これから、ぼつぼつと読めるようになるだろう。見つけたら張ります。
・パリ五輪を成功とか、失敗とかどう評するか
・2020(実際の開催は2021年)東京五輪と、どう比較されるか(当時の各社の論調との整合性など)
・そもそもいま現在、オリンピックをどう評価してるのか。(この前の評価はコロナ下のイレギュラーなのか、普遍的な問題点があるのか…)
そんなことを気にしつつ、社説公開待ち
朝日新聞(社説)パリ五輪閉幕 変化と継承の間で
社説
2024年8月13日 5時00分
パリ五輪がそのあかりを落とした。求められる変化と守るべき意義を、改めて浮かび上がらせた17日間だった。
大会運営では過去にない取り組みが目を引いた。競技場を離れ、セーヌ川を舞台とした開会式の演出や、仮設を多用して名所を取り込み、古都全体を会場とするスタイルは新しかった。より自由に、創造の可能性を示した。
そのぶん街にかかる負担は見逃せない。路上生活者は街を追われ、厳重な警備に日常生活も影響を受けた。清浄化途上のセーヌ川を会場にしたトライアスロンでは体調を崩す選手もいた。
巨大な祭典と街は共存できたのか。環境対策やかかった経費も合わせ、中長期の検証は欠かせない。
競技に目を向ければ、デジタル技術による変化は目覚ましい。ボールが落ちた場所や反則、技の有効性など、多くのスポーツでビデオ判定が広がった。同時に試合時間の短縮や運営、ルールの変更も目まぐるしく、見る側に混乱や誤解を生む面もあった。
その影響も一因となり、SNSなどを通じた誹謗(ひぼう)中傷がクローズアップされた大会だった。傷ついた選手や審判を放置できない。国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会、競技団体は責任を果たし、説明や監視など対策を尽くす必要がある。
選手の男女同規模の参加が実現したこの大会で、女性審判が数多く男子の試合も担当し、活躍の場を広げているのは印象的だった。
一方で、ボクシングでは性別のルールに従って参加した選手が中傷を受けた。性の多様性に遅れてきたスポーツ界は全体として、いっそう前向きに取り組むべきだろう。
選手個々の活躍や名場面は数知れない。あえてあげれば陸上女子の100メートルと三段跳びで勝ったジュリアン・アルフレッド、シア・ラフォンド両選手が記憶に残る。
故郷はセントルシアとドミニカ。カリブ海に浮かぶ人口18万人と7万人の島国だ。それぞれの国で初めてとなる金メダルは、大会が強国だけのものではない象徴だった。
五輪の意義を考えさせたのはそれだけではない。大会期間中もロシアのウクライナ侵攻は続き、イスラム組織ハマスの幹部が殺される事件も起きた。目の前の戦争を止める力は五輪にないけれど、競い合う者が肩をたたき、健闘をたたえる姿は心に響く。
人種や性別、宗教や政治的意見の違いなど、あらゆる差別を許さず、国境を超えて集う。その意義を守り、示し続けていく役目が五輪にある。
読売新聞 社説 パリ五輪閉幕 選手の熱戦に平和への祈り
2024/08/13 05:00
スクラップ
各国の選手たちが熱い戦いを繰り広げ、時に感極まって涙を見せた。世界各地で紛争が続く中、勝敗を超えて相手を 称たた える姿に、平和の尊さを実感した人もいたに違いない。
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パリ五輪が閉幕した。高速鉄道の設備への破壊行為があり、緊張の中での開幕となったが、その後は大きなトラブルなどもなく、無事に競技日程を終えた。日本は幅広い年齢層の選手が活躍した。スケートボード女子で金メダルを獲得した吉沢恋選手は、14歳の中学生だ。決勝では「練習でもほぼ成功したことがない」という大技を鮮やかに決めた。
馬術は、92年ぶりのメダル獲得という快挙を成し遂げた。メンバーの平均年齢は40歳を超え、自分たちで名付けたチームの愛称「初老ジャパン」が話題になった。
「大逆転」も大きな感動を呼んだ。体操の男子団体では、最終種目の鉄棒で中国を逆転して優勝を飾った。スケートボード男子の堀米雄斗選手も最終滑走で大技を決め、五輪2連覇を達成した。
いずれも最後まで諦めずに挑戦する姿勢が印象的だった。
「お家芸」のレスリングは男女計8個の金メダルを獲得した。女子やり投げの北口榛花選手も実力を見せ、佐藤大宗選手は近代五種で日本勢初のメダルを取った。
日本の金メダル獲得数は20、銀と銅を加えた総獲得数は45で、いずれも海外開催の五輪では最多となった。努力を重ねた選手たちに大きな拍手を送りたい。
今大会は、ロシアのウクライナ侵略や、パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの攻撃が続く状況下で開催された。金メダルに輝いたウクライナの女子走り高跳び選手は、「国を守る人々のためのメダルだ」と語った。
戦況の悪化で苦境にある選手が安心して競技に臨めるようにすることが国際社会の務めである。
今回はコロナ後の「新しい五輪」の提示を試みた大会だった。
性別や人種、文化の違いを超えた「多様性」や、環境面への配慮など「持続可能性」を掲げ、施設の新設ではなく、パリ市街や既存施設を会場として利用するなど、経費の節減にも取り組んだ。
開会式の演出に、ローマ教皇庁が不快感を表明するなど課題もあったが、「商業五輪」から脱却し、魅力ある大会を開催するためのヒントになるかもしれない。
五輪を巡っては、SNS上の選手への 誹謗ひぼう 中傷や、国際競技団体によるメダリストへの賞金授与など、検討すべき問題も残した。
毎日新聞 ’24平和考 パリ五輪閉幕 祭典の理想求め続けたい
毎日新聞
2024/8/13 東京朝刊
1650文字
日没に合わせて上空に浮かび、街を照らしたパリ五輪の聖火=パリで2024年7月28日、平川義之撮影
平和の祭典としての存在意義が問われた大会だった。世界の分断や対立が影を落とす中、パリ・オリンピックが17日間にわたる熱戦に幕を下ろした。「花の都」の華やかさとは裏腹に、中東やウクライナでは今も戦火が絶えない。国連総会が決議した「五輪休戦」は実現せず、状況はむしろ悪化の一途をたどった。
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開幕直前には、パリでもパレスチナへの連帯を示すデモ隊と親イスラエルの団体が衝突する事態が発生した。
イスラエルの選手に対して殺害を予告する脅迫メールが届き、厳重な警備態勢が敷かれた。1972年ミュンヘン五輪時のようなテロを警戒してのことだ。
ウクライナ侵攻を続けるロシアと同盟国のベラルーシは、国としての出場を禁じられた。
侵攻を積極的に支持しないなどの条件を満たす「中立選手」に参加資格が与えられた。だが、国際人権団体からは、半数余りが「中立の基準を満たしていない」と非難する声が上がった。
体操男子団体決勝で鉄棒の演技を終え、盛り上がるスタンドに対し、静かにするよう促す橋本大輝選手=ベルシー・アリーナで2024年7月29日、玉城達郎撮影
相次いだSNSの中傷
デジタル化の進展で深刻さを露呈したのが、SNS(ネット交流サービス)による中傷である。アスリートが精神的に追い詰められるケースも目立った。
柔道女子52キロ級で敗れた後、人目をはばからず号泣した阿部詩選手や、メダルを逃したバレーボール男子の日本代表らに対し、心ない投稿が繰り返された。
日本オリンピック委員会が声明を発表し、「侮辱、脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討する」と警告したほどだ。
結果はどうであれ、五輪の舞台に向けて努力を重ねてきたアスリートには敬意を払うべきだ。人格を否定するような投稿は決して許されない。
柔道男子60キロ級準々決勝、スペインの選手に一本負けを喫し、判定に納得がいかず両手を広げる永山竜樹選手=シャンドマルス・アリーナで2024年7月27日、平川義之撮影
一方、選手の中には、スポーツを通して友情や連帯を培う五輪の精神を体現する姿も見られた。柔道男子60キロ級では、永山竜樹選手がスペインの選手に絞め技で苦しめられた。審判は「待て」と告げたが、その後も攻められ、失神して一本負けを喫した。
わだかまりを抱えていた永山選手だが、それから数日後、スペインの選手から直接謝罪を受けた。
「オリンピックの舞台で彼と全力で戦えたことを幸せに思います。誰がなんと言おうと私たちは柔道ファミリーです」。永山選手はSNSにそう書き込み、2人が並んだ写真を添えて投稿した。
「柔道ファミリー」という言葉が示すように、選手たちは国が違ってもスポーツの仲間という意識を持っているものだ。
体操の男子団体では、橋本大輝選手が鉄棒の演技を成功させた後、大歓声に沸く観客席に向かって静かにするよう求めたシーンが話題になった。次に控えていた中国選手への気遣いは「これぞスポーツマンシップ」と評された。
ボクシング女子66キロ級予選、アルジェリア代表のイマネ・ヘリフ選手(右)との試合を途中棄権したイタリアのアンジェラ・カリニ選手=AP
ボクシング女子では、昨年の世界選手権で性別検査により失格となった選手の参加が、国際オリンピック委員会(IOC)によって認められた。だが、対戦した選手は危険だと訴えて試合途中で棄権した。競技の安全性などを巡って国際的に物議を醸したが、棄権したイタリアの選手は「IOCが彼女の出場を認めているなら、その決定を尊重する」と潔く受け入れる姿勢を示した。
互いを認め合う大切さ
近代オリンピックの創始者であり、IOCの終身名誉会長だったピエール・ド・クーベルタン男爵は1935年、ラジオで演説し、平和構築に五輪が果たし得る役割を説いた。他界する2年前のことである。「敬意を払うには、まず相手を知る必要がある」。クーベルタンは相互理解の大切さを強調した上で、「それのみが本当の平和の本当の基礎になる」という言葉を残している。
国境や言葉の壁を超え、共通のルールでつながるのがスポーツの素晴らしさだろう。互いを認め合うフェアプレーの精神は、五輪が掲げる理念の柱である。
世界各国から集まった競技者の白熱した戦いに人々が感動し、平和への願いが高まる。それがオリンピックムーブメント(五輪精神を広める運動)の目指す姿だ。
世界は緊迫の度を増している。だからこそ、これからも五輪の理想を求め続け、国際社会に発信していかなければならない。
産経新聞 <主張>パリ五輪閉幕 大歓声の祝祭復活を喜ぶ 日本勢の躍進に心が躍った
社説
2024/8/13 05:00
オピニオンパリ五輪閉会式で、 花火が上がったフランス競技場
パリ五輪は「歌う閉会式」で熱戦の幕を閉じた。大会中、各会場で聞かれた観衆による「ラ・マルセイエーズ(フランス国歌)」の大合唱が耳に残る。
大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長は閉会のあいさつで「パリ五輪は多くの世界記録を塗り替えた」と語り、観客動員数や歓声の大きさを、その項目に挙げた。この言葉が大会の成功を象徴する。
無観客開催を強いられた東京大会を経て大歓声に包まれる本来の五輪が帰ってきたことを、なによりも喜びたい。
競技会場だけではなく、表彰式翌日にメダリストがエッフェル塔の足元で市民と交流する「チャンピオンズパーク」の演出も祝祭感を盛り上げた。
遠慮なく自国の応援を
エスタンゲ会長は開会式のあいさつでも五輪のあるべき姿を示唆した。一つは「五輪によって全ての問題が解決するわけではない。世界の差別も紛争もなくならない」と断言し、期間中の「美しい姿」に理想像を求めたことだ。「戦争も止められない五輪に存在価値はない」といった短絡的な五輪不要論を排するものと聞こえた。
異例だったのは仏選手団を名指しし「メダルを取れば国民全体が誇りに思う。表彰台で泣いたら国民全員が喜びで涙する。勝利ごとに国民はまとまる」と呼びかけたことだ。立場はどうあれ、自国の応援に遠慮はいらないのだと印象付けた。
五輪憲章には「五輪は選手間の競争であり、国家間の競争ではない」の一文がある。これをもって国の存在を忌避し、表彰式から国旗掲揚を排すべきだとの意見もある。だが憲章は、選手の国に対する思いを否定するものではない。国旗の掲揚は勝者をたたえるとともに、他国への敬意の表れでもある。
侵略国やドーピングなどの不正に関わる国家は、その栄誉にあずかれない。これが明確に示された大会でもあった。
大会の成否を分ける大きな要素に開催国の活躍がある。仏は男子バレーボールを制し、男女のバスケットや男子サッカーも決勝を戦った。パリの観衆は自国を熱狂的に応援し、対戦国にも声援を惜しまなかった。
日本選手団は、その仏の16個を上回る20個の金メダルを獲得した。メダルを量産したお家芸のレスリングや男子体操、競技発祥の仏で躍動したフェンシングの男女や、新たなお家芸ともいえるスケートボードやスポーツクライミング、ブレイキンの活躍にも心が躍った。
殊勲の個人名を一人挙げるなら、陸上競技女子やり投げで金メダルの北口榛花だろう。メイン競技場のセンターポールに日の丸を揚げた彼女はスタンドを見渡し「こんなに多くの人と興奮や緊張を共感できた喜び」を口にした。無観客の東京大会に続いて柔道男子66キロ級で連覇の阿部一二三も会場の声援に「これが本当の五輪」と話した。感動は歓声が増幅させる。
期待した団体球技はメダルに届かなかったが、男子バスケットボールは銀メダルの仏を残り10秒で4点リードの窮地に追い込み、男子バレーボールは4強のイタリアから何度もマッチポイントを得た。女子サッカーは金の米国と延長の死闘を演じ、銀のブラジルには1次リーグで逆転勝利を挙げた。個々の内容は悲観するものではない。
歓喜、感謝、後悔、忘我などさまざまな涙も見た。強く記憶に残るのは、柔道女子52キロ級の阿部詩だ。五輪連覇を目指す詩は2回戦で一本負けの不覚を取り、会場に響き渡る大号泣はなかなかやまなかった。柔道好きのパリの観衆は「ウタ」コールの大合唱で彼女の再起を促し、彼女は混合団体戦の豪快な背負い投げで、これに応えた。
表彰の光景が胸を打つ
勝者の涙についても触れておきたい。ゴルフ男子は現在の世界ランク1位、スコッティ・シェフラー(米国)が制した。終始笑顔だったシェフラーは表彰台の中央で星条旗を仰ぎ、国歌を聴いて涙をあふれさせた。
その涙を隣でまぶしそうに見つめた銅メダルの松山英樹は、4年後のロサンゼルス五輪にも「絶対に出たい。4年間、また頑張る」と話した。この光景に五輪の魅力が凝縮された。
国旗と国歌に彩られる表彰式は、昔も今も将来も、五輪のハイライトでありたい。
エスタンゲ会長は「大会は終わっていない。折り返すだけだ」とも語った。28日には、パラリンピックが開幕する。
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