さりげない危機、でもうひとつお話を。
http://www.sankeibiz.jp/express/news/140727/exd1407270001001-n1.htm
「最強の太陽風」あわや200兆円損害 1週間の差で直撃回避していた! (1/4ページ)
2014.7.27 08:06
職務経歴書の書き方ならDODA転職支援サービスへ。[PR]米ニューヨーク・マンハッタンで、太陽が大通りの延長線上のビルの谷間に沈む「マンハッタンヘンジ」の様子をスマートフォンなどに収めようとする人々。しかし、強力な太陽風の直撃を受ければ、撮影どころではなく、機器が破壊されるのは必至だ=7月11日(ロイター)
2年前に太陽から強力な太陽風が放出され、地球をかすめたが、もし地球を直撃していれば、「全世界が被る経済的損失は2兆ドル(約200兆円)にも及び、現代文明を18世紀に後退させる」ほど威力があるものだったことが分かり、米航空宇宙局(NASA)が26日までに発表した。NASAは報告書の表題を「ニアミス:2012年7月の巨大太陽風」とし、もし放出が1週間早かったら地球を直撃していたと指摘している。まさに人類は、暗黒時代に陥りかねない危機一髪の状況に遭遇していたのである。
「ソーラーストーム」か。
この危機は以前から予測されていて、自分は二度、書いていた。
「ソーラーストーム」で2013年、地球の磁気記録が全て滅びる日(ホントかよ?) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110219/p5
一度ブログで話題にした2013年「ソーラーストーム」、再度世間の?話題に -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110523/p2
しかし君ね、おどろくべきことだが、
こう書いていて、けっきょく何の防御策も取らなかったのである。原発事故への供えを欠いた政治や電力会社をあまりわらえん。まあ、ここにあるような太陽嵐が襲ってきたら、1個人が対抗できるとも思えないが。
あまりに、その結果で予想される被害が深刻すぎるので、いまだに「地震なんてないよ!」のお姉さんのように「太陽嵐なんて無いよ!!」と叫びたくもなるのだが、いくら予算その他の思惑もあるとはいえ、NASAも自分の信用に関わる話のはず。「直撃したら世界の電子機器に深刻な影響を与える太陽嵐があり、今回1週間の差でそれを免れた」はたぶん事実と見なさざるを得ないのじゃなかろうか。
「これまでそんなことは無かったじゃないか!」という議論ができないのが…たとえばSF小説の設定の説明なら満点なんだけどね…。過去に梶原一騎的に説明した。
太陽嵐は事実談であり…この現象は実在する!!
お疑いの向きは、スミソニアン博物館と大英博物館に現存する、1859年の記録を閲覧されよ。
前回の太陽嵐が、ごく小規模な珍談奇談にとどまったのは、まだ人間社会に磁気記録はおろか電気すらわずかにしか普及していなかった時代だったからで……人類の知的活動の記録が、ほぼすべて磁気や電磁記録によって残されている21世紀の今では、まさにこの宇宙現象は残虐なる致命傷!!
そう、「これまでも大規模な太陽嵐は地球に降り注いでいた。だが、『電子機器』が存在しなかったから、人類はその被害に気付かなかっただけなのだ。一番最近にこれが発生した200年前、わずかに発明され始めた無線機器は…被害を受けていた!!」
って説明されれば、ぐう、としかいいようがない。
想像してごらん。
「一斉に」「地球上のすべての」「電子機器と磁気記録が破壊され、使用不能になる」
そんな光景を。
飛行機は。金融は。医療は。電気、水道、ガスなどのインフラは。そしてなにより、核兵器や原発の制御は……。
アメリカなどにいる、世界の終わりを夢想して食料や武器弾薬を備蓄する「サバイバリスト」や黙示録論者、あるいは電子機器文明の恩恵をあまり受けていない、発展途上国の未開発地域こそが、実は勝ち組になるかもしれない。
まあ、あまり危機を煽るのもへんな話だ。もう少し専門家に、専門的な議論や論文を噛み砕いて語ってほしいと思う。ひょっとしてNASAの発表英文を丁寧に読んだら「なーんだ」なんかもしれないわけで(自分で読む気なし)
ただ、その前提としてもっと「騒いで」もいいんじゃないだろうか。少なくとも2000年問題よりは深刻なんじゃないかい。NASAの発表は、TVのトップニュースにしたり、新聞の1面を飾ってもよかったような気がする。
あ、「ムー」が大特集するのは、この際はご遠慮いただきたく(笑)
地球上で一斉に、文明の基盤が”一部”崩されるというSF
考えてみると、自分のとぼしーSF体験ではそういうのが好きだったっていう感じはある。
これを「文明引き算もの」(仮称)と、仮に名づけよう。
以下、印象や記憶に基づいてランダムに。
- 「トリフィドの日」
ゾンビ映画などの、ある意味さきがけという人もいますね。ゾンビに当たるのは、毒のムチをもち、三本足で歩き回る能力があるという「トリフィド」という植物。油だっけ?それが採れる有用作物だったので、厳重に管理しながら世界中で栽培されるようになった。
それとは別に、世界中で大流星雨が見られる日がやってきた。「一生に一度あるかないかの天体ショー」を、大多数の人が眺めていたが、その時に大閃光がきらめき…この光をみた人はすべて失明した。
ごくわずか、何らかの事情でこの流星雨を見物しなかった人々が、突然失明した多くの人々の上に君臨してグループを作ったり、抗争したり生活基盤を再建しようとする中、「トリフィド」は、人間の管理を離れ、毒のムチをもちながら街中を歩き始める…
作者のジョン・ウィンダムは1969年没で、日本の現行法ならあと5年で著作は共有財産になるのだが、そのころの制度はどうなってるかね……
- 「明日泥棒」
小松左京のSFで、本来のテーマは、宇宙人「ゴエモン」がゼロの視点から人間文明を観察し、頓珍漢かつ本質をつかんだ解釈(矛盾した表現だが、そーとしかいいようがなく)をするところが醍醐味なのだが、ゴエモンの持つ超能力を利用し右翼の大物が「永久世界平和のために、核や爆弾を一斉に無効にする」魔法?を世界にかけ、実際にそうなってしまう。それがいろいろな弊害をもたらしたり、それを前提としたあらたな世界的闘争が発生したりとややこしくなるのだが…
- 「夜が明けたら」
ある夜に、停電が発生する。平凡な一家庭では、その停電を受けてローソクなどを持ち出し、ちょっとした不便さも、ちょっとした非日常の興奮も感じつつ、その一夜を過ごす…つもりだったのだが、なかなか夜が明けない。
外に様子を見に行った主人公は、焚き火をしていた老人と、火に当たりながら会話をかわすが、老人はこう語る。「星座が、全然動いていません。地球の自転が、突然止まったのです…」
その後の描写は、短編なので無い。焚き火のおじいさんが「これから先、こんな木切れでも貴重になるでしょうな。だがまあ、今のところ…」と火にくべるシーンは印象に残る。
科学的に考えると(ほんとは大津波とかないとおかしいけど)、この後太陽の側は灼熱地獄に、夜の側は氷の世界になって、人々は大勢が死んでいくのだろう。
自分は筒井康隆が編集した70年代の「SFベスト集成」で読んだのだが、2年前に文春文庫になっているようで。
- 「七都市物語」
ざっくりいうと
・月?に地球から植民した人たちが、逆に地球を支配するようになる。
・彼らは地球人が反乱を起こさないよう、一定高度を一定速度で飛ぶ物体を無条件で撃墜する監視システムを構築する。
・そしたら月の植民地人は、なぞの伝染病で全滅。
・地球人は思わぬ形で支配から解放されたが、この監視システムだけは自動操縦で残ってしまった。以後、地球では「飛行機・ミサイルなき文明」のもとで三国志的な興亡が展開される。
- 「生物都市」
諸星大二郎のデビュー作にして、おそろしいほどの奇想と完成度を誇る作品。
「金属」を通じて、その何かは、人間などの生物を次々と取り込んでいく。それによって個々人の自我もひとつのものに溶け込み、それによって世界平和、ユートピアが来るのかも・・・という、のちにどっかの補完計画になったような気がする概念も出たりしているのだが、とりあえずその支配を逃れようとする人々は、すべての金属を捨て、身から外して原始的な生活に戻る。
えーと、何に収録されてたっけ・・・たぶん「失楽園」だ。
- 「何もないけど空は青い」
原作:西森博之、作画:飯沼ゆうき。
疲れたんで、WEBサンデーの紹介文を引用するね(笑)
http://websunday.net/rensai/nothing/
隕石が撒き散らした塵により、地球上では得体のしれない生命体が増殖していた。それは恐ろしい速度で鉄を、金属を分解し続け、世界は文明崩壊の危機を迎えていた…
仁吉が住む、東京から200kmほど離れたM市にも鉄がなくなり始め、高校も閉鎖される。治安は乱れ、恐怖の連鎖でパニックに陥る住民たち。そんな中で仁吉たちの進む道は…?
鉄がなくなる世界に突然放り込まれた高校生たちの…絶望の中の青春アルバム!!
個人的にはこの「金属がダメになって文明が崩壊する」というのを聞いて「えっ、諸星大二郎と(結果的に一部)かぶるじゃん。なんでそんな、ピンポイントで誤解招くような設定にするかなー」と思ったんだけどさ、当然ながら「生物都市」は短編でシチュエーションを書ききれないこともあるし、話自体はオリジナリティは高いっす。ただ、すごく面白い!と猛プッシュする気も今のところはないが…
やはり大地震ものやゾンビものも、
ある意味これに近いよね。
だが、部分的に「文明引き算」をすると、人類の脅威を部分から全体にどう波及させていくか、人類はどう対処するか、それをロジカルに考えるところがミソだ
※自分のSF知識は非常に浅く、しかもさび付いているので、上のような「文明引き算もの」でお勧めの作品などあれば教えてください。
とりあえず、「太陽嵐による電子文明破壊」のシミュレーション漫画か小説、誰か書いてくんない?
いかんいかん、SFの楽しさに引っ張られると、今回の太陽嵐問題がガチでやばい話であることをつい忘れてしまう。
たとえば本当に太陽嵐が直撃したら、日本の21世紀の代表的文化遺産である「見えない道場本舗」(オイオイ)のテキストがデスネ、すべてパーですよ。活字にもなってないし、プリントアウトもされてないから、はてなサーバーからなくなると、永遠にこの芸術文化が失われてしまうのです。
…ますます深刻さが感じにくくなったな(笑)。
それはともかく、新書なり漫画誌連載なりで…まじめな科学ノンフィクション読み物でも、小説や漫画という形式でのシミュレーション・フィクションでも商業的に成り立つ余地があるんじゃないだろうか。
新書が売れるレベルの興味を持つ読者人口、この事象にはあるんじゃないかな?かりに凡庸なパニックもののクオリティにとどまったとしても(失礼だな)、「読者よ――これは実際に起き得ることなのである!」という一文は、最高のスパイス、ソースになって味の七難を隠してしまう(笑)。
こどものころ、五島勉氏にだまされた人は、俺も含めてまたひっかかるんだからさ(爆笑)。
そして、実際に太陽嵐のパニックが来たら…こういう事象を小説でもなんでも先に知っていれば、パニックを抑える力になるだろう。
そして作者は…実際にオウムが大犯罪やらかしたあと、一気に評価された江川紹子氏の再来ですよ。メディアにひっぱりだこになりますよ。
…問題は、そのメディアが、太陽嵐の後にはせいぜいガリ版刷りぐらいしかないことなんだけど(笑)
あるいはそのころは、例の「モヒカンに斧もってヒャッハー」な世界かもしれない。ただ、バイクも使えなくなってるぜたぶん(笑)。
太陽風に関する研究結果を米科学誌「宇宙天気」に今年2月に発表した物理学者のピート・ライリー氏は、今後10年以内にキャリントン・イベントと同規模の強力な太陽風が地球を直撃する確率は12%と分析している。
今後、この太陽嵐が起きる確率は?
最初のリンクに戻る…びびって、たじろくなよ。
太陽風に関する研究結果を米科学誌「宇宙天気」に今年2月に発表した物理学者のピート・ライリー氏は、今後10年以内にキャリントン・イベントと同規模の強力な太陽風が地球を直撃する確率は12%と分析している。
「過去50年の太陽風の記録を分析した結果、導いたのが12%という数字だ。当初は確率がとても高いことに自分でもかなり驚いたが、正確で誇張のない数字だと言える」とライリー氏は述べている。
太陽の活動は地球からコントロールすることはできないだけに、12%というのは不気味な数字だ。
まあ、こういうときは元論文を読むべきなんだろうけど、もちろん当方は読む意欲も能力もありません。興味あるひとはこの米科学誌「宇宙天気」とやらを。