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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「力道山は、強制連行されたコリアンの息子」という珍説奇説を佐高信さんが披露したが。

拝啓 佐高信様(※彼がよくやる手紙形式のパロディです)

昨年、6月20日ジュンク堂では質問コーナーでたいへん楽しいやり取りができまして、あらためて御礼申し上げます。
当時のやり取りは

佐高信氏との対話。「総会屋というのは勝手」「自分の文章に矛盾はある」と認める
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120712/p2

という記録にいたしました。同じジュンク堂対談シリーズでの他の動画では質疑コーナーまで動画としてUPされているものもあるのに、この回の動画は質疑シーンがカットされておりますけどね。

さて、佐高さんが連載しているサンデー毎日のコラム、先週発売の号では日本の対北朝鮮政策について、「かつての保守政治家は懐が深かった。もっと対話したり訪問を」というテーマですね。このパターンは何度も読んでますし、故高坂正堯氏との対談では同種の主張を簡単に退けられていた(貴殿の書「日本への毒薬」に収録されていますね)記憶があります。

またなぜか、もしこの種の関与・対話政策で近年もっとも成果をあげたミャンマー外交についてはずっと否定的でいらして、貴方の「保守政治家は懐の深さを見せて対話を進めるべき」論は中国、北朝鮮に限られるのが気になるところですが、テーマ自体は今回は置いておきましょう。
問題にしたいのは、とある記述です。

赤線を引いておきましたが・・・週刊新潮ルー・テーズのコメントに対し、佐高さんはこう続けていますね。

強制連行されたコリアンの息子の力道山と、そうではなくてアメリカ人になったテーズの場合とでは大きな違いがあると思う

ハテ?
・・・実は佐高さん、こう主張されるのは初めてじゃなかったですよね。
まだこのブログを当方が始める前ですから2002年、または2003年ごろだったでしょうか?どこかの週刊誌連載コラムに同じことを書いていましたよね。『「強制連行されたコリアンの息子」なら、「生まれた場所」はどこなんだよ』といったツッコミをされてた記憶があります(笑)。
そう、「生まれた場所」のことを調べるだけでロジックとしておかしいことに本来は気づくはずなんです。力動山こと金信洛は日本で生まれたわけじゃあるまいし。力道山本人が強制連行された、としたら「コリアン”の息子”」もへんですよね。

ただ、これはこれで佐高さんがプロレスに無知なゆえの事実誤認ならば、ただそれだけの話でしょう。

もっとも、実際は佐高さん、プロレスやK-1が放送されていると「ついつい見ちゃう」らしいが、それを恥じる意識も濃厚らしく、自分が批判的な知識人(堺屋太一内館牧子)がプロレス好きだと、それを批判材料にされちゃうんですよね(笑)。さらにはその部分を、単行本のときは慌てて削除したり(笑)。

まあ、貴方ぐらいのご年代で、お父上も山形県のエライ教育関係者(佐高さんも大学卒業後はその山形で「二世教師」になられたそうで)というご家庭だと、プロレスや格闘技にそういう感情を持たれるひともまた珍しいほどではないです。以前書いております

■「人として軸がぶれている」…佐高氏はプロレスが好きなのか、嫌いなのか
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070819/p3
■Re:佐高氏とプロレス
http://ameblo.jp/sataka/entry-10043864154.html

さて、余談が過ぎました。今回の記事は「たんに無知による事実誤認じゃすまないよ、佐高さん!!」ということを申し上げねばなりません。
上の引用画像にも記述が載っていますが、今回佐高さんは増田俊也木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を紹介されていますね。
・・・読んだんですよね??

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

「強制連行」にはいろいろな定義、解釈があることは存じ上げていますが、少なくとも力道山こと金信洛の来日経緯に対しては、どんな定義をしようとも強制連行の言葉を使うのは無理があるのではないでしょうか。その父親?に関しては言わずもがな。そもそも来日してねー。

自分でコラムに引用している本に、これだけ詳しく書いてあるのに、10年ほど前と同じ間違いをしているのは、なんなんですか。
もとは「経済小説本評論家」、書評家を表看板にしていた佐高さんですが、実にいい加減な形で本を読んでいらっしゃる、のではないでしょうか。というか、同書の作者の増田俊也氏の名誉にも関わる。あの文章構成じゃ、ほとんどの読者が「そうか、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』にも力道山の(父親の?)強制連行のことが書いてあるんだな」と思ってしまいますよ。


ここからは多少推論を交えます。なぜ、この佐高さんの文章に当方があきれているかというと、間違え続ける理由がひとつ推測できるからです。
要は佐高さんは対象が「強制連行されたかわいそうなコリアンの息子」でないと共感も同情もできないから、ではないでしょうか。
しかしです。
「野心満々」で「家族の反対を押し切って日本に来て」、大相撲で関脇まで駆け上がり、そこからプロレスに転向しても国民的英雄として大金持ちになった――そんな人間でも日本での差別に苦しみ、自分の朝鮮半島の出自を秘密にしなければならないと思いつめていた・・・・・・この、実際に即した事実だけで十分な・・・いや、むしろそれこそ今日的な問題につながる…大きなテーマであるのではありませんか??
少なくとも私はそう考えます。

これは佐高さんの発想、思想の根本的な欠陥につながっているのではないでしょうか。
今回は単純に事実誤認にとどまらず、自分の引用した本に正反対の記述があるのにスルーした、というとんでもない問題ですが、まずは「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の再読をお願いしたいと思います。

                     敬具

※当ブログは過去にも、佐高信氏についてさまざまな検証を行っています。詳細はこちらからどうぞ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%2A%5B%BA%B4%B9%E2%BF%AE%5D