コロナの5類移行から、丸1年が経過しました
5類移行、8日で1年 ワクチン無料接種など終了―公費負担を全廃・新型コロナ
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられてから8日で1年。それまでの「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」となったことで、行動制限の法的根拠がなくなり、社会・経済活動はほぼコロナ禍以前に戻った。ワクチンの無料接種や治療薬の公費負担も3月末で終了し、通常の医療体制に移行している。免疫低下、増える感染症 識者「マスクや手洗いを」―コロナ5類移行1年
5類移行に伴い、感染者数は毎日の全数報告から、約5000の医療機関からの週1回の報告に変わった(後略)
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いろいろな変化…あるいは元の状態への復帰が進む中で、こんな懸念も言われています
「日本の政治は、のど元過ぎれば熱さ忘れる」オンライン国会、結局やらないの? コロナ静まり議論置き去り、背景に憲法改正関連も…
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に検討が始まったオンライン国会導入の議論が1年以上、棚上げになっている。コロナ禍が落ち着きを見せ始め、感染症法の位置づけが「5類」に引き下げられたことで緊急性や必要性が薄まったためだ。一方、海外ではオンライン審議を実施する国が急増している。日本の地方議会でもオンラインの委員会審議が増えてきた。なぜ日本の国会だけ議論が下火なのか。その背景に、入れ替わるように盛り上がってきた憲法改正との関連性を指摘する向きも……
(略)
オンライン国会導入の「壁」となったのは憲法だった。56条1項に「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と記されているためだ。
これは衆院、参院の本会議を開いて政府の予算や法律を成立させるには、一定数の国会議員の「出席」が不可欠なことを意味している。定足数は衆院(定数465人)であれば155人、参院(定数248人)であれば83人という計算になる。
とりわけ憲法の定める「出席」は、従来の解釈では議場に国会議員が物理的に「いる」ことが要件とされていた。オンラインのリモート出席による審議や採決はできないことになっているのだ。
▽解釈変更することで憲法ハードルクリア
与野党は衆院憲法審査会で、これを柔軟に解釈しようと考えた。そこで目を付けたのが、国会議員が自ら議論や表決に参加できれば、出席と認める「機能的出席説」……(略)…
昨年3月、緊急事態時のオンライン国会を例外的に認める見解を共産党以外の賛成多数で議決した。具体的には、憲法や国会法の「出席」という文言自体は改正せず、衆院規則の「議場にいない」という一文を改める案を想定。議決はすぐに細田博之衆院議長に提出された。
参院憲法審査会でも意見が交わされたが、共産党を除いてオンライン国会導入への異論は出なかった。与野党は、衆院議院運営委員会の下で制度設計の協議を開始……
(略)
公明党の北側一雄副代表は4月の衆院憲法審査会で「(オンライン国会の)議決から1年以上経過している。速やかな検討をお願いしなければならない」と主張。国民民主党の玉木雄一郎代表も5月の記者会見で「『喉元過ぎれば熱さ忘れる』みたいなことをしがちなのが、日本の政治や行政だ。ほったらかしは許されない」と訴えた。だが自民党は「なかなかハードルが高い」(高木毅国対委員長)として、オンライン国会の導入に慎重
(略)
3点目は憲法改正だ。「オンライン国会の話は、もともと『憲法改正をしなければ実現できないのではないか』との改憲派の思惑含みで議論のテーブルに上った経緯があった」と見立てる。ただ、改憲は必要ないとの判断に至っており「批判的に見ればこれ以上、オンライン国会の議論に力が入らなくなっているのではないか」といぶかる。衆院憲法審査会では、緊急事態時の国会議員任期延長の規定を新設する憲法改正論議が活発化している。上田氏は「憲法改正につながりそうだから、力が入っている」と冷ややかな視線を送る。
この国会の憲法審査会報告、PDFがあるのでご紹介する
憲法第56条第1項の「出席」の概念について
令和4年3月3日
衆議院憲法審査会
国会は、国の唯一の立法機関であるとともに全国民を代表する国権の最高機関であり、いかなる事態においても、その機能を果たすことが求められている。
憲法審査会においては、「新型コロナ感染症がまん延し、国会議員が議場に集まれなくなる、開会も議決もできない」という、いわゆる緊急事態等が発生した場合の国会機能の維持の一環として、憲法第56条第1項の「出席」の概念について議論を行った。
まず、令和4年2月10日の討議においてテーマが抽出され、同月17日には衆議院法制局から論点説明を受けた上で集中討議を実施し、同月24日に学識専門家2人に対する参考人質疑を行った上で、3月3日には総括的な討議を実施するなど丁寧な議論を行ったところである。
この一連の討議において、委員から様々な意見が述べられたが、その意見の大勢は次のようなものであった。
1 憲法第56条第1項の「出席」は、原則的には物理的な出席と解するべきではあるが、国の唯一の立法機関であり、かつ、全国民を代表する国権の最高機関としての機能を維持するため、いわゆる緊急事態が発生した場合等においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、その機能に着目して、例外的にいわゆる「オンラインによる出席」も含まれると解釈することができる。
2 その根拠については、憲法によって各議院に付与されている議院自律権を援用することができる。
以上、本審査会における憲法第56条第1項の「出席」の概念に関する議論の大勢について報告する。
読んで、ちょっと感動しました。「堂々と裏口から入る」とでもいうべきか(笑)。
来年で安保法制の成立から10年となるんだっけ。あの時、「解釈改憲」は一つの焦点であり、「解釈改憲というものはそもそも姑息である。変更すべき点があったら堂々、条文を改正するべきである。それが立憲主義だ(要約)」という議論がいろいろなところで交わされたはずです。
しかし憲法56条は、「出席」という概念のほうを変えることで、白昼堂々、「解釈改憲」が行われる、その要件がほぼ整った。むしろ自民党がモタモタしていて実現しない(爆笑)
実にどうも、面白い光景でありますので、コロナ5類を機に、皆さん注目を。そして、共産党を除く諸会派の一致で、この自主解釈改憲実現なれり!!という歴史的瞬間を目撃したい!
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自由は今や還りたり
我が憲法を打ち立てて 国の礎(いしずえ)築くべき
歴史の責を果たさんと 決意は胸に満ち満てり
ま、皮肉は別にしても、オンライン国会はあるべきだし、なんなら審査会の報告を飛び越えて「緊急事態においては」ではなく、むしろ国会議員の当然の権利として要求できるものと、個人的には位置づけたい。
そもそも、これってコロナ前は「国会議員の産休」などに付随して出てきた憲法論なんだよ?
そしてその後、重度身体障碍者の議員誕生もあった。遡れば、重病やその後遺症で国会に出られないのに出馬して当選を重ねる議員の在り方が賛否を呼ぶこともあった(孫が出馬を内定して最近話題の三木武夫、田中角栄など)。
歴史ある当ブログだから、ちゃーんと蓄積あります。
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これ、2019年、コロナ前の記事な。
そしてコロナ禍真っ最中の2021年…この記事を一部再掲載する。
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…と書いた(引用した)けれど、何も別に「だから憲法改正が必要だ」と言ってるわけじゃない。
やはり世のなか、憲法を描く人がジェール・ヴェルヌやヒューゴー・ガーンズバック、A.C.クラークほどに未来技術を予測できるわけがないんで、不正などが外部から働いているということに疑問の余地が出ることなく遠方から投票をする技術、なんてことは想定の外だったんだろう。
だから文章に「出席議員」とかいちゃった。テレビ会議も電子投票もアウトオブ眼中。
それはしょうがない。
(略)
…ということでこのままであっても、それもひとつの護憲論だろう。それはいかんから改憲する、でもよろし。
法律は、「言葉の定義」のほうを変えるって抜け道があったよね。
この国では、自衛隊でも私学助成でも同性婚(まだアイデアに留まるが)でもそうやってきたっちゃあやってきた。この場合「出席」というのの定義のほうはどうなんだろう。
いま、テレビ会議なんかでも、自宅で機器の前に座って、そこで「ハイ、わたしここにおりますよー。そっちの議論も聞こえてるし、自分の意見も述べますよー」という状態なら、それは『出席』と定義できるんじゃない???…いや、どうだろうな……。
この際、「言葉の定義」「『出席』とはなんぞや」と・・・・・・・・・・・
で、問題は
「この〇〇は、関連する法を定めるときに、まったく実物も概念も存在してなかったからな。当然〇〇を想定はしていない」
「では、〇〇についての取り扱いを法律改正して決めますか?」
「いろいろ手続きが大変だし、政治情勢的に難しくてな…」
「では、〇〇も法文にある『XXX』の一部(※あるいは逆に『XXX』の一部ではない」)と解釈しますか」
「それも無理があるなあ…というか仮に自然であっても、あとからそうやっては法の厳粛さがね……」と。
これ、同性婚における憲法の「両性」とか「夫婦」という言葉の扱いとまったく同じはなしではあるよね。法律制定時、同性結婚という概念自体がまったく関係者には存在しなかった。YESもNOもない、それについては「想定外」だった、と。
じゃあ、想定外だったものを認めるとき、明文でそれを付け加えたり、文章を変えるのか。それとも「両性には同性も含まれる(ええ……)」的な解釈を新たに変更するのか。
オンライン国会に話を戻すと「出席」とはそもそもなんであるのか
しゅっ‐せき【出席】 の解説
[名](スル)会合や学校の授業などに出ること。「クラス会に出席する」「出席簿」⇔欠席しかし実際、オンライン授業はもう始まっているよね。
このへん、今後の「国語辞書」はどういう扱いをしていくのかな。
そして、おまけに昨年「ガーシ―議員はオンラインで出席したいと言い張り、国会に『出席』してこないので除名」な騒動があった(笑)。
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いや笑い事じゃなく、国民が選んだ国会議員を数の力で首にするという憲法的にも重大なことを「国会に『出席』しないのは問題。オンラインなんて認められない」を前提にやってのけた直後に、条件はちがえど「やっぱりオンラインも「出席」で!」というのはちーっと寝覚めが悪い、という意識も国会の中のどこかにあるんじゃないかね(笑)。
何度もこの比喩を引き合いに出したがこち亀で両津が派出所で一升瓶の酒を飲んでいるのを見つかると「これは新発売1.8リットルサイダーです」とごまかすシーンがある。
ただしく仏教の「般若湯」「赤豆腐(マグロの刺身)」だ(笑)
でも、出席を「リモートも含む」は確かに、本当に言葉の意味が変わった感じもある。一方で「リモートなんて出席と認めない」と言い張る人がいたら、その人を押し切れる?
いま、お手元に「最新の辞書」がある人は、それを引いて確認してほしい。オンラインも出席である、と解釈できる語釈がある辞書が在ったら、その文面を見たい。
一方でガーシー騒動で考えるのだが、みんなが「リモートでも出席扱いでいいですよ」と同意したり「緊急事態だから」で認める場合はいいんだとして、
「わたしはオンラインで出席します」というが、全体が、あるいは一部の人が「それは認めない!それは欠席扱いにすべきだ!」と言い張った時「何言ってるんだ、リモートで繋がるなら『出席』で当たり前だろ?何、へんな語釈をしてるんだ」と”押し切れる”のですかね?
本当に一票が左右する会議だったら、そんな争いも生まれるんじゃないか。大学教授会とかどうなんだろうね。