その翌日ぐらいから、一面で騒動が続くような大騒ぎになる可能性も半分ぐらいあるかと思ったが、そうはならなかった。海外の反響を報じる報道も小さい。
それは例の強制性の広義、狭義をめぐる二つの話が、日本国内ではそれなりに浸透しているからだろう。
このへんは長く、膨大な議論があるので省略。、
国会で、名指しで安倍首相が答弁した(ちょっとその光景には笑った)相手である朝日新聞の社説も迫力不足、というか、これだとこういう書き方がまあ無難だろう、というものだった。
※安倍が朝日新聞などを名指しする、という点については
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050115#p3
■[時事][TV]NHK問題・・・新しいメディア政治家・安部晋三
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060926#p4
■[時事][政治][TV]「安倍晋三人気」が持つ、強さと弱さ
の2つのエントリで論じているので参照ください。
社説に関しては普通はhttp://massacre.s59.xrea.com/othercgi/shasetsu/で紹介するのだが、今回はこのテーマでの社説比較はまだ来ていない。
「慰安婦」発言―いらぬ誤解を招くまい
旧日本軍による慰安婦問題をめぐって、安倍首相の発言が内外に波紋を広げている。
(略)
首相には「強制性」について、こだわりがあるようだ。それが首相の発言をわかりにくくしている。女性を集めた業者らが事実上強制をするような「広義の強制性」はあったが、当局が人さらいのように連行するといった「狭義の強制性」はなかった。きのう、首相はそう説明した。
だが、いわゆる従軍慰安婦の募集や移送、管理などを通じて、全体として強制性を認めるべき実態があったことは明らかだろう。河野談話もそうした認識に立っている。細かな定義や区別にことさらこだわるのは、日本を代表する立場の首相として潔い態度とは言えない。
(略)首相は政権として方針を決めた以上、要らぬ誤解を招く発言は避けるべきだ。日本の信用にかかわりかねない。米議会に対しては、こうした首相の手紙などの取り組みを説明すればいいことだ。
この論旨は筑紫哲也氏の「多事総論」(http://www.tbs.co.jp/news23/onair/taji/s070305.html )よりはよほどましだし、結局は両方ともあまり大きく変わらずなのだろう(自民党議員も河野談話修正は求めないと決めたそうだ)が、ただちょっと論旨に大きな矛盾がある。それだけ指摘しておこう。
「要らぬ誤解を招く」とは何か。
「安倍首相はいわゆる『軍などの直接的な奴隷狩り』だけを否定しており、『全体としての強制性』『望んでなった人はいなかった』は否定していない。それを慰安婦全体を否定、と受け取られるのは要らぬ誤解を招く」
ということだな。で、安倍氏の『軍などの直接的な奴隷狩りはない』という発言自体は朝日自身も否定していない。
しかし、それなら、米国議会や米国新聞、韓国政府の公式見解、韓国紙の論調として流布されている「軍による奴隷狩りは広範に存在した!!」という議論もまた「あらぬ誤解」じゃないんですか・・・ということだ。
こちらの「あらぬ誤解」に対しては、どう対処していくのか。あるいは放置していくのか。「誤解でもなんでもない」のか。これについては社説は、答えていない。
まあ、実際問題としてもこの誤解を解くのは難しいのは事実だろうが。