……さて、そば汁というと、
広く知られている小話がある。あるところに、蕎麦の食べ方の講釈をする江戸っ子がいた。
「そばは、さらさらとたぐり、そばの先に、ほんの一寸か二寸、つゆをつけてたぐり込む。そうしなければ、そばの香りが判らねえ。」
そう言って、いつも、そばをたぐっていたそうだ。ところがこの男、病気になって、明日とも知れぬ身となった。
見舞いにいった友人が、
「なにか、言い残すことはねえか。」
と問えば、
「たった一度でいいから、そばに、つゆをたっぷりつけて食べたい。」
と答えたそうだ。この話、明治時代の作家、南新二の作といわれる。
いろいろと尾ひれがついて、落語のまくらに使われたりしているようだ。やっぱり、江戸っ子が、そばをかっこ良くたぐるには、
そば汁に、そばを泳がせてはいけないという、決まりみたいなものがあったのだね……
ふむ、
「南新二」か……ここでお決まりのウィキペディアに行こうかと思ったら、残念ながら項目が無い。
ほかには
がみつかるのみだった。
きちんと、どこかのソース(紙媒体)に当たれるのなら、それこそこのトピック一つでウィキペディアに項目を立てたいぐらいなのだが。
図書館レファレンスで聴けばわかるのだろうかな?
デモ近くには、そんなに充実した図書館レファレンスはない。
一般論的に、落語のマクラなどに登場する小話はともかく、川柳、俳句、狂歌などは、ちゃんとどこかの書に掲載されて伝わるのだから、案外詠み人しらずのように見えて、だれがいつ発表した作品かわかってることも多いみたいい。
<江戸っ子は五月(さつき)の鯉(こい)の吹き流し/口先ばかりではらわたはなし>
なる狂歌は、下野国(現栃木県)の山口安良という地方名士の作品らしい。江戸っ子そのものがうたったわけでは無いのか、とメモしていたが、それ以上のことはこれまたわからん。