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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ナポレオン覇道進撃」でワーテルロー決着。/偶然と必然…おそらく欧州では必須教養の、戦の経緯は?

長谷川哲也「ナポレオン波動進撃」で複数回にわたって掲載されていた、皇帝陛下最大にして最後の戦いワーテルロー戦役がついに決着した。

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー

これが最終的にナポレオンの最後の戦場であること、英国のウェリントンプロイセンの老将ブリュヒャーによってあの軍事的天才が打ち負かされた…ことぐらいは知っているし、Wikipediaの記載も見たことがあるが、それでも詳細はこの作品によって初めて知ることができた。

関ヶ原と並ぶ大会戦」とも呼ばれているが、業者の間には約200年の開きがあり、その間武器も戦術も進歩した。さらに言えば「記録」も進歩しており、様々な軍人たちの、兵隊たちの行動が今でも比較的克明に追える。


ただ、関ヶ原ワーテルローも変わらないのは…今の戦争だってそうだろうが…戦場では次々と予想もし得ないことが発生し、それに対処していくうちに当初の予定とはかけ離れた事態が生まれていく、という点だ。


この辺はワーテルロー話ですごく有名らしいけど、KOEIの「ランペルール」にも登場した騎兵のネイ元帥は、肝心なところで皇帝の命令を無視して無謀な突撃をして、虎の子の騎兵を無駄遣いしてしまう。

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー

ただその無謀な突撃から生まれたほころびに必死で食らいついていたら、勝敗の帰趨を決すべき、唯一無二の大チャンスの扉をネイはこじあけていたのだ。
そこでナポレオンにもうひとつの虎の子、近衛軍団の投入を要求するネイ。
だが、客観的に見てまず大失敗をしていた直後のネイにナポレオンはにがりきっており「あいつの言うことなど信用できるか!」状態だったのである。
ここに投入していたら…というIFが今でも言われている、という。

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー

さらに、これは皮肉な話だが「プロシア軍を追撃せよ」という別の使命を与えられ、それに邁進していたグルーシの軍団は、ワーテルロー方面からの砲声を聴く。
「戦争が始まったんです、私たちも戻りましょう」と勇猛な部下は促すが、軍団長は「皇帝陛下から頂いた命令はあくまでもプロシア軍追跡である」と、戦場への参加を見送った……。この軍団長が、皇帝の命令に忠実なタイプでなく、まさにネイのような臨機応変な、独断専行の男だったら……。

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー

ネイもグルーシも、その判断それ自体がいつでも正しかったりいつでも間違ってるわけではない、戦場で指揮官の命令に忠実を貫くか、現場の状況を見て独断先行するかの是非は、状況というか運次第だ。
その運が、勝ち上がっていた時のナポレオンにはあった。しかし……


そしてワーテルローというかナポレオン戦争後…大きく戦場が変わるのは、一応「電信」によって前線と司令部がつながり、タイムラグがない形で戦術や移動の意思疎通ができるということである。


無線電信の発達の歴史を考えると、ナポレオン戦争の時にこれがまだ実用化に至っていなかったのは偶然なのか必然なのか。そしてもし実用化されていたらそれはナポレオンと反ナポレオン陣営、どちらに有利になっていたのだろうか。


敵や味方を、遠方の状況を基本的には肉眼や伝令の報告で確認するしかない、そもそもやってきた一連の集団がが敵か見方かも接触するまで分からない……

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー


ナポレオンは実際のワーテルローの戦の数日前にウェリントンを補足しており、猛然と襲い掛かったんだけど、なんと両軍接触の前に大雨が降り、行軍不可能になる。しかも「窪地」や「丘」がひとつ二つあっただけで、敵軍が物理的に見えなくなる。これによって英軍は事なきを得た。

ナポレオン覇道進撃 ワーテルロー前夜


これがナポレオン戦争までの(いやその後もそうなんだけど)すごく重要な点であり、ぶっちゃけKOEIの戦争シュミレーションゲームって、この辺に配慮したゲームもあるし、従来型の将棋の発想から、その辺はないものとして扱うというゲームもあったよね。

自分はこの辺に一番「うわーコンピュータゲームのシミュレーションってすげー」と思ったもので……
この話一緒に書きたかったけどやっぱり別立てにしよう。


何にせよそういうような視点で「ワーテルローの戦い」は非常に興味深く読んだ。
同時にこれは、おそらくヨーロッパにおいては関ヶ原の「小早川の裏切り」「島津の正面突破退却」などなどのように、教養のひとつであり、概要だけでもこういう漫画でかじっておく意義もあろうかな、と思いました。
(了)