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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ギュンター・グラスよ、住井すゑに学べ!!

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060905AT2M0500S05092006.html

ナチス親衛隊」作家グラス氏、告白後初めて公の場に
 第2次世界大戦末期にナチスの親衛隊に所属していたことを告白したドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラス氏は4日、告白後初めて公の場に姿を現し、地元テレビによると「多くの批判にさらされたが、まだ両足でしっかりと立っている」と述べた。

 グラス氏はベルリンで行われた自伝「タマネギの皮をむきながら」(仮訳)の発表会で発言。しかし、なぜ親衛隊所属を隠し続けてきたのかとの質問に対し明確には答えなかった。

後略


「ズバリ聞きますが、あなたの正体はマーク・ロッカですか?」
「ノー・コメント。」

というのもあったから、列伝ファンとしては覆面もかぶってほしかったね。
それはともかく。



ほんとうに気合入ってないっす。とんだシャバぞうじゃねーの?
もっと気合入った人がちゃんといるのだ。グラスはん。この人の「漢」ぶりを見習いなさい。女性だけど。


その名は、住井すゑ

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8F%E4%BA%95%E3%81%99%E3%82%91

橋のない川」の作者である。その他いろいろ、社会問題について発言していた。
さあよく聞きなさい、グラスさん。


彼女は、終戦前にいくつかの作品を書いていた。
「日の丸少女」
「農夫われ」
「佐久良東雄」
「野の旗風」・・・・

ちょっと内容を紹介しよう。

「戦争はありがたい。あり余るものによって却って心を貧しくされがちな人間の弱点を追い払って、真に豊かなものを与えようとしてくれている」(「農夫われ」)




「そうだ!僕もめいよの戦死をとげたおとうさんの遺児だ。ボクも、おとうさんの志をついで忠と孝をまっとうしなければならない!靖国のみ社にまつられたおとうさんの子として、はずかしくない百姓になるのだ!」(野の旗風)

ぷちナショですかね。タカ派ですかね。


んだがまあ、世の中ネットなんてもんもありませんでしたし、わざわざ戦後、名が売れ、社会的地位の高まった住井さんの首に鈴をつける人はいませんでした。90年代まで。

そこで悪いやつ、櫻本富雄という人が登場。彼はテレビ、雑誌と企画を連動し、住井先生に問いただす。
http://www.sakuramo.to/kuuseki/099.html

私がテレビ・ドキュメント番組『文化人と戦争』(MBS)の製作に参画したのは、1993年の春だった。番組は1994年の夏に完成した。局の意向は敗戦50年の番組として翌年に放送ということだったが、時流にのった企画と思われるのを嫌った私の希望で、敗戦49年目の放送(8月15日)となった。

・・・・中略・・・

一部を文字化したものが朝日新聞社の『Ronza』(1995年)や拙著『ぼくは皇国少年だった』に収録されているから、そちらを見ていただきたい。
 このテレビ番組のメインは住井すゑ(『橋のない川』の作者)との対談場面である。長年かけて蒐集した住井の資料整理を始めたのは1975年ころからだ。その一部は大学のテキスト用として出版した『差別・戦争責任ノート』に収録してある。
 住井すゑも鬼籍の人となった。彼女の虚構を告発したドキュメント番組は、深夜にもかかわらず放送された地区(エリア)ではかなりの反響をよんだ。MBSには「年寄りを捕まえてなにごとか」といったものから「人権侵害問題だ」と息巻く投書まであったそうだ。


ここで、戦時中の作品(および戦後の発言、作品との主張の矛盾)を問われた住井先生は何と答えたか。


「何書いたか、みんな忘れましたね」
「商売人ですから、何もないですね。原稿料もらって書く仕事は商品です」
「書いたものにいちいち深い責任感じていたら、命がいくつあっても足りませんよ」
「いちいち責任取って腹切るのなら、腹がいくつあっても足りない」


俺にドイツ語の能力が無いのが残念だ。
あれば、これを翻訳してグラスさんに「こういうふうに弁明しなさい」とアドバイスできたのに。

これだけ侠気に満ち、未来志向(=昔にこだわらない)の発言に対抗できるは、われらがアントニオ猪木しかいないだろうなあ。



「ぼくは皇国少年だった」
http://www.bk1.co.jp/product/1691827