http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20080908ddm002070155000c.html
発信箱:スモールタウン=坂東賢治
ハリケーンにたたられた米共和党大会だが、最後は盛り上がった。主役はマケイン上院議員(72)よりも同党初の女性副大統領候補、ペイリン・アラスカ州知事(44)。受諾演説に保守層の心の琴線に触れる言葉をちりばめ、ただ者ではないところを見せた。
キーワードの一つは「スモールタウン(小さな町)」だ。人口1万弱のワシラ市の市議2期、市長2期と州知事2年を務めただけ。外交経験もなく、民主党のオバマ陣営だけでなく、メディアも懸念を示し、選んだマケイン氏の資質を問う声さえ出た。
しかし、ペイリン氏は逆襲に出た。演説で両親を含めた小さな町の人々の「正直で誠実な」生き方をたたえ、「スモールタウンで育ったことは名誉」と胸を張った。政治ブロガーの一人は「ペイリン氏はスモールタウンの力を解き放った」と評した。
(略)大接戦だった00年の大統領選。民主党のゴア候補は大都市圏の票の7割を奪ったが、郡部ではブッシュ大統領が圧勝した。面積で比較すれば、ブッシュ氏が国土の8割を制した計算になるという。
マケイン氏も「スモールタウン」の支持は欠かせない。不安を好印象に転化させたペイリン氏は最初の試験に合格した。それにしても次々に新星が現れるところに米国政治の奥深さを感じる。(北米総局)
「発信箱」は文章全体が重要なので、引用の選定にいつも苦労する。今回の(略)部分もほんのちょっとになってしまった。
それはともかく「反ワシントン」とはこういうことなのだろう。
「私は小さなタウンの市長でした」、これがアピールになるということだ。
まあ、それは危険ではあるのだが、ただ、「スモールタウン」だけではなく、そこのメイヤーだったという点も需要なのだろう。
こんな話も思い出す。
デビッド・ハルバースタムの古典ノンフィクション「ベスト・アンド・ブライテスト」はケネディ政権誕生という魅力的な新風の前に、企業や大学から本当に最優秀の人材がワシントンに集まり、史上最強のホワイトハウス・スタッフをつくり…そしてベトナムの泥沼に突き進んでいく物語だ。
この中で、ケネディ政権前からの長老格の大物が、新政権の顔ぶれをみてこういう。
「みな、とても優秀な若者たちだが・・・この中の一人でも、田舎の保安官に立候補した経験のある子がいればねえ」
(http://homepage2.nifty.com/seiyu/monthly153.htmlなど参照)
選挙、というものだけども、あれはやっぱり擬似的な戦争。
あまり認めたくないし、例えば総裁選でいえばニッカサントリーの時代の買収合戦や派閥抗争がいいのかといえば嫌なのだが、「選挙」というのはそれ自体が政治家を鍛える効果があるのかもしれない。
「選挙に強い政治家は、それだけで才能がある人といっていいか?」
難しい問いかけだ。