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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「風雲児たち」とハリスと黄金とをめぐる謎

コミック乱」の最新号が発売されました。
今の時期は、みなもと太郎不本意ながらも坂本竜馬を主人公に、アクション風味を入れて書かざるを得なかった「雲竜奔馬」と重なる部分があるので、その異同がまた興味深い。基本は、分量的に「風雲児たち」のほうが詳しく書ける。

さて、今回は幕末日本の金流出とインフレについて触れているのですが・・・佐々淳行は、ミッドウェー海戦の軍記を読むといつも悔しくてたまらず、「もう一回読むと勝っているかもしれん」と読み直したりするそうだが(笑)、小生も日本史において、この開国直後の金流出に関するくだりは歯噛みして悔シガラザルヲ得ズ(なぜか漢文調)。


ややこしいからここは読み飛ばしてもいいけど、要はこういうこと

・・・(日本の)金銀比価は当時の国際相場(1対15)を大きく上回る1対5(計数銀貨ベース)・・・鎖国体制のもとで金銀比価は国際相場と大きく乖離していたが、開港とともにその矛盾が顕現し、金貨の海外流出の可能性が発生する。
・・・アメリカ側に押し切られるかたちで、洋銀(おもにメキシコ・ドル)と銀貨(おもに天保一分銀)との交換比率は「同種同量の原則」・・・…日本国内での金銀比価は国際相場のほぼ3分の1にとどまっていたことから、洋銀を日本へ持ち込んで一分銀と交換し、これを金貨(天保小判)に両替して海外に持ち出し・・・リスクなしで多額の利益を獲得できることになる。
 こうした金銀流出を懸念した徳川幕府は……海外なみの金銀比価を実現しようとした。しかしこの政策は諸外国からの強い抗議にあい、開港後間もなく中止に追い込まれた。この結果として、かなりの量の金貨が海外へと流出した。

楽に儲かって儲かって仕方ないからヤクザまがいの人々が貿易会社を次々でっち上げ、社号も「ナンセンス商会」とか「フール社」とかあったとか。
これは欧米嫌いの豊田有恒が何回か短編にしているが、もっと決定版に、


大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)

大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)

という本がある。新田次郎賞を受賞した。

この本の中では、この金銀相場の異常は、ハリスの個人的な金銭欲に大きな理由があり、実際に個人的な蓄財をこのシステムの陥穽を利用して行った・・・ということになっている。

ここに同書の書評がある。
http://www6.tok2.com/home/temjin/taikun.html

ミスに付け込んだ確信犯の姓名はタウンゼンド・ハリス。
幕末史では辛気臭い史書にのみ登場資格を有する人物である。
日本史におけるハリスは『面白くない重要人名』に過ぎないが、
1860年前後の『モンロー主義』下に支配された
アメリカに取っては殆ど唯一と言って良い外交成果を挙げた『英雄』だった。
勝海舟随行した訪米外交団が熱烈歓迎を受けた要因でもある)
だが五十の大台を越えたハリスがファーイーストまで出向いたのは
愛国心と名誉への渇望故ではない。
平たく言えばしがない積荷宰領者に過ぎなかった男が
老後の蓄えを得る為に駐日総領事に赴任したのである。


みなもと太郎は、雲竜奔馬の中で貧民のための高等教育機関設立などを紹介、「異文化への理解や尊敬心は薄いが、厳格な理想主義者」という書き方をしているし、そういえば手塚治虫

陽だまりの樹 (5) (小学館文庫)

陽だまりの樹 (5) (小学館文庫)

でもそういう書き方だな。「大君の通貨」だってそもそも小説であるのだし、どんな人物像が史実に近いのか。ウィキペディアのタウンゼント・ハリスもあまり充実してはいない。