」が各種のメディアに送られてきた…。
日本国民、市民のみなさん!
わたくしたちは、この国の現状を憂いて立ち上がった者です。日本は、いま、危機的状況にあります。
ほんの一時期を除いて、長年権力の座にあった支配的与党の自民党は、公明党と組んで政権の座にある中で驕りと怠慢を隠さないようになり、
その一方で、いっとき政権交代を成し遂げた勢力は今、「民進党」を名前を変えて数合わせの再編成をしたものの、なんの明確な理念も示さず迷走を続けています。
私たちは、この状況を見かねて、自らの手で政治を市民、国民の手に取り戻すしかないと思いました。
その中心となる我々は、現在の民進党、いっとき政権交代を行ったときは民主党と名乗った政党にいました。あの時の、日本に二大政党を作るという理想、友愛の思想はいまだ滅びていないと思います。
そこで私たちは、その原点に立ち返ることを考え、あえて「民主党」と再度名乗ることを決め、ここに結党を宣言しました。
来る参院選挙には候補を立てて、私たちの主張を世に問いたいと思います。どうか、よろしくお願いします。
2016年X月X日 代表 ぽこ山ぺん太郎
その日の夜。
「こんな感じでどうでしょうか?」
「はい、ごくろうさん。これが約束の報酬だ。官房機密費の、かなりの割合を奮発したよ」
「たしか、ここから候補者の供託金と、事務所の費用…そういうものを賄うんでしたよね。さて、これからどうすればいいのでしょう?」
「何もしないで、目立たないでいてくれ。あっちは慌てて『今までの民主党は、民進党になったんです!今の民主は、今までの民主党ではありません!』と必死で宣伝するだろうけど、山田太郎と山本太郎と山本一郎の差も、河野太郎と河野洋平のちがいもわからない有権者なんてたくさんいるんだ。ずーっとおとなしくしてて…、そうだな、参院選になったら電話での投票呼びかけと、字だけ書いてあるポスターでも大量に張ってくれ。要は、『誤解』が広まってくれればいいんだ…」
男は、やや薄くなった髪を撫でつけながら、そう事務的に命じた。
「長官、とんでもない悪党ですね…」元民主党、であることは事実ながら、いまや完全に操り人形と化したぽこ山ぺん太郎は、感に堪えないといった感じでつぶやいた。
「ご指摘は、当たらない」。
言われた男は、表情を変えずに、そう返答した。
(完)
あとがき
このSF小説(サイエンスではないな。シミュレーション・フィクション、略してSFだ。あるいは『すこし・ふざけてる』かもしれない。)は、既に発表したこの論文が元だと言っていい。
(妄想)特定の党や勢力を強烈にイメージさせる名前で、別政党や政治団体作ったら有効な嫌がらせにならないかな? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160127/p1
この論文では「オール沖縄」「オリーブの木」「美しい国」など、既存の政党名ではないけど、特定の政党や勢力をイメージさせる名称を固有名詞として名乗った団体が選挙に出て、混乱させる―というシナリオだったが、今回は議会における圧倒的第二党、それも数年前までは単独与党だった大勢力が、その浸透や宣伝にだいぶお金も時間も手間もかけただろう名称を「捨てて」しまうという驚きの展開が現実に起きてしまった。
この名前を『拾う』やつがいたらどうなるんだろう??
という話であります。
もちろん、これはただの想像の産物であり、自分は選挙関連の法律や、商標権のあれこれも調べていない。
だから「さすがに上のような事態をふせぐための手筈は整っているよな?」という、漠然とした期待感はある・・・・・・。さすがにそうだよなあ、こんな手法がまかり通ったら、それはまずいって。
防ぐような法的な整備………されてるよね?
そういう指摘を受けて、安心したいがゆえに、あえて極論の「SF小説」を書いた次第だ。
「バカも情報弱者もおっちょこちょいも、勢力を問わず一定数いるんだ」ということはやはり想定しよう。
ブレーキとアクセルを間違えるやつなんてそうそうはいないのも間違いないが、それでも、その間違いによって公道で事故を起こしたり、スーパーやコンビニの壁に駐車するつもりでぶつけるやつは一定数いる。
スポーツ平和党時代、何度言っても「アントニオ猪木」に投票して無駄になる票はあったのだという。
そういうものだもの。
「民主党は2016年に維新の党とひとつになって『民進党』に名前を変えたので「民主」「民主党」は無効になる」ということを知らない、聞かない、調べない…という人は一定数いるはずであります。
さて、そういう人が、来る参院選でもし投票用紙が、『民進党』の隣に、どこぞから怪しげな資金を提供されてやっつけの候補者を立てただけの泡沫政党「民主党」の名前が並んでいたらどうなるかな……。
くどいようだけど、それを防げる仕組みってちゃんと既にあるよねえ??
追記 韓国ではホントにあったそうで。
いまだに「ハンナラ党」の名前で選挙に出れば全国で8万票も入るのに比べれば全然浸透してないとおもう https://t.co/pOXachUdHm
— ちょろ (@y_choro1) 2016年4月16日
でも前回は20万はいったからね>「ハンナラ党(現セヌリ党とはなんの関係もない)
— ちょろ (@y_choro1) 2016年4月16日
なお前回2012年総選挙で20万票もあつめた現セヌリ党とはなんの関係もない「ハンナラ党」、その年の12月の大統領選挙で文在寅を支持した模様
— ちょろ (@y_choro1) 2016年4月16日
(厳密には片割れの「希望ハンナラ党」ですが)
だからどこかの物好きか、あるいは右翼が今回の参院選で「民主党」という政党を作って比例区に候補者をたてるんじゃないかという気がしてるんだよね
— ちょろ (@y_choro1) 2016年4月16日
「実は」存在してるんですよね(ただしセヌリ党とはなんの関係もない他人が勝手に結党した「ハンナラ党」ですが) https://t.co/eaQjp8mH3D
— ちょろ (@y_choro1) 2016年4月16日