2021年のツイート(当時の名称)だけど、今偶然読んだんでさ
本日の戦利品、中央公論新社、ジェイソン・C・シャーマン『<弱者の帝国>ーヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造』。
— 理表 (@Rihyo37) February 14, 2021
「近世ヨーロッパの軍事革命は、非西洋に対する圧倒的な優位をもたらさなかった」という、常々思っていたテーマを扱った本。 pic.twitter.com/5LfHcE1W25
まずもって軍事革命とは、大量の銃や槍で武装する歩兵からなる方陣、歩兵、騎兵、砲兵からなる諸兵科連合、教練を受けた職業軍人が率いる大規模常備軍、それを支えるために税収のほとんどを費やす国家、などの諸要素を一かたまりのパッケージとして構成された概念である。
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
だがアメリカ大陸のスペイン人コンキスタドールの大半は、親族集団から募兵された数百人規模の、軍事訓練をほとんど受けていない、王室と契約を結んだ冒険者集団だった。
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
銃は重要な役割を担わず白兵戦が大半で、方陣も組まれなかった。
画像はイカロス出版『速水螺旋人の馬車馬大作戦bid黒本』より pic.twitter.com/jyWIkoXXV9
重要なのは病気と現地同盟者であり、スペイン人が同盟者を操ったのではなく、同盟者がスペイン人を操った可能性の方が高かったのだとか。
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
概してアメリカ大陸では森林や山岳などで軍事革命を実行できる余地はなく、しばしば先住民のゲリラ戦(アラウコ戦争など)に悩まされた。https://t.co/ZGchL9joLV
一方アフリカやインド洋におけるポルトガル人は、沿岸部をいくつか制圧し拠点を置くことに成功したものの、いずれも部隊は小規模であり、要塞も近代的でなく、内陸へ侵攻したり影響力を及ぼそうとする試み(アンゴラ・モザンビーク・セイロン島)は度々失敗に終わっている。https://t.co/gsPuXwbNHO
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
さらに現地軍や17世紀にはオマーン軍に攻撃され要塞を攻略されるなど、沿岸においても優位を確立したわけでなかった。ポルトガル人は正面から突撃して、個人の武勇を求める傾向があり、剣と盾、短槍、甲冑に頼るなど、ヨーロッパ基準に照らすと原始的だった。
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
だがその密集隊形での白兵戦の優位、性能のよい大砲、優れた船舶と海を利用して増援を送る能力、などから、政治的に分裂する環境で沿岸の要衝の攻略(マラッカ)と防衛に成功したのである。https://t.co/X2k7JZUueL
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
つまるところ、近世のアフリカやアジアではヨーロッパ勢力は、いずれも現地諸帝国に恭順して市場へのアクセス権をなんとか入手しようとすのが精一杯で、優位を確立できたのは小規模の政体(これすら現地勢力の支援が不可欠)くらいだった。
— 理表 (@Rihyo37) 2021年2月16日
この状況は次章主権会社の登場により、徐々に変化していく。
あ、偶然じゃないか、ご本人がこの投稿に絡めて、過去のツイートを再紹介したからだ
『東日本の動乱と戦国大名の発展』読書中。戦国時代の北海道は、和人の『<弱者>の帝国』だ
— 理表 (@Rihyo37) July 14, 2024
①アイヌが軍事的に圧倒的優勢
②蠣崎氏は、アイヌ首長を宴会で騙し討ちし辛うじて勢力を維持
③和人が互いにアイヌをけしかけ合う
④経済はアイヌの交易ネットワークに依存
⑤和人はアイヌと共存・共生関係 https://t.co/NXH0BT5oNf
うん、ぶっちゃけ自分も中世アイヌ氏は「風雲児たち」で知ったのがほとんどだけど、あのアイヌの描き方は、西部劇が一回転しての「高貴な野蛮人」「戦争のような文明の悪を知らぬ、無垢の原住民」みたいな単純化というかそれこそオリエンタリズムがあるのではないか、とは感じていた。
アイヌの軍事的精強度や統一性など、いろいろ感じるべきことはあろう。
ただ…定期的に話題になる「戦国・江戸時代にスぺインやポルトガルの日本侵略はあり得たか」の話があるじゃないですか
m-dojo.hatenadiary.com
これへの回答に、上の本はなっているんじゃないかな?
プラス、この時期のコンキスタドールを知ることは、ウルトラシリーズで地球を侵略してくる(なぜか単独で)宇宙人の解像度が上がる、というね(笑)
togetter.com