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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

なんと銀英伝が、中国で(発禁もされず)翻訳出版されてた・・・と、あの福島香織が報告(2007年の文章)。

上のエントリを書く際、ライトノベルに関していろいろ単語で検索していたら、こんな3年前の文章を発見した。

それも貴方、書いているのが”あの”福島香織やがな!!
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/111766

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なつかしの「銀英伝」、中国で堂々出版

2007/02/09 22:03

 ■どうやら産経新聞およびEXはガンダム男子世代の読者層をターゲットに据えているらしい。紙面でもガンダムネタが多いし、ブンカブにはガンダム担当記者もいるようだし。まあ、私もガンダム世代、ガンダム関連記事にノスタルジー感じる。だが、もし個人的に若い世代に受け継いで読んでほしいサブカルチャーをひとつあげよ、というなら私は、ガンダムより『銀英伝』(銀河英雄伝説)をあげたい。


 ■なぜ、いまごろ銀英伝??いや、最近の中国の文芸作品発禁状況をしらべようと、本屋にかよっているうちに、こんな風景をみかけて、思わず小躍り。どーっと、青春の思い出(おおげさ)がよみがえってきたのだ。

平積み!銀英伝♡ 道原かつみの挿絵つき



 ■銀英伝と聞いて、きっとこのブログにいらっしゃる方は意味がわからないだろう。きっと今の若い人もほとんど知らないだろう。田中芳樹著「銀河英雄伝説」という私が高校から大学にかけて夢中になったジュブナイル(青少年向け小説)のことである。もう、20年も前のこと。しかし、ジュブナイルといっても、おそらく、これほど完成された日本人によるスペース・オペラは銀英伝の前にも後にもない、と思っている。。それが、昨年夏から、北京出版社系列の北京十月文芸出版社が、ちゃんと徳間書店から正規の版権を買って、中国語で出版されていたのだ。


(略)

 ■というわけで、今日のエントリーは、知らない人にはぜんぜんおもしろくもない〝銀英伝語り〝・・・・


おもわずごっそりと紹介してしまいましたが、後半も続いている。
ちょっと気になった話を箇条書き風に抜粋する

・「銀英伝」全10巻は実は96年に台湾で翻訳出版され、それがネットや海賊版により中国に流入
・銀英伝に影響をうけた中国若手SF作家もたくさんおり、というか、宇宙を舞台にした中国SFで銀英伝の影響を受けていない作品はない、とまでいわれている。
武侠ファンタジー「誅仙」の著者の蕭鼎なども、銀英伝崇拝者
・主役のひとり、ヤン・ウェンリーの名を楊威利 (ヤン・ウェイリー)に変えていた
・銀英伝は「三国演義」や「史記」など、あきらかに中国古典を底本にしたような、エピソード、作戦、人物造形がある。
・「私が文章を書いている紙は、2000年前、東漢蔡倫が発明したものだ。私は少年時代、西遊記水滸伝三国演義史記を読み、物語と歴史の妙味を知った。私は中国文化の恩恵を深くうけた。今、私の作品を中国で正式出版することで、中国文化に少しでも恩返しができるなら、こんな光栄なことはない。・・・」
・主役のひとり、ヤン・ウェンリーは、明らかに中国人。もう、中国人の自尊心をくすぐる設定なのである。
・中国では、銀英伝をして「謀略小説」「政治教科書」との評もあるのだ。
・中国SF作家・星河の銀英伝論評「写実の伝説」に・・・「作者は意図せず自分の文化背景を作品ににじませている。特に専制と民主(の長所と欠点)を同様に指摘している。これは東洋の思想の影響」
・(コメント欄)阿比留瑠比 さん 「私も何度か読み返しました。今でも本棚にあります」
・(コメント欄)創竜伝は銀英伝よりまえに、すでに中国で出版されていました。ネットでも大人気です。

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わたくしが驚いたことはいくつかありまして、やはり基本的にSFとはいえ「民主共和制vs専制国家」というようなテーマを描いている作品が翻訳出版されている、ということです。
それほどまでに中国もリベラル、自由になったということかもしれないし、怒涛のような商業化、経済第一主義の中では、輸入翻訳エンターテインメントの思想性なんぞにいちいちかかずらわってはいられない、という、ルーズでいい加減になることが結果的な”自由化”になっているって面もあるでしょうな。
だいたい現在、情報の流通量自体が文革時代とは違って爆発的に増えている。よっぽどあからさまで具体的な体制批判を取り締まるだけでも精一杯、という部分もあるだろう。
それに、上の作家の言葉のように「民主主義体制が絶対に正しく、勝利するとは限らない」というふうに当局はテーマを読み違えたのかもしれない。

さらにいえば、
「作者が思うほど、キケンな本では無かったよ」という皮肉な結果かもしれない。産経の中でも保守的な阿比留氏が「わたしも読み返したし、本棚に今もある」というし、麻生太郎が漫画版を読んでいることも以前紹介した。


なんにせよ、わたしはこういう状況自体は大歓迎であります。わたしは中国当局以上にこの作品の”毒”は評価していて「和平演変」の引き金ぐらいにはなってもおかしくないと思っている。昔、これに類似した「チャイナ・イーグル計画」という構想を考えたことがあったが、今度機会があれば書いてみよう。

あ、そういえば創竜伝は基本、日本の政治が風刺対象だが、連載中に天安門事件があったから、それへの作者の(地の文での)批判があったり、中国に投獄されている政治犯が登場したりしてたはずだが・・・そのへんも翻訳されているのかな?
いやいや、そのへんをぼかした翻訳が、正式出版されていたらそれはそれで「田中氏や『らいとすたっふ』はそれを了承したのか? 勝手にカットされたのか?」というスキャンダルになるぞお。「田中芳樹を撃つ!」の初期レギュラーとしては一寸興味があるなぁ(私自身は調査不可能だけど)。逆にちゃんと翻訳してたら拍手喝さい。


そもそも六カ国協議中に、こんな文章を書く福島氏がすげぇ

今日のエントリーは、知らない人にはぜんぜんおもしろくもない〝銀英伝語り〝。6カ国協議中は、プレスセンターに張り付いてばかりで、時間をもてあましぎみなので、趣味に走ったブログかいちゃう。

さよか。


ま、それはともかくだ。ライトノベル界隈ではまさに氏は仰ぎ見るような巨星として、後進作家から限りない尊敬を受けているらしいことはわたしのほうにも伝わってきているのだが、1982年から1987年にわたって出版された、田中氏の数少ない完結シリーズである「銀河英雄伝説」は、既に30-20年前の作品。最初の読者は社会でそれなりの地位を持っている人も出ているだろうし、作品の性質上、それで政治・外交・軍事・経済・歴史・中国などに興味を持って、たとえば大学の専攻に影響を受けたという人も、福島氏と同様にかなりいると思われる。(たぶん、この作品で宇宙科学に興味を持つ人は少ない(笑))

クラウゼヴィッツの「戦争論」とマキャベリの「君主論」などを手にとるきっかけは、私の場合、正直言って「銀英伝」であった。

ただ、まだそういう人が自分がたりをする場がたくさんあるわけでもないし、やはり大きく言えばライトノベルジュブナイルとされるものだから照れがあるかもしれない。
ライトノベル業界以外で「田中芳樹の小説に、銀英伝に影響を受けました」と語る著名人は多くない・・・と思うので、今さらながら驚いて紹介したしだいだ。しかし、こういう文章をあっけらかんと書ける福島香織、やはり野(失業)に置いておくには惜しい人材だ(笑)。