ネアンデルタール人のゲノム解読、人類史に光 ノーベル賞のペーボ氏
毎日新聞 2022/10/3 21:27(最終更新 10/3 21:27) 950文字
スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2022年のノーベル医学生理学賞を……スバンテ・ペーボ博士(67)に授与すると発表した。授与理由は「絶滅したヒトのゲノムと人類の進化に関する発見」で、ペーボ教授は「古代ゲノム学」という領域を開拓した。
現代の地球に生きている人類は学問的には「ホモ・サピエンス」と呼ばれる。これに対し、現代人の祖先と言われる「ネアンデルタール人」は約3万年前に絶滅したと考えられているが、ホモ・サピエンスと共存した期間があったことが知られていた。ただ、遺伝的にどのように関係があるかは分かっていなかった。
ペーボ教授は、発掘された古代の人骨などから遺伝子に当たるDNAを抽出して解析する方法を確立した。そして、10年に古代の骨からネアンデルタール人の遺伝子配列を、世界で初めて解読した。
その結果、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が共存している間に交配し、ヨーロッパ系とアジア系の現代人の遺伝子は、それぞれ約1~4%がネアンデルタール人由来であることを突き止めた。
(略)
宮崎大の新村芳人教授(分子進化学)は……(略)「人類の進化は骨の形から推定していくことが主流だったが、遺伝情報から理解できるようになった。人類の進化に対する理解を大きく変えた。人類学に及ぼした影響は多大なものがある」と評価した。
そういえば、新発見から数年たつと当たり前のように受容され、たとえばエンタメにも導入されるけど
「ネアンデルタール人は現在の人と交雑していた。そこには地域性があり、ヨーロッパなどでは特に色濃く遺伝子が残っている」なんてのも、今までの常識を覆すような画期的なものだったのだよね。
(かつては、ネアンデルタール人は現行の人類によって「絶滅させられた」という説もあり、小松左京などそれをモチーフにしたSFもあった)
そしてこれは、以前も言ったけど、人類や動植物(農作物や家畜)の起源において、やっぱり以前の〇〇説vs▽▽説、みたいな群雄割拠じゃなく、究極的な”正解”に近いもの、と言っていいような気がする。
それが、なんとも”残酷”な感じがある…という話は、以前数本の記事や、まとめなどを作っていました。
今回の受賞に関連して、これにアクセスが増えていたので、あらためて紹介する次第。ここで感じる物悲しさや「されど…」という気分は、たぶん多くの人には通じないだろうと思っていたのだけど、いまは果たしてどうだろうか。