INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「SNSが先で、本がその後なら旧世代は『読書脳』と呼んで批判した筈」…佐藤卓己氏の「SF」に爆笑した(流言のメディア史)

流言蜚語、風評、誤報陰謀論、情報宣伝…….現代史に登場した数々のメディア流言の「真実」を見極め、それぞれの影響を再検証するメディア論。ポスト真実のデジタル情報化時代に求められる、「バックミラーをのぞきながら前進する」メディア史的思考とは何か。「あいまい情報」のメディア・リテラシーがいまここに。

元は新潮社の「季刊 考える人」掲載のコラムをまとめたもので、なかなか読みやすいが内容は充実している。あまり笑えないような、深刻な指摘もあるもあるのだけど、声に出して笑った箇所をまず紹介しよう。



数年前のことだが、臨床心理学分野の講演会に講師として招かれた時の出来事を思い出した。
私の前に基調講演をした著名な評論家は、いじめ・犯罪の温床となる子供のスマートフォン利用を即刻制限すべきだと主張した。「毎年、これで何人も自殺者が出ているのです」。
さすがにメディア研究家として私は黙っておれず、自分の講演であえて挑発的にこう述べた。「本を読んで自殺した人の数のほうがもっと多いのではないだろうか」

(略)・・・※ここから氏の「思考実験」、私の言葉でいえば「SF」がはじまる。



…まず、書物よりもSNSが先に普及した「未開社会」を考えてみよう。たとえば、工業化を経験せずに情報化した遊牧社会である。
そこには学校も新聞も書籍もなかったが、経済のグローバル化スマートフォンがまず普及した。SNSを駆使する遊牧民の社会に、ニューメディアとして書物が出現したとしよう。

スマホのような伝統メディアに無関心な「新人類」たちは目新しい紙の書物に熱中する。さらに、書籍というニューメディアの蒐集を始めるオタク、出版業というベンチャービジネスに乗り出す起業家も現れた。
SNSの伝統的環境で育った年輩のノマドはこの事態に驚愕し、若者を告発する「つぶやき」をツイッターでこう連投していた。


・書物は五感を鈍らせ、生活から活力を奪っている。色鮮やかで躍動感あるデジタル映像の伝統に育まれた感性は、白黒だけの退屈な活字では満足できない。脳全体をフル稼働させるデジタル文化に対して、読書中の言語処理で利用される脳領域はわずかであり、子どもたちは恐るべき〝読書脳〟になってしまう。

・コミュニケーション力の発達を阻害する書物こそ、青少年の「引きこもり」の最大要因である。驚くべきことに、一日何時間も個室にこもって書物を読んでいるのだ。特に若者に人気の「教養小説」は観念的で異常な性欲を亢進させて、モニター画面に映る正常で素朴な異性愛への適応不能を引き起こしている。

・また、図書館などという悪場所に通いつめ、問題行動を起こす若者も少なくない。楽しいおしゃべりが絶え間なく続くSNSの社交空間を拒絶して、不気味な沈黙が支配する公共空間で書物を読んでいるのだ。こうした消極的な行動様式の広がりが、現在深刻な少子化の一因であることはいうまでもないだろう。

・それ以上に恐ろしいのは、書物が格差社会化を加速させていることだ。伝統的なデジタル文化では思想や感情の創作的表現物はコモンズとして自由に活用され、知的財産権の主張は社会的にされてきた。ウェブ上の知的創作物はフローな状態のままで私的にストックされず、知の格差は可視化されなかった。

・しかし、書物は違う。オリジナリティーとか著作権とかの屁理屈を並べ、知識やデザインにまで財産権を主張している。そうした悪の象徴が個人蔵書である。自らの知識量をひけらかすためだけに書物を私有する愛書家たちは「知の守銭奴」であり、社会的平等など一顧だにしない。許しがたい差別主義者である。

・読書脳のフリークどもが変態の差別主義者であっても、ごく少数ならば仕方のないことだ。病気なのだから。真に脅威なのは、こうした読書人の受動性が世代を超えて拡大し、デジタル会をシニシズムで汚染することだ。私たちはSNSで双方向の対話型コミュニケーションをにつけた能動的な市民である。

・私たちは出会い系サイトにも挑戦し、匿名掲示板に毎日書き込む参加型の公共生活を営んでた。しかし、読書人はただ他人の思考を書物でなぞるだけで、街頭に出て誰かに語りかけよとはしない。健全で平等な情報社会を守るためには、若者の書物閲読を制限し、私的所有をじることが喫緊の課題である。


お気づきのように、この一四〇字の連続ツイートの内容はテレビやゲーム、ケータイに対してれまで言われてきた有害論をかき集め、その対象を書物に置き換えただけの創作文である。

もしSNSが伝統文化で、読書、本が新しい文化だったら?佐藤卓己


ははは、いや、どこに出してもはずかしくない「センス・オブ・ワンダー」だよ。バーナード嬢曰く。の神林しおり氏もにっこり。
m-dojo.hatenadiary.com

SFファンの悪質さ バーナード嬢曰く。

流行と伝統をひっくり返す小ネタといえば、藤子・F・不二雄先生のSF短編「定年退食」に、当時最新の流行だった「若者の男性の長髪」をひっくり返して、お父さん世代がみんな長髪、若者がその大人社会の反抗として丸刈りの「無髪族」になるというネタがありました。

長髪と無髪族 藤子・F・不二雄 定年退食

note.com


SF短編ドラマ第二期は7日から!!
と、宣伝も。
www.nhk.jp

コメント欄で中島敦「文字禍」につながるとの指摘も。なるほどー

www.aozora.gr.jp