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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「鎌倉殿の13人」の後継者・北条泰時は…優しい顔でエグい革命をした”完全犯罪者”なのだ【再論】

M-1やワールドカップのせいで1日遅れとなったが、NHKプラスで「鎌倉殿の13人」最終回視聴。
皆さんも見逃しているなら、再放送を待たずに配信どうぞ。

鎌倉殿の13人 🈡(48)「報いの時」

12/18(日) 午後8:00-午後9:00
配信期限 :12/25(日) 午後9:00 まで


反目する北条義時小栗旬)を討ち取るため、義時追討の宣旨を出し、兵を挙げた後鳥羽上皇尾上松也)。これに対し、政子(小池栄子)の言葉で奮起し、徹底抗戦を選んだ幕府は、大江広元栗原英雄)や三善康信小林隆)の忠言を聞き入れて速やかに京へ派兵することを決断。泰時(坂口健太郎)、平盛綱(きづき)らが先発隊として向かい、時房(瀬戸康史)らが続く。そんな中、三浦義村山本耕史)は弟・胤義(岸田タツヤ)と…


https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2022121802246?playlist_id=27ae1a2c-d235-407a-b85d-4481c050061f



以下は最終回受けての再論、10月の段階で書いた。


m-dojo.hatenadiary.com



北条泰時は俺のイメージでは、…確かに外形的には「みんなを救ってくれる人格者」に似てるかもしれないが、似た上で彼は「完全犯罪者」だと思っている。



それはおじいちゃんの北条時政が、犯罪者レベルで言えば
「あいつが犯人なことは公然の秘密だが、危なくて捕まえられない」


おとうちゃんの北条義時
「誰もが怪しいと思っているが、確たる証拠がなくて捕まえられない」


なのに対して
「そもそも犯罪を起こしていることを気づかれない」




というレベルまで到達してる…と思ってるのです…。


その”犯罪”とは何か?

それは源頼朝から連綿と続いていた、犯罪秘密結社による”朝廷からの権力簒奪”。


だから史実と、今のところのドラマの登場人物と、今後の放送スケジュールを組み合わせると、大河ドラマではなかなか描かれなかった「承久の乱」がクライマックスになるわけでしょうが、ここにおいて北条義時北条泰時は…

……欧米人を一人捕まえて次のような質問をしてみよう。「ここに A という国があったとしよう。その国のある階級を代表する Bなるものが服従しないので、A国皇帝がその代表の討伐を命じる勅命を出し、実際に戦端が開かれた。
ところがこのBなるものは一挙に首都に進撃し、皇帝一族を追放し、皇帝を退位させて自分の望むものを帝王の位につけ、討伐を企画した者どもを処刑した上で、自分が擁立した皇帝をも無視し、その形式的な認証も署名もない基本法を勝手に発布し、この法は過去において発布した法規とは全く無関係と宣言したら、これは革命と言えるか、言えないか」。
今まで私が質問した限りでは、全ての欧米人は「もちろん革命ですよ」と言った。


山本七平の中期の代表作の一つ「日本的革命の哲学」であります 。


しかし不可思議なことに…その後、朱子学的発想が普及するのに伴い、足利尊氏平清盛も「帝をないがしろにしたから奴らは大悪党」と観念の世界に生きるインテリたちにボッコボコにされるのに、こんな”革命”を起こした北条泰時は「彼もつらかったのだろう」「本意ではなかったに違いない」、そして革命的法典「御成敗式目」は、その後も武家政治の基礎的な考え方を支えてきたのであります。


ぶっちゃけ、北条泰時のほうが、悪党度合いのレベルがとうちゃんじいちゃんより上の、「三代目にして完成された究極の大悪党」だったんじゃなかろうか。或いはスタープラチナ


オラオラオラオラオラ オラオラオラオラオラ オラオラオラオラオラ。
(後略)


そもそも、京都に進軍して軍事的措置と、その後の敗残兵の徹底的な掃討、戦争犯罪人の摘発と処断は、現地にいたのが北条泰時である以上、泰時が実際のところはそれやってんじゃん。後鳥羽上皇を物理的に、島に移動させるのも含めて。ロイエンタールより有能な占領地総督。

なのに「泰時さんは悪くない!悪のお父様に逆らえずに心ならずも……」と、三谷ドラマでそう描かれているというより、ずっとそういう史観が語られてたんですよ!



そして、今回のドラマでも描かれた御成敗式目だが、要は朝廷から立法権を強奪してるわけじゃん。時政、義時ですらそんなえげつねーことできなかったわけよ。
そんな祖父、父親にもやれないことを平然とやってのける!!!そこにシビレるアコガレるぅ!…ってやつだ。


しかし、彼はそこは確かにドラマのキャラと同様に、ていねいに、礼儀正しく、謙虚に…


山本七平は、「現人神の創作者たち」序章でこう述べた。

…承久の変で京都に攻めのほり、三上皇の配流という「関東分国独立戦争」ともいうべきことをやってのけた彼は、一方に於ては奇妙なほどの天皇尊崇家であり、正統主義者北畠親房が「神皇正統記』で高く評価しているという不思議な存在である。その彼が「貞永式目」を発布したことは不思議ではない。これは「幕府法」であり、立法権の行使であって、幕府という政権はこのときに樹立されたと考えてもいい。いわば統治の三権を完全に掌握してしまったわけである。では一体この「幕府法」と律令格式に基づく公家法、いわば「天皇法」とはどういう関係にあるのであろう。彼は「天皇法」を廃止して新たに「幕府法」を制定したのであろうか。そうではない。それは日本国憲法と新聞自然法(引用者註・この前の部分で、昭和の新聞に「憲法戦争放棄、戦力不保持と書いてあっても、自衛権行使は自然権」という社説が掲載されたことを紹介している)のように、奇妙な並存状態なのである。
まず貞永式目のどこを見ても、統治権は幕府がもつとは書いていない。従って何がゆえに彼がこの立法権を行使し得るのかも書いてはいない。いわば正統性の主張は全くないのである。それどころか、彼が六波羅探題の弟重時に、式目について書き送った手紙には、これは「法」ではないと記しているのである。

では一体何なのであろうか。彼は「目録」だと言っている。「御成敗候べき条々の事注され候状を、目録となづくべきにて候を、さすがに政の躰をも注載られ候ゆへに、執筆の人々さかしく式条と申字々をつけて候間、その名をことごとしきやうに覚候によりて式目とかきかへて候也」と。

では、当時の「目録」という言葉に「法」の意味があったのであろうか。学者は、その例が全く見当らず、目録とは当時も、所領目録・文書目録のように、物の名称・数量を列記して書きあげた文書を言い、法令集を目録といった例は見当らないという。泰時はこの「目録」で押し通したかった、ところが執筆をしたものが「式条」とした。これでは法令のように見えるから「式目」とかえたという。

だがこう言っても、人びとがこの言葉に納得するとは泰時も思っていない。「憲法とその自然法とはどういう関係にあるのか。それは恣意的な立法権の行使ではないか。その自然法なるものが依拠している法理上の原典は何か」などと言ううるさい人間が必ずいる。「さてこの式目をつくられ候事は、なにを本説(依拠すべき法理上の原典として被注載之由、人さだめて謗難を加事候や」。ではその非難に対してどう答えるか。


ま事にさせる本文(本説と同じ)にすがりたる事候はねども、たゞ道理のおすところを被記候者也」。この点はまことにはっきりしており、別にこれは天皇法の注解ではなく、それに依拠しているわけではなく、ただ「道理のおすところ」を記しただけであるという。これは「自衛権の行使は、自然法に基づく国の普遍的な責務」と同じで、これまた「主事にさせる本文(=憲法)にすがりたる事候はねども」「道理のおすところ」であることであろう。

こうなると、この自然法とか道理とかいう言葉は、当然自明のこと、いわば「あたりまえのこと」の意味を含む、では、あたりまえでない法を廃して道理もしくは自然法に基づく法を制定したのだと言っているのかと思えば、そうではない。これは新聞が自然法憲法と並べても、この憲法自然法に依拠していないからこれを廃して、自然法に依拠した新しい憲法をつくれと言っているのではないのと似ている。これによりて京都の御沙汰、律令のおきて聊かも改まるべきにあらず候也」と、そしてこう言いつつ、実際には立法権を行使していく。これまたわれわれのもつ伝統なのである。

御成敗式目の法的根拠って何?「道理」です 現人神の創作者たち


まことに日本に特化した独裁とクーデターの手法である。

次の世も…いや今の世も?日本で独裁者が何かどでかいことをやる時は獅子吼もせず、バルコニーで聴衆に手をかざすでもなく…地味な声と顔で腰低く、首を垂れて・・・・・決断も「やりたいわけではないが、皆様の声に押されて、「あたりまえのこと』を『道理に従って』やらせていただきます」と、そんな形でやるだろう。それが一番効果的な「完全犯罪」になり、歴史の中でも好意的に扱われ続けるから。
そんな右代表が、北条泰時・・・・・・・(了)

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