佐々木俊尚氏が昨日twitterで書いた「雑誌=作家バンク論」が、以前から思ってた話を再確認させてくれたので紹介したい。
https://twitter.com/sasakitoshinao (2013年4月2日)
マンガ雑誌の意味ってのは売れてる作家と売れてない作家、新人作家をパッケージングして「抱き合わせ」することに意味があるわけで、これが崩壊すると売れてない作家がどう生計たてるかという問題が浮上してくる。
大手出版社は極少部数でも文芸誌を維持してるように、マンガ雑誌は部数が減っても「作家バンク」としての役割を担わせるために将来も維持されてくんじゃないかな。そこからミリオン作家が出てくる可能性がある限りは。
取材もののノンフィクションなんかはミリオンがほとんど出ないから、作家バンクの役割を果たしていた論壇誌のほとんどがつぶされてしまった。文芸誌やマンガ雑誌とはそこが違うところ。まあ冷徹なロジックです。
昔わたしも連載を持っていた文藝春秋の「諸君!」が休刊になった真の理由は、「維持しててもここからはベストセラーがほとんど出ないから」ということだと以前聞いた。
諸君、の休刊はそういうことか・・・雑誌本体の売れる売れないに加えて「その連載からベストセラーが出るか?」も加味して考えると。雑誌の競争はハードだねえ。
ただセルフパブリッシングが広がっていくと売れてる作家は大手出版社から離れそちらに移行するような動きも当然出てくる。これが加速すれば、人気作家の利益で作家バンクを維持するという大手出版のわくぐみがいずれは根底から崩れていくだろう。
いまの出版社の「作家バンク」システムはよくできているとは思うが、これがすべてではないと思う。書きたい才能と読みたい読者がいる限り、いったんは現行システムが崩壊してもいずれ新たな安定的システムが出てくるわけで、その流れに乗ってくのが大切。
いま探して見つからなかったんだけど、田中芳樹氏の作家秘書ブログで、「田中先生は若手のことに配慮して、・・・」云々という、「雑誌や出版社全体のパッケージで、売れる大家が売れないマイナー作家や若手作家を養う」的な話を最近していた、と記憶している。
あとで誰か探してみて。
http://a-hiro.cocolog-nifty.com/diary/
その一方で、田中芳樹氏の事務所「らいとすたっふ」は佐々木氏が指摘している…「俺たちの財産であるロングセラーは、出版社とか通さず自前で電子書籍作って、儲けはぜんぶ自分達のものにしようず!」運動のさきがけでもある。
これはエントリがみつかった
http://a-hiro.cocolog-nifty.com/diary/2013/02/8-dc7c.html
・・・すぐにでも『銀河英雄伝説』のKindle版が出るのでは、と期待される向きもあるでしょうけど、どうもAmazonさんは『銀英伝』には興味のないご様子。ほかの出版社さんや代理店さんが「うちを通せば、すぐAmazonでKindle版を売れますよ」と言って下さるんですが、それでは「電子書籍については、出来る限り自分たちでやりなさい」と言った田中さんの言葉にも反してしまいますし。
Kindle版の『銀英伝』をご希望の方は、地道にAmazonさんにリクエストを送ってみてください。
これの電子書籍出版が決まったときの記事は、もっとはっきり書いている
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120222/p6
で紹介したが、孫引き。
・・・「電子書籍を商売にしている会社に丸投げするのではなく、できる限り、君たちがやりなさい」と指示がありました。そのため、既存の電子書籍問屋さんとの提携ではなく、私の会社が出版元となって電子書籍の販売を行うことになりました。
一方、このように直接、電子書籍事業を行うことで、大幅なコスト削減を実現…作家さんへの印税率は紙媒体の標準とされる10%に、数%ていど上積みされる程度となっておりますが、これを最小20%から最大50%まで…
漫画雑誌も結局、「単行本での大ヒットをねらうバンク」だとなると・・・いま、比較的好調な漫画雑誌がとんでもない分厚さ、枕にも凶器にもなるようなものになってるのって、どうせ漫画を単行本にして一発当てるなら、たくさん載せて一度に出すほうが、週刊誌よりコストかかんねーし、ということらしいね。
ノンフィクションだって
月刊現代→季刊「g2」になったのはそういう意味合いもあるらしい。
完全廃刊論を「ここからベストセラーが出れば利益になります!」で存続させ、実際に「ネットと愛国」がベストセラー&各賞受賞でその結果を出した。
(トータルでどうかはわからないけど・・・)

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追記 電子書籍ではもう既に、250円で売ってる。

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