INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

五輪レスリング雑感~「リンクル」など



・まずはお疲れさまでした。そして、結果が出た後であらためて日本のレスリングの来た道、これからを考えるために、この本を読もう。増補版が出ているのだ。
12年前の過去記事も紹介する。

m-dojo.hatenadiary.com
m-dojo.hatenadiary.com


m-dojo.hatenadiary.com

・今回メダルを量産した女子レスリング。すでに何の違和感もないお馴染みの風景だが、最初は、これを導入した人間が「とち狂った」と言われたそうな。日本は「女子レスリングの歴史」がそもそも事実として最長に近く、先行者利益というものをまだとっぷりと得ているのだろう。しかし、先行者利益というのもそろそろ解消されるような気もする。どうなんだろうな。

「当時の福田さんは、みんなからボロカスに言われていました。『なに、女? お前、何をとち狂っているんだ』と。(高田裕司)」

「あのころの協会は爺さまばかりだから『福田はバカじゃないか』ってみんな言ってましたよ。だけど福田さんは信念を曲げなかった(富山英明)」

m-dojo.hatenadiary.com

・ただ、今回モノスゴイ量のメダルをレスリングは獲得し、たとえばフェンシングも躍進。そして一方で柔道は東京オリンピックと比べるとメダル激減……なわけだけど、実のところ、「偶然の結果」も多いんじゃないかね。世界中から強い人が集まって、トーナメントで微妙判定を含めて勝ち負けを決めるとなると、たまたま1-3位、メダル圏内にそのひとが行った、行かなかったで決まるんじゃないか……しかし数の多い少ないを「単なる偶然」で片づけたら、それこそ関係各位の努力や試行錯誤を無視することになるわけで…どうなんだろうね。



・五輪になるとレスリングにはフリースタイルとグレコローマンスタイルがある、という話が当然語られ、「グレコローマンのローマンとは、五輪時代の古代ローマの伝統を意味する」という話も紹介されますが、これは伝説というか作られた神話だという話。過去記事再掲載。

黎明期近代レスリング(グレコ)とは”プロレス”である

19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランスでは元軍人のジャン・エクスプロイヤが始めたプロフェッショナル・レスリングが爆発的な人気を呼んでいた。グレコローマンとは”ギリシャ・ローマ”という意味だ。エクスプロイヤは「・・・(略)自分たちのスタイルこそが、ギリシャやローマのレスラーが戦ったレスリングなのだ」と主張した。
実際はギリシャ時代のレスリングは下半身の攻撃もみとめられていたのだが、。それよりも重要なことは(略)試合の多くが、いわゆるプロレスであったことだ。試合結果はあらかじめ決められており、選手たちは一致協力して試合を盛り上げた・・・

あとから生まれたものが権威付けのために、「より古いものだ」と主張することを、江戸日本のワンアンドオンリーな思想家・富永仲基は「加上」と呼び、思想史の中でそれを法則化している。
http://kousyoublog.jp/?eid=2653
自分はウルトラマンよりゾフィーゾフィーよりウルトラの父、父よりキングがつおいのも「加上」だと思っている(笑)
はいはい、余談でした。

でまあ、このブームは19世紀末から20世紀初頭、明治の文明開化と有志の海外雄飛、そしてガス灯に浮かぶシャーロック・ホームズアバンチュリエな(初代)アルセーヌ・ルパンの時代でもある。イギリスで無敵無敗のスモール・タニこと谷幸雄や、夏目漱石正岡子規に「ロンドンで西洋の相撲(レスリング)を見たけど、すこぶる間抜けなものだ」と記した手紙など、いろいろあるのだが各自調査。このブログの過去ログにもしょっちゅう出てきます。

あ、上の余談ですが

柳澤健氏は近年柔道のルールで、下半身へのタックルじみた双手狩りなどが禁止され、「しっかり組み手を取り合ってきれいに一本投げるのが柔道だ」というふうな”美学”が喧伝されているのを「講道館イデオロギーのようでいて、実はグレコの伝統を受けたフランスの思想。いまや柔道は実際の競技人口からしてもフレンチ・ジュードーであり、フランスの手の平で講道館は踊っているだけ」と。

m-dojo.hatenadiary.com


中村倫也が(「Gaku Akazawa」から学び)確立した技「リンクル」




スゴイ映像いろいろ


www.nikkansports.com
X(旧ツイッター)ではプロレスファンが反応。「レスリングマットにこの高角度ジャーマンはエグい通り越えてヤバい」「これは、声出たな…」「この角度でのジャーマンは、さっさと抵抗を諦めて 四天王ばりの受け身に徹さないと逝ってしまうよ」「ガチンコのジャーマンすげぇな」などと技へのリスペクトと、被弾した選手への心配が相次いだ。

中には「古館実況で観たいと何か見たので」と切り出し、五輪中継の「ジャーマン・スープレックス」の動画に古舘伊知郎のプロレス神実況をかぶせる猛者も登場。古舘は実況で「お~っと! ジャーマン!」と絶叫していた。