「日本の近代」シリーズの1を読んだ。マツケンこと松本健一(俺にとって)の本を読むのは久々だ。
大学時代、まとめて彼の本を読んでいたこともあり、意外な事実というよりは「おなじみマツケン十八番」を堪能するといった趣でありました。
ただ、この本では幕末の志士たちの遺した漢詩や当時の川柳が、そのまま載せられている。
それをいくつか紹介したい。正確にいうと、探せばネット上にあるので、この本をもとに検索した結果をお伝えする(笑)
吉田松陰がペリー艦隊への密航を計画した際に、佐久間象山が贈った漢詩
http://bakumatu.blog82.fc2.com/blog-entry-668.html
佐久間象山送別詩
義卿を送る
之の子霊骨あり、久しく蹩躄の群を厭う。
衣を奮う万里の道、心事未だ人に語げず。
則ち未だ人に語げずとも雖も、忖度或は因るあり。
行くを送って郭門を出ずれば、弧鶴秋旻に横たわる。
環海何ぞ茫々たる、五州自ら隣を為す。
周流形勢を究めよ、一見は百聞に超ゆ。
智者は機に投ずるを貴び、帰来須らく辰に及ぶべし。
非常の功を立てずんば、身後誰れか能く賓せん。
象山平大星
「環海何ぞ茫々たる 五州自ら隣を為す 周流形勢を究めよ 一見は百聞に超ゆ」
(松本訳 広々とした大洋ではあるが、五大州はすべて隣り合っている。その世界を巡って形勢を見極めてこい、一見は百聞を超えるだろう)
この一節なんか、貧乏旅行に出向く若者(含む「自分探し」)にさらさらと書いて、餞別とともに贈るとカコイイですね。
西郷の「文明」論
文明とは道の普く行わるるを賛称せる言にして、宮室の荘厳、衣服の美麗、外観の浮華を言うに非ず。世人の唱うる所、何が文明やら、何が野蛮やら些(いささ)かとも分からぬぞ。
予曾つて或人と議論せしこと有り。西洋は野蛮じゃと云いしかば、否、文明ぞと争う。否、野蛮じゃと畳かけしに、何とそれ程に申すにやと推せし故、実に文明なれば、未開の国に対しなば、慈愛を本とし、懇々説諭して開明に導くべきに、左は無くして未開蒙昧の国に対する程むごく残忍の事を致し己を利するは野蛮じゃと申せしかば其人口を莟(つぼ)めて言無かりきと笑われける。
有名な言葉でいまさら紹介するまでもないが、この本に載っていたのでこれを機会に道場本舗のアーカイブスに加える。