と、いう話。
・・・その前に、是枝監督の「そして父になる」では、ピエール瀧氏が重要な役で出演していたとか。(見たのに忘れてたなあ。ブルーリボン助演男優賞をこれで獲ったんだって)お見舞い申し上げつつ、明確にこういう理由でこの作品が自粛やカットされるのに反対します。
さて本題、くしくも「カット」の話だ……
まずはそもそも、中国でこの作品が大人気だった、という話を。
慶賀のいたり。
だが…
そういえば「万引き家族」中国公開バージョンしか見てない私に中国学生が最近「あれ途中で削除されているところがありますよ」と教えてくれた。通常は私が、中国学生にそういう話をするのに、今回は立場が逆なのでとても新鮮な気持ちを味わった。 https://t.co/91JZ4PhNoK
— tachibana jin (@jin00001) 2019年3月7日
いや、まず大前提として、どこの部分が、どの理由でカットされてるかわからんで?
単純に配給会社が、たとえば「上映時間120分はキツイ、95分にして一日5回転させたい、その方が儲かる」とか、あるいは当局がらみの規制にしても、喫煙やヌード・シーンなど、それほど政治的とは言えない部分かもしれない(とはいえ、この是非論こそ自由の問題に直結する、と考える人もいらっしゃろう)。
そこがわからないのですよ、今回「万引き家族」が中国で、どの部分をカットされたか。ご存知のかたは教えてください。
だが、……ひとつの仮説として「もし中国の『当局』が『万引き家族』の中国上映にあたり、『検閲』によって一部をカットしたら。特にそこに、思想・政治的な意味が強かったら」という話を考えてみたい。
紹介したツイートに、自分はこうブクマした。
tachibana jin on Twitter: "そういえば「万引き家族」中国公開バージョンしか見てない私に中国学生が最近「あれ途中で削除されているところがありますよ」と教えてくれた。通常は私が、中国学生にそういう話をするのに、今回は立場が逆なのでとても新鮮な気持ちを味わった。 https://t.co/91JZ4PhNoK"b.hatena.ne.jpもし本当に中国公開版でカットされてるところがあったら、是枝裕和監督はそれを了承したのだろうか?が気になった。
2019/03/08 10:07
まず、監督がたとえば「俺は映画の職人。政治がどうこうとか、そういう話には興味ないね。多くの人に俺のエンターテインメイトを見てもらう、それがいの一番の話、最優先さ!」という人だったら、どこでどう”圧力”を受けても、まあ整合性の問題はないだろう。
問題は、こういう問題についていろいろ語っていて、特にそういう統制社会的なのに対して批判的であろう、という人だった場合だ。……だから「是枝裕和監督」の作品が中国でカットされた、という話に「んんっ?」と思ってしまったのだ(笑)
さて実際、是枝監督は、
この中国上映でのカットを
・知っている。別に怒っていない。
・知っている。激おこ
・知らない。 知っていても了承した。
・知らない。知っていたら激怒し、拒否した
のどれなんだろう?と。海外配給に際し、カットの(拒否)権限みたいなのが監督さんには無いのかもしれないけど、たとえばそれに対して「遺憾です」とか「検閲に反対します」とか「当局を軽蔑します」とか、あるいは逆に「気にしてません」「むしろより良くなった」とか、そういう感想(および事実関係)を聞きたいと思うのです。
叛骨か、妥協か
たとえば現在の中国体制下に、自分の作品が翻訳される自由世界のアーティストも、これだけ中国が豊かになり、文化にも多くの層が受容するようになったいま、増える一方だろう。
で、その場合、今現在の中国「検閲、規制」に対して
「それを批判、拒否する叛骨」か「それを受容してでも見てもらって、私のメッセージが一部でも民衆に伝われば…」となるのか、これはなかなかに難しくはあろう。その一方で、「母国では威勢がいいのに、ずいぶんと中国の『お上』に対してはしおらしゅうござるなあ」という皮肉のひとつを言われても、そりゃしょうがない、という人もいる。
blogos.com
今回の是枝監督の「万引き家族は中国で一部が削除されている」とはどんなものか、監督本人はどう思っているのかは、そういう点でいささか興味あり。
そしてきのう「創竜伝」の執筆再開の情報が伝わった、田中芳樹氏にも同じことはいえる(笑)
なにしろ原作がこんど「中国で映画化」されるのだから。
m-dojo.hatenadiary.com
てか、創竜伝も中国ですでに人気であり、翻訳も出ている。
ここのコメント欄をご覧あれ。余談だが、阿比留瑠比氏が銀英伝を
阿比留瑠比
2007年2月9日 11:23 PM
私も何度か読み返しました。今でも本棚にあります。
と褒めていて、イデオロギーとエンタメ・サブカルチャーのある意味の無縁性を象徴している気も(笑)
それはともかく、中国の「創竜伝」人気。
kaorifukushima.com
福島香織
2007年2月10日 1:00 PM
To hiroponさん
創竜伝は銀英伝よりまえに、すでに中国で出版されていました。ネットでも大人気です。新京報の書評によると、この作品は、日本政治への痛烈な風刺に満ちており、その激しさ深さは他作品と比べようもなく、自称・文部科学省役人が田中氏に「今後、日本という国をもっともすごい国に書いてほしい。政治家ももっとパーフェクトに描いてほしい」と嘆願の手紙がきたほど、と解説されています。田中氏は自分の作品が過激な風刺に満ちていることについて、「確かに考え方が著しく激しく、普通の児童書(ジュブナイル)とはずいぶん違うが、ユーモアという衣をつけることで説教臭くなくなり、まるで年取ったアングリーヤングマン(怒れる青年、憤青)が可愛くぐちをこぼすようなものだろう」と言ってます。まあ、安保闘争時代を経験した昔の憤青たちが、かわいいぐちをいうぐらい、いいじゃないか、ということらしいです。
これを読んで、中国の愛国主義「憤青」は、さて、どいうった感慨を持つでしょうか。もちろん、日本バッシングに利用しようと思えばできるのですが、私は、こんなにあからさまな政府批判を青少年向け小説でやってしまい、それが大人気になっても、発禁処分にならない日本の出版界って、おおらかでしょ、と中国人に自慢したいくらいです。きっと、中国の若者も、日本っていい国、と思うのでは。むしろ、ユーモアをもって風刺することすら許されない中国の政治の暗黒の深さ、大きさに思い至るかもしれません。
個人的には創竜伝は、いまひとつ夢中になれず、4巻から先はしりません。田中氏の作品については、銀英伝だけが突出している気がします。このことについては、中国の書評も同じことをいっています。覇王別姫一本で不動の地位を気づいた陳凱歌監督みたいなものですかね。
となると…、いま検索しても原文には当たれなかったが、どうも8巻にあるらしい、「地の文」で天安門事件や中国共産党の腐敗を糾弾したくだりは公式翻訳においてどう扱ったのか。これ、以前から気になっている課題だが、まだ未解決。
こんなまとめもあり。
togetter.com
マネジャーさんが、公にこう広言しているのだから、まぁそうなんだろう。
中国での検閲を、リベラルを自称し、自国では声高に語る人が商売のために唯々諾々と受け入れてるじゃねえか!!という話は、もちろんハリウッドのほうが本場である。
www.businessinsider.jp
ハリウッドの制作者が中国の観客や検閲を無視すれば、売上的にはマイナスになる。それほど中国マーケットの影響力は大きくなっている。「made in China」はコスト削減の手段からマーケティング戦略へと変わる。今後も市場が成長すれば、新たに制作される作品は単なる「made in China」ではなく、より「made for China」へと変わっていくだろう。中国マーケットへの関心が高まれば、グローバルマーケット向けのコンテンツも中国を意識せざるを得なくなる。ハリウッドが中国向けのコンテンツを制作すれば、ストーリーやスクリーンに登場する人物に多様性が生まれるというメリットもある。しかし、中国マーケットをより重視することになれば、中国当局の検閲に通りやすいコンテンツが増えることになるかもしれない。結果的に作品は変化してしまう。これは中国に限らず、他のグローバルマーケットにも言える。
中国資本はハリウッドに実質的な影響力を持ち始めている。
www.cinematoday.jp
熱心なチベット仏教徒かつ人道主義者であるリチャードは、1993年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めた際、台本を無視し、中国によるチベット抑圧は「恐ろしく人権が侵害された状態」だと非難。激怒したプロデューサーにオスカー出禁に…
…事実上のハリウッド追放状態について「中国が『彼が出ているならダメだ』と言うだろうからということで、僕が出演できなかった映画はもちろん何本もある。最近も、僕が出ていたら中国を怒らせるだろうから、出資はできないという話を聞いたばかりだ」と淡々と明かした。
情報 コメント欄より
J
『万引き家族』は日本版も中国版も見ていないので恐縮ですが、中国の各種サイトを見ると中国上映版は4、5分間カットされているようです。
https://movie.douban.com/review/9557082/
上のURLでどこがカットされているのかメモしている人がいます。1.風俗店?で働いている亜紀とお婆さんの会話、及び風俗店での彼女と他の女性の会話。
2.夫婦の激しいセックスシーン?と会話。
3.浴室で安藤サクラがリリー・フランキーの体を洗っているときの、リリー・フランキーの背中とその際の会話。映画を見ておらず、あくまでも中国語の文章を翻訳しただけなので、こういうセリフがカットされていると具体的に指摘できませんが、こんな感じのようです。