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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 報道、記録、文化のために

【再掲載】選挙中「問題発言に物議」は、その勢力が「話題設定をコントロールし」「時間を独占する」効果がある

昨今の話題に関連して、2018年の文章を。
冒頭で
アメリカ政治というのは日本との違いが大きすぎ」と書いてたが、その部分からして今はまるっきり違うな・・・・・・その辺は略して抜粋する

m-dojo.hatenadiary.com
……渡辺将人「分裂するアメリカ」でした。

話題の知米派学者が圧倒的な現地取材で描く。
2012 米大統領選に向けて、必読の書。

彗星のように登場したオバマが危機に瀕している。“小さな政府”を訴える保守派のティーパーティ運動が広がり、ウォール街占拠デモに象徴されるリベラルの動きも活発化。経済が停滞するなかで、右に、左に先鋭化する草の根運動の根源にあるのは、政治に対する不信感だ。無党派中流層さえ、“大きな政府”を拒み、生活を助けるはずの医療保険制度に反対する。人種や格差よりも “理念の対立“で分裂が深刻化する大国の今を、気鋭の学者が論考。


この本は特にティーパーティー運動オバマ政権、リバタリアニズム移民問題、銃を持つ権利、宗教右派…などなど非常に面白いトピックが 並んでいたのだけど、一番印象に残ったのが「アメリカの政治討論会(大統領候補者討論会)」の裏側やその意味戦略などを記述した部分でした。
ここを読んでいくと、トランプが勝利したひとつの理由が分かった気がするので皆さんにも読書体験をシェアしたいと思う。

「問題発言」をすると政治討論会で有利になるワケ

(略)

ある候補が、過激発言・問題発言をするとします。
それは普通なら当然、 候補者にマイナスとなるでしょう。しかし、例えばこういうディベートの期間中に、ある候補が過激発言をすると…司会者はニュース価値があるから、当然この発言について、その候補者に質問を集中させます。
そうすると、善悪、プラスマイナスはその回答次第であるけれども、 少なくとも限られた放送時間の中では、露出が集中するのが問題発言の主なのである。

ここから引用しよう。

質問の仕方には定形がある。それは「あなたは…について…という発言をしていますが、これについてどうか」という、過去の刺激的な失言に近い、いわゆる突っ込みどころのあるクォート(引用)を探してきて、それを提示して自己弁護させると言うスタイルである。ほぼ例外なくこのスタイルを踏襲する。
この質問方法は、候補者にとって利点と欠点が両方ある。利点は準備がしやすいことだ。候補者は…(略)…分厚いファイルを作成する…全てが暗記できるわけもなく、結局のところはスピーチライターが噛み砕いたシンプルな「メッセージ」を候補者のボキャブラリーを用いて変換する作業が必要となる。(略)
しかし過去の発言でメディアが突っ込みそうな場所を逆算して洗い出せば、ほぼ間違いなくディベートで聞かれることが予測できるのである。それに沿って勉強しておけばいい 。
(略)
新規のアピールよりも、過去の失言や揚げ足を取られそうなポイントの弁護がどこまで上手にできるかが加点基準であり、その自己弁護の延長として、さりげなく新規のアピールも加えられれば混ぜる。「訂正する機会を与えてくれてありがとう」とにっこり笑って、 ついでに自己宣伝も知ってしまえばいい。突っ込まれることは美学であり、それだけ過去のネタが豊富な「話題の候補者」という意味である。これを地で行ったのが、1992年大統領選挙のビルクリントンだった。
スキャンダルに告ぐスキャンダルの炎に取り囲まれた選挙戦だったが「弁明」「釈明」ステファノボロスの存命側近がテレビ枠に出演するワクワクと交渉して確保し「釈明」ついでに候補者の魅力の宣伝もやってしまう。結果としてスキャンダルもないような平凡な対立候補陣営の番組出演枠はどんどん少なくなり、クリントン陣営がメディアを独占し、 議題設定そのものを誘導した。

これ、トランプが大統領になった経緯を、固有名詞こそ違えどあまねく説明しているのではないか。

しかし、単純な話ではなく
「問題発言への批判は、時間をそこに割くということで、注目度と知名度を上げますよ」
といっても「じゃあやめようか」という対策もちょっとおかしい。やはり問題発言、物議発言は、そこにニュース価値が有ればとりあげ「ざるを得ない」し、批判論評が効果があるかないかは、また別の話になるだろう。
だからこそジレンマになる、ということもよくわかる。


ただ、議題設定ということでいえば、以下の話もまた事実



情報がいくら豊富でも、金持ちも貧乏も知識人も無知な人も、「1日は24時間」は平等だから『時間争奪戦』が一番重要なのだ、とはマーケティングでも言われ続けてるよね


前田耕氏がおなじことを