http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20081222bk05.htm
評者は御厨貴氏。
*
歴史に残る「朝・読」共闘
『闘う社説』というタイトルが目を惹(ひ)く。最近なあなあばやりのこの国で、“闘う”という言葉は久しくきかれなかったからだ。二十一世紀初頭の「朝日新聞論説主幹」が、ともすれば空を切りやすくなった言説空間に緊張感を取り戻そうと考えて、社説を軸に闘い抜いた自らの記録をまとめた。
(略)
本書を読めば、確かにこの五年は論争のタネに事欠かなかったことがわかる。北朝鮮問題、イラク戦争、靖国問題、郵政解散、安倍・福田政権論、そして今一たびの憲法論とくる。ここで「朝日」は、「読売」・「産経」と常に“闘う”形となる。他社の論説をかくも意識して議論の応酬をしていたのかと改めて驚く。何といっても面白かったのは、「靖国問題」をめぐる著者と渡辺恒雄読売新聞主筆とのエールの交換である。評者自身が「国立追悼施設」と「富田メモ」とに関わった経験があるだけに、「朝日」・「読売」二社の共闘は、今になって一層意味があったと判断できる。著者と主筆との「論座」対談は歴史に残る読み物となろう。
これに対して「郵政解散」に象徴される小泉改革への論調について、著者がゆれを示すのも興味深い。あの選挙で小泉首相にしてやられたことは事実だ。「戦う男」小泉首相の前に、言論はなす術(すべ)もなかったのだから。もっとも著者言う如(ごと)く小泉改革には、「朝日」を始め多くのメディアが大筋で賛成していたのである。だから「ホリエモン」問題がおきた時、それを容認したにもかかわらず、刑事問題化した時に社説で厳しく批判したことを、「我々もいささか手のひらを返したような印象をもたれなかっただろうか」と、今つぶやく著者の姿勢に賛同を覚える。
第一線を退いた著者には、これからも「社説」の比較検証をやってほしいものだ。
◇わかみや・よしぶみ=1948年、東京都生まれ。朝日新聞論説主幹を経て、2008年3月から同コラムニスト。
講談社、1500円
(2008年12月22日 読売新聞)
さるものは日々に疎し、で下ね木時代は竹島問題などで話題を呼んだ彼も、ブログで紹介されることが少なくなった。
ただ、論説室は「奥の院」であってどういうふなプロセスや議論があるかは普通は分からない。そのへん読んでみよう。
あと、「ホリエモンに対してぶれましたね」、は賛成。佐高信もあんた、ライブドアがフジ(ニッポン放送)を買おうとした時は大応援団だったのだ。筑紫哲也もね。最初はフジサンケイグループで、産経の保守路線なんかいらないよ、と言ってたのも彼らのお気に入りだったのかも。
- 作者: 若宮啓文
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/30
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 68回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
ところで知ったのだが、この人朝日新聞の「二世記者」だそうな。