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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「コラムのきりぬき」

同じようなことは今までもやってきたが新企画として。

三遊亭円楽さん逝去

  ▼最後は進退をかけた一席に納得がいかず、同じ舞台から引退を表明する。この引き際に小欄が触れたところ、取材の同僚に「あたしは幸運です。死んだわけでもないのに天声人語にまで取り上げられた」と語った。師匠円生の訃報(ふほう)が、直後に死んだパンダより小さな扱いだったことを引いての洒落(しゃれ)である▼冗談とはいえ、言葉の達人から随分もったいない「お返事」だった。次はこうして、不本意ながらご自身が読まない日に載せる巡りとなった。落語界にまた、大きな座布団がぽつんと残された

松井秀喜、WシリーズでMVP

7年前、大リーグ挑戦を決めた松井秀喜選手は、記者会見で一度も笑わなかった。「何を言っても裏切り者と思われるかもしれないが、いつか『松井、行ってよかったな』と言われるよう頑張りたい」。そう、本当によかった▼(略)4年契約の最終年、新装のヤンキースタジアム。野球の神様は、最後の最後に「マツイの日」を用意していた▼辛口で鳴らすニューヨークのファンが総立ちでMVPコールを送る。くしゃくしゃの相好で大男たちと抱き合う姿に、そうか、7年分の笑顔なんだと納得した

ゴジラは英語で「GODZILLA」と綴(つづ)る。神様(GOD)が愛称内の神殿を留守にし、バットに、それも真芯に降臨したかのようである(略)◆〈天才とは際限なく苦痛に耐えうる能力をいう〉。名探偵シャーロック・ホームズが「緋色(ひいろ)の研究」で語った言葉だが、この2人を見て深くうなずく◆膝の不安はいまも抱えたままと聞く。GODさま、愛称内もバット内もしばらくは留守にして、オフのあいだは膝のほうにお宿り下さい――と、ファンに成り代わって祈っておく。

余録:松井秀喜選手のMVP

 1985年のことだ。ニューヨーク・タイムズなどが米国で行った世論調査で、知っている日本の有名人を挙げよという項目があった。挙がった名のベスト3は昭和天皇ブルース・リー、そしてゴジラだった▲天皇以外は、香港の俳優と映画の怪獣という結果だ。批評家は自動車や家電製品が米国市場を席巻しつつあった日本への米国人の無知を嘆いたが、ゴジラが日本を代表するキャラクターとして浸透していたのも分かった(W・M・ツツイ「ゴジラアメリカの半世紀」中公叢書)(略)▲もしも日本人の名を挙げる調査が今行われても、ゴジラと答える米国人は多いかもしれない。だが、それは回答者が日本人を知らないからではなく、ヤンキースを9年ぶりの世界一に導いた選手の恐るべき力をその目で見たからだ。

レビストロースさん逝去

▲人類学者として未開社会にも人間の社会としての独自の秩序や構造を見いだしたレビストロース氏だ。それは未開から文明への「進歩」を称揚する西欧中心の思考の根本的見直しを迫り、20世紀の知的世界に地殻変動をもたらすことになった。その100歳での死去が伝えられた▲前半生はまだ非西欧文明が野蛮とさげすまれた時代である。だがその生の最期では、地球上のあらゆる文化は相互に独自性を尊重しあうべきだとされる時代を見届けたはずだ。その巨大な変化をただ知性の営みにより導き出した生涯だった

中島みゆきさん紫綬褒章

中島みゆきって、いくつなンだろ」◆テレビドラマ「北の国から」(脚本・倉本聰)第16話のひとこまである。(略)中島さんの「異国」を口ずさむ。〈忘れたふりを装いながらも/靴をぬぐ場所があけてある ふるさと〉。こういう人生の陰翳(いんえい)を歌にできる人は何歳なのだろう、と◆ドラマの放送は28年前、歌が作られたのはさらに前、中島さんは二十代である。ひとの何倍も生きてきたような、ありとあらゆる心の傷を経験したような、当代の“歌姫”には不思議な趣がある◆中島さんが紫綬褒章に選ばれた。驚きはボタ餅以上、棚から本マグロでございます ――と、喜びのコメントにある。「わかれうた」「時代」「悪女」「地上の星」…記事を読みつつ、唇によみがえらせたメロディーは人さまざまであったに違いない