INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

児童虐待を防ぐ3つの政策を挙げるなら…「監視せよ、監視せよ、さらに監視せよ!」

渋谷駅「幼児虐待」動画 「女性が特定された」と警察から投稿者に連絡|弁護士ドットコムトピックス http://www.bengo4.com/topics/1707/
 
ネット上で大きな反響を呼んだ「渋谷駅で女性が幼児を蹴り倒す動画」。人々が行き交う駅の構内で、小さな子どもが母親らしき人物に頭を蹴られて倒れこむ様子は、多くの人に衝撃を与えた。この問題の女性が「特定された」という報告が6月27日までに、動画の撮影者のもとに、警察から寄せられたことが分かった。

動画を撮影し、フェイスブックで公開した会社員(※リンク先は実名)(38)によると、その女性は「動画に映った本人だ」と、警察に認めたのだという。警察は「児童相談所と連携して対処している」とのことだ。

渋谷警察署から電話で連絡を受けた…さんは、「最初に相談した際には『見つかりっこない』と言われていた。こんなに早く特定されるのかと思った。動画が反響を呼んだことで、警察に多くの情報が寄せられたのではないか」と話している。

以前からこのブログでは【となりのビッグブラザー】というキーワードで、情報技術…とくに撮影、録音、顔認証などの技術が、普及していくことについて語っていた。
その中で、「やっかいなのは、その結果として安全や安心が向上する『良きビッグブラザー』もいることを認めなければいけない」とも書いてきた。
皆が見てみぬふりの中で、とめられなくはあったものの現場を撮影し、それを公開して結果的に児童虐待エスカレート防止につなげたであろう人の機転と勇気を「ビッグブラザー」というのも申し訳ないが、ただ僕の分類基準では、外形的にはそうであると言っていいと思う。
誰もが誰もを監視し、記録する手段がある。それゆえに犯罪が防止され、安全と福祉が保たれる…


クローズアップ2014:身元不明なぜ続く 進む高齢化、遅れる意識
毎日新聞 2014年06月15日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140615ddm003040055000c.html

 認知症の疑いがある人が保護されて身元不明のまま置かれた問題は、行方不明者との照合システムや警察と自治体間の連携の弱さをあらわにした。

(略)

 警察と自治体の連携も課題に挙げられる。警察は法令上、24時間を超え身元不明者を保護できない。期限内に分からなければ自治体が引き継ぎ、施設などに入所させる。身元を捜す法令や規定はない。

 このため保護から24時間を超えると身元を捜す主体組織すら定まっていない。「警察の仕事としては自治体に引き継いだ時点で一区切り。その後の身元捜しは法令上の責務ではない」と語る警察幹部がいる一方、自治体側からは「市町村は行方不明者届などの情報を持たない。身元を捜すのは警察の仕事」との声も漏れる。

 埼玉県狭山市のケースは、こうした警察と自治体の谷間に落ちこんだ典型例だ。男性は氏名を話したものの、発音が不明瞭で、1996年10月の保護当初は呼び方にばらつきがあった。狭山市は97年11月時点で氏名を統一。この氏名が本名だったが、その後、市や県は他の自治体に照会し直すことはなかった上、埼玉県警にも伝えず、長年にわたり情報は共有されなかった…

この話の解決策として、坂村健氏が「顔認証技術のデータを、全国的なデータベースで共有すればいい」と提案したことは以前紹介させてもらった。

坂村健の目:「ミエコシステム」 毎日新聞 2014年05月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140522ddm013070037000c.html
 
 認知症やその疑いがあって行方不明となる人が年間およそ1万人に上っているというテレビの特集番組を見た。高齢化に従い確実に増加する認知症の方々の−−いわゆる徘徊(はいかい)問題について、社会としての体制が未整備だという。特に認知症による行方不明者を捜すシステムに問題があるという。
(略)
今一番有力なのは、顔認識システムだろう。…(アメリカでは)行方不明者の顔写真を登録すれば、即座にどこで見かけたかを検索するシステムも構築されている。(略)…問題はマッチングのシステム整備だけだ。


で、上は高齢者問題だけど、実はどの新聞だったかな…同じ時期に、児童虐待の問題に絡んで「引っ越していくうちに、まだ就学年齢なのに、ふと足あとがたどれなくなり、今はどの学校に行っているのかわからない児童がいる。そういう児童は虐待されている可能性が高い」と。

まあ、分かれた夫(或いは妻)からDV被害を受けており、子どもが学校に通う―というのはやっぱり足がつきやすい、というパターンも多いのだと聞くが、それにしてもきちんとしたホームエデュケーションでもしているならともかく、今の社会では学校に通わせないこと自体が、基本的には虐待そのものだからな。


だが、これも結局は「管理が足りない」ことに尽きる。鹿児島から奈良へ、その後は埼玉へ…と母親に連れられて移動するAくんが、今はどこの学校に通っているか。DV夫には見せないようにするのは当然ながら、公共機関は全てを徹底的に見通し、監視し、隠そうとするものは強制力をもってこじ開ける。
そうすることによってこそ、児童は守られるのだ。
ある意味で…―以下は誇大な表現であっても、逆説ではない―、「公共機関は、『全ての親は虐待の容疑者である』という疑いの目を持つべきだ」と思う。推定無罪は裁判や犯罪捜査の原則だが、児童保護なら(それで一人でも多くの子が救えるなら)、現在は「監視が足りない」のであると思う。
少なくとも例えば…子どもの出生届が出たら、その瞬間から義務教育期間が終わるまで、その子どもの公共機関での履歴はデータベースとネットワークによって瞬時にたどれるはずだし、どこかでぷっつりその糸が途切れたら、自動的にアラートが浮上するような仕組みは作れまいか。

我々自身が監視の対象となることが生み出す苦痛や不快よりも、犯罪者や危険人物が監視されることによって生み出される防犯効果や、それが防ぐ被害のほうがより価値がある。本当にそれが正しいかという計算はさておいて、人々がそのように思い、監視対象でありながらその監視の強化を望んでいるという点には注意する必要があるだろうし、このことを忘れて国家による監視の恐怖だけを言い立てても、問題の解決には役立たない。
しかも、監視の多くを実施しているのは国家そのもの(あるいは自治体などを加えた公的えセクター全体)ではない…国家や大企業だけが問題なのではない、到来するリスクをおそれ、それに監視と記録によって立ち向かう欲望は、社会全体で共有されたもの、我々自身のものなのである。
(73-74P)

おまけの過去記事リンク

児童相談所が子どもを監視し続けていれば「おおかみこどもの雨と雪」は成立しなかった、というパロディ(笑)

おおかみこどもの雨と雪」…の”アナザーストーリー”。あの時の児童相談所職員が・・・ http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120803/p2

「情報技術データ管理の技術進歩が社会に及ぼす影響」を考えた過去記事リスト。 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140407/p4