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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「分からない」が前提のものが「分かる」ようになった時・・・…出生前診断の重さと難しさ

2012年9月16日(日) 午後9時00分〜9時49分
妊婦が必ず受ける超音波(エコー)検査。ここ数年その機械は飛躍的な進歩を遂げ、これまで‘生まれるまで分からない’とされてきた胎児の病気や障害が、詳細に分かるケースも増えてきた。更に、この秋には、妊婦の血液検査だけで染色体の異常が99%以上の精度で診断できる母体血検査が、日本で始まろうとしている。
実は日本では、胎児の異常(障害)を理由にした中絶は法的には認められていない。しかし、「母体保護」や「経済的困難」という名目で、中絶が広く行われているのが実情……

これは・・・いろいろと思考をめぐらすことはできるけど、究極的にはその立場に直面した親ごさん、特にお母さんの思いや気持ちは分からないだろう。でも、違う立場から考えたこともあるし、逆にタブー化するのも良くないので書き進める。
読売新聞のスクープだったのかな?血液をとって診断するだけで9割以上の正確さで、胎児にダウン症などの異常がある場合は分かる検査法が、日本に導入されると最近報じられたのは・・・

あれを読んだとき、「ああ、こうなって”しまう”のか・・・」と思った。
で、そう思った感覚に既視感があったんだよ。
こういうことを考えたことあったようなあ・・・と。

それは、これだった。

科学の進歩は人間の幸福! 例えばわが子は妻の不倫の子で、実子では無いとすぐ分かる!!(うーむ…)※「特上カバチ!!」より
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110429/p6

この記事を読んでもらえるとありがたいかな。
この記事にさらに先行して、一種のSF的状況を想定した

■親子(父子)の関係証明にDNA鑑定が義務付けられたら?−−科学が政治の上に立つ刻
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081124/p8

類例がたくさん出てくるので気づくけど
自分が興味を持つ社会問題の、共通テーマのひとつが
・いままで「不可能」が前提で出来なかったも(一部の人だけできた)のが
・技術の進歩で「可能」となってしまう(広く普及する)。
・それによる社会の変化と、「可能になってよかったのか」

という問題だったんですね。特に「情報をさばく」というテーマが、実際に技術が三段ととびで進歩している分野なこともあって、特に自分は「となりのビッグブラザー」問題と呼んでいる。

だから・;・・ここを長年読んでくださる人はいくつか覚えてくれる人もいるかもだけど

グーグル・ストリートビュー
スマホ・携帯のカメラ機能の普及=例えばおしのび有名人の動向の把握
顔認識機能により雑踏から一人を見つける
アプリやPCの履歴を獲得し、宣伝につなげる
携帯のGPSで「いまどこ」にいるかがすぐわかる
ビッグデータ
世論調査
デモや祭りの大群衆の人数把握

・・・などの話題は全部、「技術の進歩で、いままで分からないという前提のものが分かったら?」という共通テーマがあったんだ。
とくに、「分かる」ための材料が、今まで公開されていたものだったときはなおさらだ。別にこっそり金庫を開けて極秘情報を盗むのではなく、これまでオープンだった情報を大量に集めて、分析すると分かるというパターンならなおさらだ。


「わかる」ことへの歯止めはできるか?基本的に、事実としても倫理としても難しいよね・・・

上の「特上カバチ」がそのまんまだが・・・「父親が、本当にこの子は自分の子供であるかどうかを科学的に確認できるようになった」ことが悪いことだ、なんてことがあるだろうか。いいことだというしかないだろ? 「これは悪魔の発明だ!この技術は封印せよ!」なんて人はいまいて。実際に、これのおかげで
いや・・・いるんだろうなあ。でもそれは、マイケル・サンデルと生徒たちが論じるまでもなく「正義」ではないだろう。
ぶっちゃっけ、、利害関係とでもいうものでしかない。ただ、その利害があまりにも重く、根付いたものだとしたら・・・。

この現行の「摘出否認」の項目も興味深い。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AB%A1%E5%87%BA

嫡出否認の訴え
実親子関係が成立するには自然血縁関係を必要とするが、父子関係の確認の困難さを回避するため772条は父性を推定する規定を置いている[39]。しかし、父性の推定が事実と異なる場合にこれを覆すために嫡出否認の訴えを認める(774条)[40]。
家庭の平和の維持と子の地位の早期安定を図るため嫡出否認の訴えには厳格な制限が設けられており[41]、出訴期間中に嫡出否認の訴えがない場合には親子関係は確定することになるが、不実の父子関係の確定を生じた場合の子の保護などの問題もあり、民法上の厳格な制限については議論がある

これなんかは珍しく「分かる」ことを制限している感じだよね。

そもそもの「中絶と自由と選択」について

最初のNHKスペシャルの解説文だが

実は日本では、胎児の異常(障害)を理由にした中絶は法的には認められていない。しかし、「母体保護」や「経済的困難」という名目で、中絶が広く行われているのが実情

これが放置されているというのも、ある意味奇妙な話ではある。
日本はアメリカのような、不毛な「中絶論争」が宗教の違いもあって存在せず、非常にいいことだったとは思うが、実際この論争が始まったところで激しくなるのは「中絶は殺人だ」という主張も「中絶は女性の選択だ」という主張も「いつをもって胎児はひとであると”見なす”のか」という定義の問題に収斂していくもので、それはこっちでラインを引かざるを得ないものだからだ。
そして、「女性の権利」であり「胎児は人間とみなさない」だとした場合…逆に「胎児の異常が中絶理由にならないのはおかしい。」という論法も十分できるわけだ。てか「選択」が認められれるならばかばかしい迷信のひとつ「ヒノエウマだから」でも「黒猫が前を横切った」でもやれていい、と極論で言えばし得る。
その対極に「レイプの結果による妊娠でも、胎児には罪はないではないか。中絶は認められない」というプロライフ派の極論がある。いや、たしかに罪はないよ???・・・だけど「罪がある、ない」も胎児は人であるという前提の論の組み立てだからね。


そんな中に「安全に簡単に、ちょっと採血するだけで胎児の異常の有無が判明する技術が出来ましたよー」という選択肢ができる・・・・
この前の、「女か、虎か?」どころではない。

もちろん前提で

障害のある子供が生き難い社会だから中絶に追いやられるのであって、まずそういう親子がいきやすい環境を整備するのが先決。それが貧弱なままで「だから中絶はしかたないだろ」は本末転倒です。それは前提として。

・・・・でも、まったく同じ論法をアメリカのプロライフ派は「レイプの結果受胎した子」に対しても言ってたけどな。というか言うだけにとどまらず、身銭を切って、サポートする組織や制度を作っているのも事実。


例によって結論は出せない。
放送されるという番組に注目しよう。


このテーマのとき、この作品をいつも紹介している。

この話をがっと突き詰めたのが、藤子・F・不二雄先生の「耳太郎」や「テレパ椎」。
http://www.ffgallery.com/fujimoto/sftanpen/esp/index.html

耳太郎(みみたろう)
「耳太郎」と友達3人は、将来まんが家を目指していた。耳太郎はアイディアが浮かばずに1人屋根に寝そべっていたのだが、その時、次々にアイディアがひらめいたのだ。しかし、それは彼自信が考えたものでは無かった。彼が突然身につけてしまったテレパスの能力によるものだった。そしてその他人の心を読める能力により、耳太郎はみんなから避けられていった。
テレパ椎(てれぱしい) 
今まで周りの色んな人に迷惑をかけて来た。でもみんな嫌な顔一つせず助けてくれる良い人ばかりだ。そう思っていた。テレパ椎を拾うまでは。そう、その日から世界が変わってしまったんだ。ある日ふと見つけた椎の実をポケットに入れた。それからというもの人の心を読む事が出来る様になった。そしてみんなの本音を知る事となり、嫌な世界へと変わってしまったのだ。

【となりのビッグブラザー