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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

マイケル・ムーアと二大政党。

ムーアの「華氏911」は順調に話題を盛り上げ、日本での興行収益もかなり見込めそうだ。
そして何でも、大統領選投票前に早くもDVDを発売するというじゃないですか。
「この映画は、ブッシュをホワイトハウスからたたき出すために作った」と公言するムーア監督は徹底的に大統領選に向け、一点集中で活動を行うようです。

しかし、そこで問題になってくるのはJ・F・ケリーという民主党大統領候補。

# TomoMachi 『ネットを見回すとそこらじゅうに「『華氏911』は民主党プロパガンダ」という記事を見かけるが、ムーアはAnyone But Bushであって民主党支持じゃないっていつも言ってるじゃん! それに『華氏911』のなかに民主党の政策を支持するメッセージはどこにもない! しかも現在民主党イラク戦争に関してはブッシュの責任を追及せず(アメリカでは反戦を打ち出すと選挙に負けるという前例があるため)、経済に焦点を絞っている。つまり民主党は基本的にブッシュ批判はあまりしない方針なのだ。だから『華氏911』は民主党の方針とまるで無関係なのだが、まあ日本にいるとわからないのも無理ないけど評論家みたいな人までこういうこと言ってるんじゃしょうがないね。』

華氏911』には民主党のケリー候補に投票しろというメッセージはない。
「『華氏911』を作ったのはケリーが候補に決まる以前だからね」とムーアは言う。
「それに僕個人はケリーには投票しない。彼はイラク戦争に賛成票を入れたからだ」
ムーアはブッシュ戦争に賛成した民主党議員を心底憎んでいる。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040719

ムーア ジョン・ケリーのことはわからない。彼とは一切接触していない。この『華氏911』はケリーに勝たせるための映画でもない。だって『華氏911』撮ったのはケリーが民主党の指名候補に決まるより先なんだから。はっきり言いたいのは、僕はケリーには絶対に投票しないということだ。ケリーはイラク戦争に賛成票を入れた。あの戦争に賛成した人間に僕は断じて投票しない。『華氏911』は観客に対して誰に投票しろとは言っていない。僕はブッシュをホワイトハウスから引きずり出せと言ってるだけだ。

(記者席から声が飛ぶ) でも、それには具体的にはケリーを当選させるしかないでしょ!

ムーア あああああ、僕は二つのこといっぺんに考えられないんだ(笑)。ただ、僕はケリーがイラク戦争をどうするつもりなのか知りたい。彼はまだ具体的に何も言ってないだろう?

果たして、ムーアが本当に悩んでいるかといえば、(笑)もあることだし実は本気で悩んでいないと思う。


ブッシュを引きずり落とす=ケリーを当選させる


という方程式は、2004年に民主党予備選が終了して以降はどこをどうみても確固とした公理であって、これ以外の解はないんだから(あるのか?)。

もちろん「当選可能性は気にせず、自分の思想に忠実に投票すべし!」「自分が積極的に推せる候補がいないなら、抗議の白票を!!」という原則論的な行動原理を持つ人もいるが、少なくともムーアは2000年の大統領選挙終盤において、そういう行動から離れている。

(最初、「緑の党」のネーダーを応援していたが、大接戦の状況を見て「ネーダーに投票したら死票になる!ゴアに投票しよう!」と最後に「転向」して訴えた。「アホでマヌケなアメリカ白人」参照。)

ムーアが「ケリーに投票しよう」といわないのは照れ隠し、もしくは
民主党応援プロパガンダ」との反発を食らうことを恐れてのことで、
とうに彼は民主党・ケリーの当選に(結果的に)力を貸すことを覚悟
している。
だからこそ、民主党大会にやってきてあれやこれやのパフォーマンスを見せたのだろう。


宗教右派だって、8年前は中道ドールに不満たらたらながら、「ABC」(Anybody but Clinton
クリントン以外なら誰でも。今は逆側が「ABB」ですな)で応援してたんだから。
「僕は共和党支持者じゃないんだよ」つったってねえ。



日本に目を向ければ自民党だって社会党だって、とくにインテリは
「本心から支持します。基本的に以前からずっと政策に賛成しますよ」
なんていわない。ボロカスにいいつつも、「○○に比べればマシだから」
「XXという政策だけはやってもらいたいから」とか言い訳しつつ投票
しているものだ。そーいうもん


http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040719

イタリアの記者 ラルフ・ネーダーがまた大統領に立候補しようとしていますが、再び反ブッシュの票が割れてブッシュが勝つことになりませんか?

ムーア ネーダーには「ブッシュを倒すために今年は出るべきではない」と説得した。だけど、彼は聞かないんだ。ネーダーはこの国にとって大変な間違いをしでかそうとしている。何が彼をそうさせているのかわからない。先日の調査では若い有権者の12パーセントがネーダーに投票すると言っている。そちらに民主党の票が流れてブッシュが再選されることになれば最悪の事態だ。


さて、ここでぐっと目を日本に、時間をこの前の参院選に。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-07-13/01_01.html

日本共産党議席
比例の 市田、小池、大門、仁比氏

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 第二十回参院選挙は十一日即日開票され、十二日未明に改選百二十一議席(比例四十八議席、選挙区七十三議席)がすべて確定しました。日本共産党は、比例代表で四百三十六万票を獲得(得票率7・80%)、三年前の参院選と同じ四議席を確保しました。選挙区では七現職区すべてで議席確保がならず、比例代表と合わせて改選議席比では十一議席減となりました


もともと、社会学政治学という学問は実にあいまいかつ学問的厳密性を欠くもので、数学やら物理学ののような「法則」を見い出すのは不可能だといわれる。(経済学と心理学はやや例外とか)
しかし、そこで言われる「法則」の中でほとんど唯一、真理として言われているのが「小選挙区制度は、必然的に二大政党制を導く」なんだそうで。


閑話休題

現に2004年参院選での民主党勝利は、一人区で自民との接戦を制したが故のものだったが、逆にいえば「野党票」・・・社民、共産候補の票がさらに流れれば、もっと自民は負けていたろう。
(直後の毎日新聞に詳しい分析が載っていたと記憶しているが、すまん引用できない)

日本は比例代表議席もあるからそちらは微妙に違うが、大きい目で見るとマイケル・ムーアが「ブッシュをホワイトハウスから追い出せ!」という大目的のため、本来ならもっとも政策が近いネーダーに不出馬を促したという行動は、実は日本においては「民主党は第二自民だ」なんだので共産・社民をあいかわらず支持している、要は「週刊金曜日なヒトビト」に刃を突きつけているのではないか。



俺がマイケル・ムーアにインタビューをする機会なぞありえないが、
架空のムーアさんに架空のインタビューをしてみる。

ブッシュ大統領の親友を自認するコイズミ・ジュンイチローのLDP(自民党)に対し、第一野党のDP(民主)はイラク戦争・派兵に反対し、今年の第二院選挙ではトップの議席を獲得しました。
しかし、アンチLDPのある部分は、DPも「他の政策が似ている」「全体的にラディカルではない」として、もっと小さい急進政党に投票を分散させています。


当初のネーダー支持から、不出馬を彼に促す立場に転換したムーア氏から、その経験を踏まえ、日本のアンチLDP、反イラク戦争有権者はどう行動すべきか意見をお伺いしたい。

(8/30註:日本語版が発売された「ブーンドックス」に、夫が民主党、妻がネーダー支持でケンカするリベラル夫婦・・・というネタがあるので、同書を紹介したhttp://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040827トラックバックを張りました)