http://www.cinematoday.jp/page/N0021615
『シャーロック・ホームズ』著作権者が激怒!続編でホームズとワトソンの“ゲイ疑惑”に触れたら映画化の権利を剥奪
WENNによると、映画『シャーロック・ホームズ』でホームズを演じているロバート・ダウニーJr.は、・・・(略)ホームズとワトソンの同性愛が背後に描かれているとコメント。これがアメリカでの著作権を持つアンドレア・プランケットの怒りに触れたらしい。もし、続編でリッチー監督がホームズとワトソンの関係が友達以上のものであることを少しでも匂わせた場合、映画化の権利は剥奪するとコメント・・・(略)。
「(略)……彼らが将来的作品で同性愛のテーマに触れた場合、映画化は撤回します。わたしは同性愛者に敵意を持っているわけではありませんが、シャーロック・ホームズの本の精神に忠実ではない人には敵意を抱きます」とアンドレアはコメント・・・
まず根本的にびっくりなのは、アメリカではホームズの著作権がまだ消滅していないことだ。あっ、そうか。ミッキーマウス保護のおこぼれで、かの国ではホームズ著作権はまだ続いてるのか!
これを参照。
シャーロック・ホームズから考える再創造1
三菱UFJ リサーチ&コンサルティング芸術・文化政策センター
主任研究員 太下義之
http://thinkcopyright.org/Ooshita-Homes.pdf・・・著作権は遅くとも1982 年には消滅し、パブリック・ドメインとなるはずであった。
しかし、1976 年著作権法により、著作権の保護期間は著作者の死後50 年までとなったが、この際に旧規定との整合性を図るため、1923 年から1949 年に発行され、適時に更新申請されていれば公表時から起算して75 年間(更新していなければ公表後28 年)、を著作権の保護期間とした。そして、既に死亡した著作者の配偶者、子供、または孫が一定の手続きを執り行うことによって、その権利を取り戻す権限を与えた。
そこで1979 年、コナン・ドイルの長女Jean Lena Annette が、その手続きを執り行って、米国における彼女の父の著作権を復活させ11、著作権管理のための財団Dame Jean ConanDoyle's Estate を設立した。
(略)そしてさらに1998 年に成立した「ソニー・ボノ著作権保護期間延長法」によって、著作権の保護期間は20 年延長され、現在の保護期間である死後70 年まで(最初の発行年から95 年まで)となった。
具体的には現行法のもとでは、同書の中で三番目に古い作品「這う男」は初出が1923 年であるので2019 年末まで、同じく公表された最後の作品「ショスコム荘」は初出が1927 年であるので2023 年末まで著作権の保護期間となっている。
なお、1997 年にJean Lena Annette が死亡した後、コナン・ドイルの甥であるCharles
Foley が同財団の管理執行者となり、今日に至っている。
自分のツイートを、140字制限抜きでちょっと補足しつつ紹介。
「作品世界の著作権保持者として、勝手に登場人物同士が(同性愛の)恋愛関係だなんて表現されるのは不愉快、認めない」という話は・・・各段階で切り分けにゃーいかん部分があるのだが、以下は半分冗談、半分本気でいうと「田中芳樹にこの問題でインタビューしてくれ」と。
(※なぜかというと、田中芳樹は自分の小説をそういう目で見られることについて、はっきり不快感を表明しているからです。まあ「作者に送ってくるな!」というのを含めてですが(笑)。「銀英伝」外伝3が初掲載された別冊本のインタビュー参照。)
正直、ホームズだからこそ圧倒的にその後のパロディ・二次創作の歴史があるし、常識的に著作権が切れたと思ってるから「堅いこというなよ」もしくは「カ、カテエ…まるで溶岩石のように凝り固まったホームズ著作権者のアタマ!!」だが、喩えば「ゴジラは核への恐れや怒りが背景にある!それを描写しない安易なモンスターものは認めません!」とか、権利者やその遺族がいったら内心で拍手するかも。
まあ実際、それに類する裁判がいま進行中だ。http://blogos.com/article/25808/
http://blogos.com/article/25844/
結局のところはルールで処理するしかないんでしょう。
ホームズの著作権が日本では消滅している以上、同性愛的に描こうが麻薬中毒者に描こうが(つうか実際にそうだわな)自由。著作権が存続している国では、そうである以上は、その権利者がある程度口を挟むのは認めざるを得ない。
そのクレームがぐっジョブか、トホホかとは別の話として存在するのだと。
「キャラクターの著作権」がまた微妙でね。
本多家と東宝の「ゴジラ」裁判では、映画としてのゴジラ(第1作)の著作権とは別に、ゴジラという『キャラクター』の権利を当初は争おうとしていたが、直前に回避された。
今回の裁判では「ゴジラのキャラクター権」そのものは争われていない。提訴直前の今年10月、本多フィルムは「ゴジラのキャラクターに関する著作権」の主張は撤回しているからだ
http://blogos.com/article/25808/?axis=&p=3
映画著作権は1954年の初公開後、70年に延長されているわけだが、
「1954年の映画」は保護されるとして「その映画に登場したキャラクター」はどうなんでしょうね????映画は視覚芸術だから、あのセビレのついた恐竜っぽいアレはやっぱり映画と一緒に70年に権利が延長したのかな?
『ゴジラ』より怖い、その著作権(2)
東宝は、「○○zilla」という接尾語の使用にも目を光らせている(ゴジラという言葉はもともと、日本語の「ゴリラ」と「クジラ」を合わせた言葉だ)。例えばユーモアサイトの『Davezilla』(ロゴは上の写真)はその使用をあきらめた。ただし東宝側は、その使い方や営利目的かどうかなど、ケースバイケースで判断しているという
「○○ジラ」も東宝の権利だというのだ。
うーむ。その一方でこういう判例がね。
「一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできないからである。」
これも引用した、くわしい判決。
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200601/jpaapatent200601_057-059.pdf
以前に書いた文章。
■キャラ、人物を借りてストーリーは全くオリジナルの「二次創作」が持つ著作権問題は?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080510/p3
でも、これがOKとなったら、それこそ原作にはない「ホームズとワトソンが同性愛者で・・・」というほうが野放しになり、原典に依拠し、忠実なストーリーのほう(のみ)が問題になるわけで(笑)
結論としては…この前もかいたが、「ブロゴス」は裁判の途中経過も含めて、この記事(http://blogos.com/article/25808/)の続編をぜひ載せるべきであると。強く要望せり。
おまけリンク集
※シャーロック・ホームズ&アルセーヌ・ルパン関連
■架空対決「るろうに剣心vs新撰組vsアルセーヌ・ルパンvsシャーロック・ホームズ」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120322/p4
■シャーロック・ホームズと柔道(バリツ)とそのへんの事柄のための資料
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090312/p1
■森田崇先生の「ホームズ(ハーロック・ショームズ)の描き方について」(他リンク)
http://togetter.com/li/219597
■アバンチュリエ&今年は「シャーロキアン誕生100周年」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111121/p3
森田崇「アバンチュリエ」でルパンと対峙する英国探偵は「ホームズ」か?キャラ対決の古典
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111022/p2
■「翻訳blog」作者がホームズ本出版。その他新作ドラマや俺的研究など
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110911/p2
※BL関係
■なぜ「BL」という文化・フィクションが好まれるのか?を徒手空拳でゼロから考えてみる。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110127/p3
■著作権関係
めんどくさいのでまず「著作権フリー」で日記内検索をしていただくと関連が結構出てきます。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%C3%F8%BA%EE%B8%A2%A5%D5%A5%EA%A1%BC