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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「非実在青少年」問題で記者会見にも出た呉智英氏は、同一方向でさらに過激な主張もしている

里中氏で思い出したのだが、タイトルのとおりの問題がこの前ありました。話題になったり、ネットでも運動があったのに遅参申し訳ない。まだ問題自体は続いているんだっけ。

このとき、漫画家や評論家が集まって会見を行い、なかなかの影響力があったように感じているが、そこにも里中氏は出席してそつのない説明をしていた。上のエントリではギャグを書いたが「ランディ・クゥートァ1人が、MMA野蛮論への一番の反論だ」というように、こういうのはやっぱり世間に届く人材が必要になるんだろう。

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(続きがあり、動画は計3本のようです。呉智英は上のリンクで発言)

実をいうと、わたくしが本気でこの問題の関連記事を読み始めたのは、この会見に「呉智英」という名前があったからだ(そういうふうに、ファンがそれぞれいる人が集まって会見すると注目は高まるのだ)。
呉智英氏の議論は、約20年前か?有害図書の問題が一回持ち上がったときもほぼ同趣旨のことを言っていて井原西鶴好色一代男」を持ち出すところなども同じでファンにはにやりとさせられる。
あっ、そうかこれを再掲載したほうがいいか。

【再掲載】不謹慎にして不道徳な作品をどう観るか。呉智英が古典を引用し語る(2007年12月05日付)

BSマンガ夜話」第一夜(真説ワールド・イズ・マイン)を、後半部分見逃していたのでビデオで再視聴したのだが、その中で、この作品がNHKで論じるのもギリギリであるような残酷描写、殺人描写の多い作品であることに対し呉智英が触れていた。

それで一言言うとさ、突然BSから教育テレビに変わっちゃうけどさ(笑)。
これ暴力シーンさっきから出ているでしょ。良識家の人が「こういうのは…」とか言う。

(略)大学でこういうのを扱うときもいってるんだけどね、こういう、ある意味けしからんマンガなわけですよ。そういうものをどう考えるかっていうときにね、ふつう言論の自由とか表現の自由なんて言うけど、俺ね、そういうバカなこと言いたくないから(笑)、いつもね俺、本居宣長のこういうのを引用するのね(笑)。

本居宣長の歌論、文化論ですね、うた論。

(歌の中には)
政のたすけとなる歌もあるべし、
身のいましめとなる歌もあるべし、
また国家の害ともなるべし、
身のわざわいともなるべし

ってんだよね。で、そういうものがあっても人間の真実が描かれているものは芸術であり文化であるって、本居宣長が言ってるんだよね。

文化と政治的、社会的な善悪(ポリティカル・コレクトネスと言い換えてもいいだろう)は別であり、性や残酷などで不道徳きわまりないものでも、文化的な価値がそこに存在する、との呉智英の主張は広く受け入れられるのではないか。

さて本題。

ところで、呉智英は80年代後半か90年代初頭にかけて「コミックボックス」という雑誌などで漫画評論家石子順(その後大学教授にも)という人と激しく論争した。
多少話題がマイナーであることや、漫画論の単行本を、呉智英がその後「ダ・ヴィンチ」連載コラムをまとめた本以外は出していないこともあり、たぶんその論争の文章は書籍化はされていないと思う。

で、石子氏という人はけっこう「子供の健全育成」的な立場から、「悪い表現」に批判的な立場をとり、そこも呉氏は批判の対象とした。論点は上のような主張だが。

で、方向性は同じながら、さらに過激な仮定とそれへのスタンスを述べている。

たとえば朝鮮人虐殺のおもしろさ、を表現した漫画があって、その表現に見るべきところがあれば、その文化的な価値は評価する、というのが私の立場だ。

約20年前の言葉だがほぼ趣旨は間違いない。
(たぶん実家を探すと、現物のコピーも見つかると思う)
コドモゴコロに「うわー過激なこといってるなこの人」と思ったし(笑)、石子氏も反論文の中で「なんてひどいことを言うんだこの人は」的にここを引用して批判していたからね。

しかし、今回の都条例の話を、「すでにある規制で十分」とかそういう理論に依拠するんじゃなくて「書かれている内容が反社会的でも、文化的価値は別にある」という理論だったら、ある意味、論理を突き詰めていくと必然的にこうなる。幕府が自らへの忠誠心を高めるため朱子学を奨励したら、突き詰めていくと尊王攘夷論になっていったようにだ。

ま、政治的な果実を得るためには、あそこに並んだ文化人・知識人の過激発言や、相互のかつての批判の応酬とか(また多いんだこれが)は今んところスポットライトを当てないのがいいかもしれないが、都の職員が「見えない道場本舗」を読んでいるわけもないので(笑)、ここでなら書いてもいいでしょう。

しかし原理的に突き詰めた上のような例、みなが突きつけられたら。もっとも、そういう形で政治的に大問題なものは多くはその刺激に頼って、安直なものになることも多いのだろうけど。

これも何度か書いたけど、政治的な正しさと文化的諸価値の持つ矛盾は呉智英がずっつ追求してきた大テーマ。で、いくつかの本の中でもっとも例を挙げて論じているのは

危険な思想家 (双葉文庫)

危険な思想家 (双葉文庫)

であります。何度か紹介してた。

■「ビキニ」について(呉智英の本から)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080821#p6
■国家権力が再び宗教弾圧を実施。日本で。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080212#p3
呉智英氏、大江健三郎氏「沖縄ノート」で部落解放同盟に公開質問状!!・・・のひそかな先駆者が当ブログです(笑)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071201#p7