ことしは結局、M-1グランプリを視聴することになりました。(TBS特番は録画、「鎌倉殿」は配信で…)
実の所、本当に腰を落ち着けてM-1を見ることができたのは初めてかもしれません。それでも敗者復活戦から見るとかできなかったし、途中で目を離さざるを得ない時間もあったりとか…まあ、特にリアルタイムのお笑い全般に関して、ごく薄いファンですよ。
そういう薄いファンであることを前提に質問。
今年のM-1グランプリは、そんなわけで「ウエストランド」が優勝した訳ですが…上記のような薄いファンにも、うわーすごいこと言ってんなー、と緊張感を走らせたのが、
ある/なしクイズの形式をとって
・M-1とR-1の比較
・お笑いを「分析」する素人(この記事もだからそっくり該当するんだろうけどさ…(笑))
・お笑い芸人の中でメッセージ性を打ち出す人
……などを批評するようなネタです。
それぞれの出来とか、エグさはそれぞれすごいものがあったけど、その前の段階として、お笑いが「お笑い」そのものをネタにすること自体が、やっぱり面白いというか……
マンガの楽屋オチ、メタ的なギャグがやっぱり読者を一瞬「ギョッ」とさせる感覚があるように、お笑いのその種のメタな笑いも、業界事情なども含めてやっぱり視聴者、観客はぎょっとしつつ、大きく笑う。
これ、最近痛感して、「あとでこういう記事を書こう」と思ったのは…今回のM-1グランプリではなく、深夜の「さんまのお笑い向上委員会」を偶然見た時だったんだよね。
この番組はタイトル通り、そもそもそういうテーマ自体が番組の柱だから特殊なのかもだけど、「そもそも、それがテーマの番組がある」こと自体がすごい話だし、この記事の傍証になる。
その回では麒麟・川島氏が俎上にあがり、たしか「川嶋さんは司会が優しくて、若手の我々が甘やかされる」的な話だったかなあ。
川島さんのラヴィットMC論、さんまさんや紳助さんの芸人に緊張感を与える雰囲気はあかんと思って大喜利うまく行かなかったりしてもオトしてあげるという話。
— 根岸 亜衣 (@negishi_ai_) July 30, 2022
向上委員会でネタとして言ってる部分もなくはないのかもしれないけど、素敵だなーと思った。お笑いだけでなく。
緊張感が人を育てる部分もあるだろうし、向上委員会で「滑りそうでも川島さんのおかげで笑いになって、芸人がぬるくなってる」というのも一理あるだろうけど。
— 根岸 亜衣 (@negishi_ai_) 2022年7月30日
ただ、緊張で動けないよりのびのびと見切り発車でも動いてみるって若手が増えるの大事だよなあと思った。
前回の向上委員会観てる この番組における屋敷さんのさんまさんへのムーブすごいよね本当に さんまさんのことハズレ呼ばわり笑う あと川島さんの「さんまさんや紳助さん見てこんな若手に緊張感ある番組はダメだと思って司会やってる」発言はなかなか痺れた それを笑ってくれるさんまさんもまた凄い
— あおい (@nonstyle0220301) August 7, 2022
そしてこれは、たぶん若い世代だと、もう前々からあるデフォルトの笑い…だと思うんだけど、なんかお笑いを薄ーく見てた自分の曖昧な記憶の中では、やっぱり80年代とか90年代に始まったような気がする……。
笑点の大喜利は、そもそも笑いのネタを披露し、それを審査するという疑似コンクールの枠組みだから、喜久蔵のダジャレとかが微妙、というネタもあったけど、たとえば歌丸と楽太郎(当時)の抗争はあくまで抗争で、そのツッコミのタイミングがどうとか、ボケがどうこう、みたいな話って無かった気がするんだよね…。
もちろん天才、お笑い怪獣の明石家さんまがそこでものすごい貢献をしたのは間違いないところだと思う。
そして、どうかするとさんまが60分や90分スタジオや客席を笑いっぱなしにさせるような番組の中でも、ひときわ笑い声が大きいのが、その時の番組テーマそのものより「君のボケ、いまいち通じんわ!」「お前、いま流れ断ち切ったなー--」的な、ゲストやアシスタント芸人のお笑い自体を批評する箇所である……ということ結構あると思う。
というか、さんまが未だに第一人者として君臨してるのは、この「お笑いの芸、テクニックそのものをネタにするメタな楽屋落ち的笑い」に関して圧倒的に強いから…だと思う。延髄斬りや卍固めは綺麗に決まらなくても、チョークスリーパーが決め手になって延命できたアントニオ猪木的な(笑)
楽屋落ち的な話でいえば…
どう考えても、おそらくは自分以下のお笑い批評眼しかない佐高信氏が「お笑いは権力批判のはずなのに(そういう世代なんだよなぁ)、たけしは権力を批判しない!毒が無い」とかを語ってたのに対して、何年かあとに
「お笑い芸人が実際の現場で一番プレッシャーがかかるのは政治家や首相の悪口じゃなくて、スポンサーとかを茶化すこと。それを最初にやったのは自分だ」と語ったことがあった。
たぶんそうだろうな、と思う。
「世界まる見え!テレビ特捜部」の番組宣伝スポット(前番組のあとに流れる)で、司会の楠田枝里子と所ジョージが「このあと」「すぐ」と言ったら、たけしが「大木凡人の街かどテレビ」と他局の、いかにも泥臭いライブ番組の名前をいって他の司会二人も大爆笑…それがそのまま使われた、ってことがあった。
www.weblio.jp
番組予告
1990年7月から2004年3月までは前時間のアニメ(放送開始当初は『YAWARA!』、1996年1月以降は『名探偵コナン』)の終了直後に広告なしで5秒間の司会者3人が登場するPR画面(クロスプログラム)があった。この告知は、1990年代当時は楠田が「このあとは!」と言うと、たけしが「大木凡人の『街かどテレビ』」、「『きかんしゃトーマス』、『セーラームーン』」というように全く別の番組名を言っていたり(もちろん画面には正しい番組名が表示されている)、「世界まる見え」(これを言ったあと、楠田・所が「あらっ!、この後すぐ!」と言っていた。他にも、「世界まる出し てんこ盛り」や、「世界 中尾ミエ」と言ったバリエーションもある)
さらに考えれば
そもそも、ボケやツッコミという言葉の一般化、みたいなものとも関係してくると思うんですけどね。
こち亀49巻の段階において、「つっこみ」に傍点が入っていて、ジャンプ読者には一般的な言葉ではなかった一方で、いかにもお笑いの楽屋的なところでは語られそうな言葉であったことを示している……
(1987年初版)
このブログが参考になる、との情報をいただく。あっ、はてなブログだ
お笑い芸人によるお笑い論の「お笑い芸人のちょっとヒヒ話」というブログがありまして今は「笑いの飛距離」と改題されてますが、初書き込みは2008年のようです。https://t.co/QHfmSyTal1
— ティルティンティノントゥン (@tiltintinontun) 2022年12月19日
このブログを読んで一番恐ろしいと思ったのは、一番「面白いこと言うなー!」と思ったお笑い芸人論を語った芸人が、その後仲間たちから蛇蝎のごとく嫌われていると報じられたときで、嫌われてるから分析したのか、分析力が高いから嫌われたのか考えさせられました。
— ティルティンティノントゥン (@tiltintinontun) 2022年12月19日
【創作系譜論】※準タグです。この言葉でブログ内を検索すると関連記事が読めます
…自分にわかるのはここまで。「疑問」を提示するので、皆様の体験的な記憶でも、資料でもいいので「お笑い番組で、芸人が『お笑い(のテク、芸)』自体をネタにし始めたのっていつ頃から?」という問いへのお答えがあるひとは。