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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

9月27日、映画「靖国」裁判の口頭弁論がある。これこそあの事件の「言論の自由」の本丸なのに…

このブログは比較的
「言論・表現の自由」と、それを抑制するような、さまざまな問題に関する話題を、継続的に取り上げてきたとの自負がある。自由を抑制するというのにもいろいろあって、プライバシーであり、宗教的神聖さへの冒涜抑止であり、差別反対であり、推定無罪の原則であり、「隠し撮り」の是非であり…言論の自由を抑制、というと一方的な悪という印象もあるが、こうやって並べてみると何が正義かは、白熱教室でもないとなかなか白黒つかないかもしれない。というか、だからこそ私は取り上げ続けているのだ。
このへんは呉智英氏の薫陶を受けているからこそ、であるが。

んで、
そういう言論・表現の自由ということで昨年か、映画「靖国」の問題が出てきた。当然、当ブログもそれについてはいろいろと書いてきたが、実は言論
表現の自由に関して、上映反対運動などもあったが、むしろ「本丸中の本丸」の部分があまりに無視されてきた。
この問題は、現在進行形だというのに、である!!


それは何か・・・すでに6月時点でこのブログは書いていましたね。
一部だけ再録しよう。

■「ドキュメンタリー映画に勝手に登場させられた」ことを争う民事訴訟が展開中…これが問題の本丸だ!途中経過がどっかにないか?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100617#p4

『そういえば映画「靖国」って、撮影許可のない場所で撮影した!とか、勝手に撮られた!って抗議があったけど、最終的には裁判になったんだっけ?うやむやになったんだっけ?』というのが気になって、調べてみた。

そしたら、最終的にはこれ、裁判に発展してたんだよ!

知ってましたか皆さん。

ちょっと長い引用をさせてもらう。

http://plaza.rakuten.co.jp/seimeisugita/diary/200907290000/

映画「靖国=YASUKUNI」肖像権侵害訴訟

第一回口頭弁論報告 (平成二十一年三月五日東京地方裁判所)
・ 原告側訴状を提出して無事閉廷
第二回口頭弁論報告(平成二十一年五月十八日東京地方裁判所
第三回口頭弁論報告(平成二十一年七月二十七日東京地方裁判所

原告:黒岩徹(=NPO法人日本パラオ協会理事長)

被告:李纓(映画監督)、有限会社影(代表者李纓)、ナインエンタテインメント株式会社、株式会社ティー・オー・エンタテインメント、CCRE株式会杜 (以上三者DVD制作配給)
請求原因:肖像権の侵害

平成21年2月11日   映画「靖国」肖像権侵害訴訟を支援する会
                   会長   加瀬英明
                   応援団長 藤井厳喜
                   事務局長 藤田裕行
(略) 愛国者であり靖国神杜への尊崇の念篤い黒岩徹氏が、本人は全く知らずに主に黒岩氏に焦点が当てられるようにして撮影されていたことが判明致しました。黒岩氏は、このようなことは、我国の報道関係の正義や靖国神杜およびご英霊の名誉に関わることであり、これを犯す今回の映画の中国人監督・製作会社・配給会社を、「肖像権侵害」として勇気を持って敢然告訴することに致しました。

(略) 他方、靖国神社では既に別途この映画に対する訴えを起こしておりますが、被告方にはこの種の靖国訴訟にはいつも名前が出る代々木系を含む反日弁護士が名を連ねております。本件訴訟被告側についても同様と予想され、原告側でも高池勝彦弁護士を代表とする弁護団を組み・・・、

おいおいおいおい。
あの映画って、内容とかどうでもいいわい。
右翼の街宣車なんかも、さまつなエピソードだわい。
この進行中の「肖像権の侵害」訴訟こそが、本丸中の本丸、1丁目1番地じゃないか!!!!

だもんで、あとどこのメディアも報道してないんで、独自に調べたところ、9月27日午後2時から東京地裁でまた口頭弁論がある、ということが分かったわけだ。

しかしさぁ、みんな右だ左だってところからしかほんっと見てねぇよな。
原告本人と応援団もそーだけどさ(笑)。
考えれば分かるように「了承してないのに勝手に撮られた+それをドキュメンタリー映画として勝手に公開された」ということの民事責任を問う裁判は、これはイデオロギーを超えて
ザ・コーヴ」にしろ
森達也「A」にしろ
カウボーイズ・イン・パラダイス」(参考http://hazama.iza.ne.jp/blog/entry/1579660/ )にしろ
在特会が、自分たちの活動(への抗議対象者の反応)を撮影してYOUTUBEにアップロードするにしろ、


・・・すべてに大きく関わってくる問題なんじゃないすか。
いや、右左に関係ない問題だからこそ、みんな関心が薄いんでしょうね。ナットク。

だから、自分で資料を見てみたよ。
訴訟番号は
「平成21年 ワ 1232 民事17部 「靖国」肖像権侵害訴訟 」だ。
(つづく)

訴訟記録から

あらかじめお断りしておくと、こういう記録は当事者とその関係者以外は複写できない。したがって手書きメモを基にしているが、すごく走り書きしたので、正確を期したいという方は上の訴訟番号を元に実際に東京地裁で見てください。
さて原告は上記の通り。
被告は
李纓監督と、
龍影(有限会社)→「靖国」の企画、製作
ナインエンタ TOエンタ→DVDの販売・製版など
のそれぞれの代表。


■原告の言い分
「8月15日、休憩所でビールをのみながら二人と歓談しているシーンが1分30秒にわたり撮影され、無断で上映された」
「そしてDVDをつくり、製作販売された」
「原告の映像は原告に無断で撮影されたものであり、原告の肖像権を侵害する不法行為である」
 
■被告の言い分
「李監督は業務用TVカメラで至近距離から撮影したのであり、無断で撮影したのではない。肖像権を侵害してはいない」
「業務用の比較的大型のカメラで原告を撮影したのであって、原告は自らがが映画もしくはテレビに登場する可能性があるころは十分に認識していた。それにも関わらす原告は自らが撮影されたことを拒否しなかったのであるから撮影、本件映画(靖国)への登場および本件映画がDVDとして販売されることについて『黙示の承認』をなしたというほかない。無断で撮影したというのは事実に反する。」
「原告が本件映画への登場について黙示の承認を与えている以上、肖像権は侵害されず不当行為も成立しない」
 
■原告の反論
「原告はカメラの存在に気付かず、撮影などされていることを全く知らなかったから、至近距離から撮影したことはあり得ない」
「知らなかったのだから拒否しようが無い。従って撮影において被告が黙示の承認をしたとの主張は間違い」
「(1)カメラなどまったく認識していなかった。気付かなかった。(2)仮にカメラが目の前にあって何かが撮影していることを知っていたとしても、映画「靖国」に使用されるなど被告は知りようが無い。登場への、DVD販売への黙示の承認を与えてはいない。」
 
■被告の反論
「2001年のその日に、カメラを右肩上部に担いで両手に持ち、原告の1m半の至近距離、原告の正面で捉えて撮影した。カメラの幅は128、高さは180、全長405ミリ。カメラは原告の視界に入っていた」
「原告は正面を向き、対面して座っている人物に向き合って公共的なテーマについて議論していた。その後ろのカメラも認識している。それを拒否しなかった」
「撮影のカメラはハンディではなく業務用。こういう業務用のカメラで撮影されている映像は通常、TVなどで公表が予定されている。一般人はこのような業務用ビデオカメラで撮影されることを許容する以上は、当然その映像が公表されることを許容しているといわねばならない。撮影をキョウヨウした以上は、その映像の使用も許容している」
「2001年、小泉首相が8月13日に参拝したこととで神社は例年になく異様な状態だった。騒然としている様子を撮影しようとTV局を含め靖国で取材、撮影をしていた。多くのメディアによる取材が行われている状況で撮影について異議を述べたり制止したりすることもなく撮影を放置していた。」
「かかる状況を前提とすると、李監督によって原告が撮影を公表されることについて、原告は黙示的に承諾していたと言い得る」
「原告の承認の有無に関わらず、本件撮影、公表は表現の自由として保障される妥当な権利の行使である」
「平成17年11月10日の最高裁判決に即して起案が得ているが、この判決は例外的に適法としている。承認なき撮影は不法かどうかは、総合的に考慮しかければいけない」
「被撮影者である原告は8月15日に靖国に参拝した私人。8月15日における靖国参拝客は、私人だといってもそれ自体が公的関心の対象となる。」
「被告による原告の撮影については受忍の範囲内である」
「原告はパラオの慰霊、追悼をするNPOをやっており、毎年参拝している。純然たる私人ではない」
「(※問題のシーンは)大勢の人が活動する屋外にて、不特定多数で、公共的なテーマについて議論している。私事ではなく秘匿性も低い。公共性がある」
「映画『靖国』は公共的な助成金を受けている、また国際的な賞も受けている」
「人々の光景は、靖国神社を考える上で必要不可欠。その一部として参拝客の一人である原告が本殿近くの休憩所で公共的なテーマで話をしている場面の、ありのままの光景を撮影した。必要不可欠」
「肖像権侵害の主張は、原告が結果として不快に感じていうことに起因する。しかし表現の自由は、気に入らない表現に対しても自由を履行することが大切」
 

<証拠説明書>
・被告側が8月15日の撮影を再現した写真。角度などを再現し「至近距離から撮ってますよー」と再現したもの。
・被告のカメラの写真。「でかいから、原告も気付いたはず」という意味の様子。

■原告の再反論(原告本人の文章?)
靖国神社に確認したところ2001年8月15日、被告からの撮影申請はなされていない。つまり被告は神社の了解をとらずに無断で境内撮影しているのである。」
「神社はすごく混雑してて例年席を見つけるのも困難であり、昼食をとる人の出入りは多い。もっとも混雑するときに撮影していたとは思えない(※メモはもう少し詳しく述べているようなのですが、ちょっと乱雑で自分の字ながら読めない、すいません)」
「自分はまったく映像利用を知らされておらず、H21年の4月30日に友人から『黒岩が映っている』というメールを受けて初めて知った。その後DVDで確認。」
「自分は仲間や、また1人で参拝し、同席した人とどちらともなく言葉を交わし、語り合うこともごく普通。だが話している人たちは記憶にない。」
「映像では自分はまったくカメラを意識していない。妻から『あれだけカメラを意識しないなら、すごい名優だ』と言われた」
「他のシーンの人々は大なり小なりカメラを意識している。黒岩はカメラを認識しており、承認をしているという論法は不成立だ」
「おそらく何かに隠れて撮ったのではないか。どこかに固定されていたのではないか。私たちは盗撮されていたのであり、不快感を覚えている」
「被告は撮影現場の再現写真という証拠を提出したが、神社に聞いてみた。神社がいうには、『裁判には協力するから再現シーンを撮ることをダメとは言わないが、現実問題として8月15日という年1回、もっとも混雑して特別な雰囲気があるところを、平日に来てやっても『再現』できないと思いますよ』とのことだった」
「それに被告は『このカメラで撮った』と主張しているが、それにこちらが気付かなかった以上、隠し撮りの可能性が在る。確かにこのカメラで撮ったとまず示してほしい」
 
■被告の再反論(監督本人の文章)
(これは大半が、映画作品のテーマや意味などを語ったものなので(略))
撮影問題に関しては
「本編を通して一切、盗撮の手法を用いていないということです」
としている。

なお、原告側弁護士に高池勝彦という人がいたが、この人は今年2月に原告代理人を辞めている。

解題

はー、つっかれた。これだけの記録をアップした俺を、まずほめて(笑)。


で、感想を言うと・・・あんまり予想よりは面白くない裁判になりそう。
というのは、最初の啖呵と矛盾しちゃうけど、論点があまりに没思想的で、右だ左だの話は基本、無いのね。やっぱ無いとつまらない、っていう意見も分かるよ。
これの争点は結局
「堂々と、目立つ形でカメラを構えて分かるように撮影したんすよ?その時ダメって言われなかったんだから、『黙示の承認』もらったんです」
 
「こっちはそれに気付かなかったんだよ!だから黙示の承認なんて与えてねーし、そもそもホントに目立つ形で構えてたかもわかんねーし。それに使節管理者からの撮影許可取ってないだろ?」


という話。
これ自体は、判決が確定すればそれなりの前例として今後影響があるとは思うけど、私の記憶の限りでも、類似の判決は既に出ていたような気がする。


訴訟記録の中に出てきた
「平成17年11月10日 最高裁 判決」で検索してみる。
でてきたー。
http://h-t.air-nifty.com/ht/2005/11/post_a7dc.html

最高裁判所判例 平成17年11月10日 第一小法廷判決 平成15年(受)第281号 損害賠償請求事件

要旨:
 1 刑事事件の法廷における被疑者の容ぼう等を撮影した行為及びその写真を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とされた事例
2 刑事事件の法廷における被告人の容ぼう等を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為のうち,手錠をされ,腰縄を付けられた状態を描いたイラスト画の掲載は不法行為法上違法であるが,その余のイラスト画の掲載は違法ではないとされた事例

ほかにもあったような気がするな。
詳しい方は教えてください。
ま、いずれにせよ、この裁判部分は「靖国」をめぐる一連の騒動において、そういう前例や判例があったとしても最重要部分であることは変わらないと思います。

だれか、時間に余裕がある人がいたら、27日午後2時からの法廷(東京地裁)を見に行ってくれれば幸いです。


<参考>

勝手に撮るな!肖像権がある!増補版

勝手に撮るな!肖像権がある!増補版

映画「靖国」上映中止をめぐる大議論 (TSUKURU BOOKS)

映画「靖国」上映中止をめぐる大議論 (TSUKURU BOOKS)