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「自由・平等・”博愛”」というフランスの理念の”誤訳”、どこまで生き残ってるの?【日曜民俗学】

記憶に基づく再現でご容赦だが、土曜日、NHKの夜のニュースを見ておりました。7時だったか6時だったか…そこでアナウンサーの、ニュース紹介の前ふり部分で「フランスの建国の理念である『自由・平等・博愛』は…」と語られているのを聞いたのですね。
ほんで、「おやっ?」と。

フランス語なんて「シェー」しかしらない当方としては、コピペするざんすよ。
【 Liberté, Égalité, Fraternité « リベルテ、エガリテ、フラテルニテ 】。

んで、前ふたつはともかく、最後のやつを「博愛」と訳すのはちょいと違う、といつのころからか指摘されるようになりましたねん。


最初は、呉智英氏みたいな偏屈な思想家が、からかい気味で語っていたことだが…いや?違うのかな?どこが見直し機運をぶちあげ、推進したのかは定かでないが、自分の観測してる範囲では、かなりの部分が「自由・平等・”友愛”」という訳に差し替わった、という印象を持っていた。
「自由・平等・団結」とか「自由・平等・義兄弟」という訳語を、前述の呉智英氏は語っていたのですがね(笑)。


追記 その呉智英氏の文章を引用します。http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151031/p2で半月前に書いたばっかりなので、周知の事実のように思えて割愛してしまった…

三つ目の理念とは便宜上英語で説明しますがFraternityです。これは従来、「博愛」と誤訳され、自由平等博愛の三理念と称されてきました。でもFraternityは「博愛」じゃありませんよ。これは「同胞愛」です。
FraterはBrotherと似ていることからもわかるように、同根の言葉で、ともに「兄弟」ということです。
(略)
(最近は)「友愛」という訳語があてられます…しかしこの「友愛」、よく考えると「博愛」と同じように意図的な誤訳じゃないでしょうか。
(略)
原語のFraternityは、他人なのに兄弟のように仲良くするという意味です。それを日本語では普通なんと言いますか。「義兄弟」でしょう(笑)。…フランス革命の三理念を性格に日本語に訳せば「自由、平等、義兄弟」になるのです。(後略)

そして、ここを押さえれば、日本の言葉は自然と変わっていく…とでもいうべき、いま現在の1丁目1番地、ウィキペディアでも、ご覧の通り。
wikipedia:自由、平等、友愛
となっているのでごんす。つまり、革命はすでに成れり!!!

しかし・・・本日、「NHKの反動」を見て、おや、まだアンシャン・レジームは消え去ってはおらんのか、と驚いた次第。
で、考えてみれば、本当にこの革命は実現しているのかどうか………心もとない。

一番いいのは、学校で使われている歴史教科書などを確認することだろう。
しかし、そんな手間も手法もないしな…。
でも、どこかでせめぎあいはあるのだ、と思う。

そんなわけで、フランスの理念を「いまだに『自由、平等、”博愛”』と訳している勢力」と「別の訳語を使っている勢力」と色分けできたら面白かろうな、と思いたったのです。また、その変遷史なども追ったら、さらに興味深いものになるであろう、と。


はてな人力検索で募集すれば、回答が集まってくるかもしれないが、はてなポイントが惜しいので(笑)、こっちで在野の賢人が教えていただけるとありがたい。


ちなみに余談ですが、ぼくはこの「自由、平等、博愛」という和訳スローガンを、内山安二先生の「世界の国ぐに びっくり旅行」で知りました。
”博愛”の象徴として、ブタが子ブタに、焼き芋をわけてあげる絵がついていたはず(笑)


フランス大使館

ありゃ?ここがたぶん守旧的にずっと古い訳を使ってるんだろうと思っていたら

http://www.ambafrance-jp.org/article4046
自由、平等、友愛

 啓蒙の世紀の遺産である標語「自由、平等、友愛」は、フランス革命のときに初めて掲げられました。この標語は何度も問題にされましたが、第3共和政下でようやく認められました。1958年憲法にも明記され、今日では国家遺産の一部となっています。

ここが「自由、平等、友愛」なら、何の問題もなく移行できるんとちゃう?
てか、NHK、なんだっちゅーねん。あれは原稿を書いた記者さんのクセであって、一般的な公式の表記ではないのかな…?


伝言

とくに名を秘すが 「 自由 平等 やおい 」はどうでしょう、とか言ってきた某さん、やめなさい。腐敗したアンシャンレジームを倒すための革命で、自分が腐ってどうする。



======== ここから「第二部」に入ります =======

第二部 その後調べてわかたこと。

検索にちょっと角度をつけて、いくつかのパターンで検索したら、手がかりが出てきたぜ。

wikipedia:友愛
西洋からの影響[編集]
日本語の「友愛」は近現代に西洋からの影響を受け始めた。西洋における「友愛」とは、フランス革命(1789年)のスローガンであり、現在フランス共和国の標語である「自由、平等、友愛(じゆう、びょうどう、ゆうあい。フランス語: Liberté, Égalité, Fraternité)」に由来すると言われる[2]。このフランス語が日本で知られ始めたのは日本の開国の期間であったが、当時の日本では fraternité が博愛として解釈され「自由、平等、博愛」が使用された。現在も日本では「自由、平等、博愛」の訳が併用され続けている。
「友愛」「博愛」の2つの訳[編集]
英語の fraternity にあたるフランス語は fraternité (フラテルニテ)である。このフランス語が日本で知られ始めたのは日本の開国の期間でありフランス革命に関するフランス語「Liberté, Égalité, Fraternité」の翻訳は、「自由、平等、友愛」と、他によく知られる「自由、平等、博愛」がある。その言葉が日本にもたらされた時期は日本開国の頃であり、その時期フランスではブルジョワジーにより階級特権的にフィランソロピーが行われ、fraternité が博愛の意味を含んでいた[3]。
21世紀現在、日本の各社が出版する仏和辞典の fraternité の項目にある説明は、友愛、兄弟愛、同胞愛、友愛団体などであり、博愛の文字はほとんどない。また、日本語自体の「友愛」と「博愛」は同義語ではない。例えば英語で「友愛」を fraternity 以外に翻訳した場合は brotherhood (ブラザーフッド)、friendship (フレンドシップ)などである。「博愛」を英語に翻訳するならば、philanthropy (フィランソロピー)、charity (チャリティー)などである。

祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印(1/5)
http://www.hatoyama.gr.jp/profile/fraternity.html

鳩山由紀夫衆議院議員


党人派・鳩山一郎の政治信条

現代の日本人に好まれている言葉の一つが「愛」だが、これは普通〈love〉のことだ。そのため、私が「友愛」を語るのを聞いてなんとなく柔弱な印象を受ける人が多いようだ。しかし私の言う「友愛」はこれとは異なる概念である。それはフランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」の「博愛=フラタナティ(fraternite)」のことを指す。

祖父鳩山一郎が、クーデンホフ・カレルギーの著書を翻訳して出版したとき、このフラタナティを博愛ではなくて友愛と訳した。それは柔弱どころか、革命の旗印ともなった戦闘的概念なのである。

「友愛」か「博愛」か―fraternitéをめぐる考察
2010年 12月 9日評論・紹介・意見 fraternité岩田昌征 <岩田昌征(いわたまさゆき):千葉大学名誉教授>
http://chikyuza.net/archives/5004

自由・平等・博愛(友愛)の中の博愛(友愛)について一言したい。これら三語は、言うまでもなくフランス語のliberté,égalité,fraternitéの訳であって、自由と平等は適訳であるが、「博愛」はミスリーディングな不適訳である。現代史研究会の合澤氏によれば、かの廣松大先生も誤訳であると常々口にしていたそうである。

日本社会ではfraternitéの原義「兄弟関係」、「兄弟愛」の地平を跳び越して「博愛」まで行ってしまった。それが英語化したfraternityを三省堂の新コンサイスで見てみると、原義どおりであり、かつbrotherhoodと同義とある。「博愛」は全く姿を見せない。

周知のように、また内田氏も説いたように、1789年フランス大革命で謳われた理念は、自由・平等・所有であってfraternitéはない。1848年フランス共和国憲法に自由・平等・fraternitéの三位一体が登場する。時代は諸民族の春、諸国民の春の時代である。fraternitéを「博愛」と訳すると、仁、慈悲、人類愛一般に通じるものとなり、宗教的かつ抽象的にすぎる。fraternitéは兄弟愛から姉妹愛へと展開し、兄弟姉妹関係の自然な最大限延長として民族愛・同胞愛にまで至る。訳としては「友愛」が適切であろう。すなわち友愛とは民族主義の心、理念である。

棚沢 直子
グローバル化時代の国家アイデンティティ ―日仏比較―
http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/global/manu.html#tanazawa

……ついでに翻訳について言えば、「博愛」の含意があった時期に日本が開国したせいで、「フラテルニテ」を「博愛」と訳し、フランス共和国の標語は「自由・平等・博愛」だとして現在に至ってしまった。「フラテルニテ」が少数派の仲間意識の意から出発したことを思えば、万人向けの「博愛」ひいては「人類愛」などの訳は正確ではない。「フラテルニテ」の訳語は現在でも「兄弟同士関係」「兄弟愛」せめて「友愛」ぐらいが妥当だろう(3)。しかも、フランス語では兄と弟の区別はなくあくまでも平等である。


コメント欄より

こういうのこそ、図書館司書に聞いて調べてもらうってワザを発動すべきときかしら?
通りすがり通りすがり 2015/11/26 03:31
ちょっと気になったので、適当に調べてみました。
ネット上で見れる資料しか当たっていないのでいい加減なのですが…
・辞書の問題?
 1、日本初の本格的仏和辞典『仏語明要』(1864)/早稲田の古典籍データベース参照
 Fraterniteは「兄弟の因(ごとし)、互いの睦ましさ」
 2、中江篤介=兆民の『仏和字彙』(1893)/近デジ
  ※『字彙』は同著者の『辞林』(1887)の縮約版
 「兄弟姉妹の親しさ、親和・博愛・交誼」
中江兆民の訳語のせい?
 →ネット上に兆民の辞書はリトレ&ボージャンのフランス語辞典の訳、という真偽不明の話があったので、フランス国立図書館(gallica)のサイトで確認。
  たぶんDictionnaire de la langue française(littre;1883)だろうと見当をつけ、
  Fraterniteを見てみると、
 1、兄弟姉妹の関係
 2、兄弟姉妹のような関係 とならんで
 3、L'amour universel qui unit tous les membres de la famille humaine.
   Devise de la France républicaine : liberté, égalité, fraternité.
 google先生によれば、
   Universal love that unites all members of the human family.
Motto of republican France: Liberté, égalité, fraternité.
 (http://littre.reverso.netで検索可能)
 だそうなので、人類一家全員を結びつけるユニバーサルなラブ、と言えば
 博愛と訳してもいいような気がします。ご丁寧にフランス革命の話にも言及していますね…
・ということで、
 結論1:フランス革命思想を日本に紹介した中江兆民の訳語が影響しているのでは。
 結論2:当時の、少なくとも上記の辞書編纂者はモットーとしてのFraterniteを広い人類愛として解釈していた。(アカデミーフランセーズ辞典あたりの各版を見れば変遷が分かるかも)
・結局のところ現代の辞書で友愛と博愛が区別されているとすれば、wikipediaの参考の棚沢直子氏の言うように言葉が変化したから、ということでしょうか(但し氏の言うように階級差を前提とする慈善としての博愛、かどうかは上の釈文からは微妙な気がします)。
・人類皆兄弟(by笹川良一)の例の如く、
 近デジでも原戌吉なるキリスト者が『人類兄弟主義』(1906)で「自由平等博愛」と使っているように、理想主義的には割合博愛と友愛は混同、というか取り替え可能な用語として使われているような気もします。