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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

映画「靖国 YASUKUNI」の「無断撮影され、映画に登場させられた。肖像権侵害だ」訴訟、原告実質勝訴で和解??

えーとね、嵐が収まったらだーれも話題にしなくなっちゃった「靖国 YASUKUNI」というドキュメンタリー映画があります。

靖国 YASUKUNI [DVD]

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国の助成の是非やら、上映館への脅迫や街宣(もしくは「上映反対運動」)やら国会議員の”介入”やら、いろんな論点がありましたが、
実はあの映画がもたらした一番重要な思想的課題、今後の映画に対して大きなインパクトを与えるのは、実はタイトルにうたった
 
「無断撮影され、映画に登場させられた」訴訟(民事)だったのです。(俺認定)

状況説明のために、以前のブログを再録しますね。

■「ドキュメンタリー映画に勝手に登場させられた」ことを争う民事訴訟が展開中…これが問題の本丸だ!
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100617#p4
『そういえば映画「靖国」って、撮影許可のない場所で撮影した!とか、勝手に撮られた!って抗議があったけど、最終的には裁判になったんだっけ?うやむやになったんだっけ?』というのが気になって、調べてみた。
そしたら、最終的にはこれ、裁判に発展してたんだよ!(略)

http://plaza.rakuten.co.jp/seimeisugita/diary/200907290000/

(略)…黒岩徹氏が、本人は全く知らずに主に黒岩氏に焦点が当てられるようにして撮影されていたことが判明致しました。黒岩氏は、このようなことは、我国の報道関係の正義や靖国神杜およびご英霊の名誉に関わることであり、これを犯す今回の映画の中国人監督・製作会社・配給会社を、「肖像権侵害」として勇気を持って敢然告訴することに致しました…(略)

(略)…考えれば分かるように「了承してないのに勝手に撮られた+それをドキュメンタリー映画として勝手に公開された」ということの民事責任を問う裁判は、これはイデオロギーを超えて
ザ・コーヴ」にしろ
森達也「A」にしろ
カウボーイズ・イン・パラダイス」(参考http://hazama.iza.ne.jp/blog/entry/1579660/ )にしろ
在特会が、自分たちの活動(への抗議対象者の反応)を撮影してYOUTUBEにアップロードするにしろ、
・・・すべてに大きく関わってくる問題なんじゃないすか。

■9月27日、映画「靖国」裁判の口頭弁論がある。これこそあの事件の「言論の自由」の本丸なのに…
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100920/p2
 
自分で資料を見てみたよ。
訴訟番号は「平成21年 ワ 1232 民事17部 「靖国」肖像権侵害訴訟 」だ。(略)
■原告の言い分
「8月15日、休憩所でビールをのみながら二人と歓談しているシーンが1分30秒にわたり撮影され、無断で上映された」
「そしてDVDをつくり、製作販売された」
「原告の映像は原告に無断で撮影されたものであり、原告の肖像権を侵害する不法行為である」
  
■被告の言い分
「李監督は業務用TVカメラで至近距離から撮影したのであり、無断で撮影したのではない。肖像権を侵害してはいない」(略)

と、昨年9月に書いてから「こりゃ長引くかなー」と思って自分も4カ月放置しちょりました。
だが、何以下の拍子で数ヶ月前経過が気になり、関係ブログを見たりキーワードで検索したら・・・

http://www.koakannon.org/jiken-sonota.html
(註:無断撮影されたと訴えた原告はこの「興亜観音」の責任役員でもあるらしく、その関係で同HPにUPされた。興亜観音も松井岩根など、近代史に関するさまざまな因縁や逸話があるが各自調査。)

23.01.26 「映画靖国」肖像権侵害訴訟裁判実質勝訴
平成20年5月封切りとなった中国人監督による映画「靖国・YASUKUNI」は、その反日的内容等により問題視されました。興亜観音責任役員黒岩徹はこの映画に1分30秒に亘り無断撮影されたため、日本の名誉に関わるとして提訴を決意(平成21年3月)、以後十回に及ぶ弁論の結果12月24日、裁判長指示により和解決着し、被告は原告に賠償金を支払うことになり、原告の実質勝訴となりました。(略)

あくまでも原告に近い立場の人が「実質勝訴」と言っているだけであり、被告側から見たら別の見解があるのかもしれないが、少なくとも自分が見つけたネット上の情報がこれしかないので、これを基準にせざるを得ない。
 
というか、この和解ってさすがにニュース価値があるんじゃないかね。両者の支援団体はともかく、普通の報道として報じられてもいいはずだよ。

で、がぜん興味があるのは、今後DVDが新版が出たり?たとえばブルーレイなどで再発売されるとき、このシーンはどうなるか、である。カットされるのかそのままなのか(カットされるならそういう報告がある筈で、ない以上セーフかもしれないが…)。
カットされるならある意味今のバージョンがお宝映像だからね。
 
そのへんのことはあとで、裁判記録をまたチェックするしかないか。 


プラス、カットされないにせよ「無断撮影悪かった!ごめん!」といって慰謝料を払ったのなら今後のドキュメンタリーづくりへの影響。
あるいは
「ゆきゆきて進軍」「すすめ!電波少年」など過去の映画への影響。
いや私ね、「ゆきゆきて、神軍」に出てくる登場人物の本人または遺族に、今回のことをいちいち知らせて「ドキュメンタリー映画に無断で登場させるのは違法かもしれませんよ?慰謝料請求しては?」と聞いてみたいぐらい(笑)。いやしないけどね。でも監督自身が「あれは被撮影者が奥崎におびえてたから文句が来なかった。今なら問題でしょうね」と認めている(笑)

まさに「靖国」を論じたムックの中での発言。

映画「靖国」上映中止をめぐる大議論 (TSUKURU BOOKS)

映画「靖国」上映中止をめぐる大議論 (TSUKURU BOOKS)

−−(略)映された人から抗議がくるといったことはなかったのですか?

「ありませんでした。当時はまだ肖像権といったことに強い問題意識はなかったように思えますし、それ以上に、決してほめられたことではないのですが、そんな抗議をしたら奥崎さんが怖い(笑)。『下手に刺激しないほうがいい』と、それが現実だったでしょうね」

ゆきゆきて、神軍 [DVD]

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電波少年」もこの前CSで放送されたとき「いまや地上波では放送不可能な…」といった煽り文句がついていたような。

森達也氏も、上記のムックでこう言っている。

被写体の了解があるかないかも、どうだっていいんです。踏みにじらないとドキュメンタリーなんて作れない。それによって人を加害します。その責任なんてきっと取れない。映像メディアはそれほどに強烈な加害装置です。その覚悟をしなくてはならない。(略)
 
僕ら製作者が覚悟すべきは、責任を取れない覚悟です。明らかに規範を超えています。それほどに悪辣で乱暴なことをしても、伝えたいからです。伝える価値があると信じている。ギリギリでやっているんです。そこに手を突っ込まないでもらいたい。

まあ、「覚悟は立派だがその論理は通じないわ」の典型だわな(笑)。というかこういうふうに開き直ればポアから総括から「ミニにタコ」の盗撮から、どんな非合法活動もできるわけで。

「隠し撮り」に関して当ブログでは「ザ・コーヴ」や「ドブスを守る会」の話題からも論じています。一覧

■ドキュメンタリーを廻る逆説…暴力の恐怖と威圧が「ゆきゆきて神軍」を上映”させた”
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100614/p4
■「ザ・コーヴ」騒動は「上映も抗議も自由。だが違法なら取り締まれ」という単純問題。むしろ盗撮問題のほうが厄介だ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100612#p2
■「ドブスを守る会」とやらと「ザ・コーヴ」はよくも悪くも悪くも論点が一致?弁護論もそのまま利用可能?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100619/p2

映画「靖国」は、撮影場所の靖国神社との民事訴訟もあり。こちらはどうなっているのか

靖国神社は「施設管理権がある当方が許可していない撮影を一部で行っていた。それが映画に使われている」つーことで別の民事訴訟を起こしているらしいのだが……。これがどうなっているかは、まるで分からない。
 
靖国神社公式サイトより 境内の撮影・取材について
http://www.yasukuni.or.jp/coverage.html